弟二十一話 借金返済
「ねぇ遼。本物ってことはアレ全部も、もしかしてそうじゃないの?」
服の袖を引っ張り横目で見遣る椿姫は気持ち悪く頬を引きつり、またもや吹きそうな表情をキープしている。
もちろん遼も一概に気持ち悪いとはいえない面を宙に貸していることだろう。
「梨璃雪」
「なぁに?」
「俺のプレゼントだ。丸ごとやる。あ、でも借金はチャラにしてくれよな」
え、と梨璃雪は目をぱちくり、一生交わることのない知恵の輪を三十分程行ったような後味の悪い顔へと変化させ、語尾にも疑問符を付けて聞き返す。
「こんなに沢山、ホントにいいの? 後悔しない?」
小学校に入学したての子供を諭すが如く、後ろ髪を引かれる梨璃雪の肩に手を置いてやり、一押し。
「捨てる神あれば拾う神あり、お前の立場が拾う神だとして、ほら、これを拾うは必然的なことなんだよ。もちろん俺は拾う神……あれ? まぁどっちでもいいが」
そんなことは些細なもんだと金縛りの出来事に終止符を打ってやるべく、直接的に梨璃雪の手に乗せてやった。
返金お断り、一生もんの事項だ。
「そっかぁ……うん、それじゃありがたくもらっておくね! 出世払いみたいな感覚だけど等しいかな。ありがとぅ」
嘉納にも場が明るくなり、道端での取引(一方的に渡しただけ)するには人目に触れすぎるが今は細かいことなど気に留めれるわけもなく、生彩に身を浸した聖賢を凌駕する面持ちで、遼は軽やかな足取りを弾ませる。
金が本物だと判明した今、一般交通場なんぞで時間を潰すのが惜しく、悔やまれる次第に至った。
「それじゃ、俺はまだ用があるから、帰る。アディオス!」
「アデュー!」
妙に高いテンションと脈絡のないように浮かれるがまま、椿姫と軽やかなスキップでアパートの一室に戻る。どうでもいいが、スキップにようした時間は凡そ五秒である。
アパートとドアの関係が拗れた起因は間違いなく遼にあるが、仲直りは金と金が解決してくれると、ドアだけを丁寧に外し、金の束の前にちょこんと座る遼と椿姫。
「まずは把握作業だ。いくつ束があるか数えていこう」
「解かったわ」




