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金の力はパステリー  作者: 河合 翔
金の力はパステリー(1)
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第九話 真っ二つ

 しかりあっさりくっきり、一言で一蹴いっしゅうされた。


 こんのおお、強情な……ぁ、こいつ。


 よくよく冷静な判断を下せるようになった遼は、謎否、影改め、Xもとい、みすぼらしくも汚れ裾などが破れた着衣を身に纏った少女を常識的に見解した結果、神様に結びつく点は皆無に等しく、ましてや並平凡な生活を送っている人間にはどうしても視界に捉えられなかった。


「その一万円はな、俺のだちが落とした物なんだ。返してくれねえか?」


 さっきとは態度一変、さとすことを直接的に求道し実行を試みるも、


「だーめっ、そんなの落とした方が悪いのよ。あたしの知ったこっちゃないわっ」


 己の屁理屈を団子にでも丸めぶつけられた気分だ。無理強いしてでもという好戦的意見を展開したって、こちとら問題はないんだぞ。


 汚れは顔面にまで至っており、まるで適当に塗りだくったとしか思えないフェイスペイントを連想させてくれる。


 しかし傍から視界を考慮しても、整った顔立ちをしているこいつに洗浄でもしてやれば可愛く映えるんじゃないかとも同時に頭が働き、大きなアイポイントは燦然さんぜんとこちらをじっと見据え、光を灯していた。


 頭髪だって洗髪すれば透け通る輝きを見せるだろうに、と遼はかしらを振った。


 いかんせん同情みたく心を敵側に傾けてしまいそうになった。


 打たれ弱いのはいつものことだが、なんとしてでも金だけは保守しいざ満ちることを待たんとする財布の中に! じゃなかった。しっかり梨璃雪の元に送り届けてやる!


 女の子が手を緩めたのを見逃さなかった遼は、一瞬の間をつき石段を蹴り、一万円札を引っ掴んだ。


 だが相手も一筋縄ではいかないらしく、馬鹿力をふんだんに発揮してみせたのか、中々離してはくれず途方が迫る。


 その光景を上空から黒眼に捉えたカラスがアホーアホー、と聞きたくもないお馴染みの鳥ボイスを耳に届かせた。


 そろそろ夜のとばりが降りきろうしているな。


「いい加減離せっ!」

「離さないっ! そっちが離せえっ!」


 互いに声を張り上げ、ここには神主と呼ばれる存在がいなのかとどうでもいい情報を認識し、はたまた近所迷惑な程に空高く声色を奏でた次の瞬間だった。


「このやろおおおおおおおおお(ビリッ)ッ、おぉ!?」

「こんのおおおおおおおおおお(ビリッ)ッ、あれ!?」


 似たり寄ったりの反応を示し、やはり互いに尻餅をつくのは目に見えていたことであり、手に握られ真っ二つに裂かれた、ふ○○○ゆ○○、の半分を唖然としながら、計四つの目に映していた。


「な、なんじゃこりゃああああ!」と叫び散らす遼。

「……………………」と終始無言の女。



 十人十色。


 温故知新。


 古今東西。


 

 今の状況は正に予想だにしていなかった展開。


 一体全体こっからどうすりゃいい? 誰かこの濃厚な時を助けてくれ、ヘルプミー。


「ねぇ、これ」


 潮らしくしゅんとしたそいつは手にしていた半分貨幣を空に掲げて、


「五千円の価値として使えないかな?」

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