四十、御白州 3 ~決着~
「では、話を整理しよう」
互いに、自分の父こそが首謀者だと言い合うピアとミゲラ王女に、エルミニオが静かに言葉をかける。
「昨日の狩猟大会に於いて、バリズラの原住民が、私と、私の婚約者であるレオカディア・アギルレ公爵令嬢が乗る馬へ、縄で攻撃をしかけた。この時、私の馬は足を狙われ、レオカディア・アギルレ公爵令嬢が乗る馬は鼻先を狙われたのだが、それは私を足止めし、レオカディア・アギルレ公爵令嬢の馬を暴走させるのが目的だった故と判明している」
「そうよ!うまくいけば、レオカディアなんかいなくなって、ピアと結婚できたんだよ!?もう、やっとわかったの?しょうがないなあ、エルミニオってば」
やれやれと肩を竦めるピアを、冷え冷えとした目で見やったエルミニオの隣で、レオカディアは顔に出さないようにしながらも、思わず苦笑してしまった。
『レオカディアなんかいなくなる』って。
それって、私がこの世から消えるってこと?
ゲームでは、こんな展開無かったし、ヒロインは、本当に可愛かったんだけどな。
どうせなら、ゲーム通りの可愛いヒロインも見て見たかったと思い、けれどそうなれば、エルミニオ様も彼女に心惹かれただろうと思えば、レオカディアは、何とも複雑な思いがする。
「次に、バリゲラの入国方法についても判明している。こちらは、バリゲラ王室から出資を受けたドゥラン男爵が、船主を多額の金で買収し、沖に停泊しているバリズラの船まで小舟を何艘か出させて、ミゲラ王女はじめ原住民達を密かに入国させた。既に捕縛した船主から、その際の依頼状も押収してある」
わあ。
それって、国をあげてってことじゃないの。
バリズラってば、どうしてそこまでミゲラ王女に肩入れしたのかしら。
評判の良くない彼女だけど、何とか他国の王妃という肩書を持たせて、バリズラにも有利な婚姻となるようにしたかったんでしょうね。
・・・やっていることは、犯罪だけど。
国に不利益ばかりを齎す、国民に不人気な王女とはいえ、バリズラ国王一家は溺愛していると聞くから、その身の安泰と幸せを、最大考えた結果なのだろうと思ったレオカディアは、それよりも、と、後ろに居るセレスティノやヘラルドの有能さに感嘆する。
エルミニオ様の側近だけあって、本当にふたりとも有能よね。
これだけの調査を、たった一日でやり遂げるんだから。
まあ、もちろん他の人たちも凄いんだけど・・・やっぱり一番は、エルミニオ様よね。
などと、レオカディアが少々、桃色な事を考えている間にも、報告は続く。
「そして、レオカディア・アギルレ公爵令嬢を、毒殺しようとした件。これについても、バリズラ王家が関与していた」
え?
あれにも?
驚くレオカディアの耳に、淡々としたエルミニオの声が聞届く。
曰く、バリズラは、ピアが禁止薬剤を有している事実を把握していたこと、そしてそれを、エルミニオはじめ、高位貴族の子息に配っていたこと、それをもって、やがてはピアが王太子妃となると、ドゥラン男爵が傲慢にも言い切っていること。
それらを利用すべく、バリズラはドゥラン男爵に協定を申し出、最大の邪魔者、エルミニオの婚約者であるレオカディアを、毒殺すべく動いたこと。
「レオカディア・アギルレ公爵令嬢毒殺未遂事件に於いて調査が難航したのは、使用した毒をどこで入手したのか、その足取りが途絶え、掴めなかったからだ。しかし、その毒は毒として入手したものではなかった。毒は、ドゥラン男爵が、バリズラから送られて来た毒の作成法を元に、薬師を買収して作らせたものだった」
当然、毒と知っていて調合した薬師も牢に繋いであると言い、エルミニオは芝に膝を突く咎人たちを睥睨した。
「陛下。報告は、以上です」
「ご苦労だった、王太子。さて、ミゲラ王女、ピア・ドゥラン。何か、申し開きはあるか?」
国王の問いに、ピアが華やぐような笑みを見せる。
「ありません!すべて、エルミニオの言ったとおりだって聞いています!だから、エルミニオのお嫁さんは、ピアです!」
「あたしも、ありません。全部、パパが、あたしのためにしてくれたことです。だから、エルミニオの正妃は、あたしで決まりです」
ふたりの意味不明な主張に、国王がその口元を吊り上げた。
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