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十七、会えないのなら、会いに行けばいいのよ! ピア視点







「エルミニオにもヘラルドにも、そしてセレスティノにも。誰にも会えないって、どういうこと?」


 学院の廊下に人形を放ってもエルミニオに会えなかった日から、ピアはずっと裏庭を見張っている。


 ずっと。


 それこそ、放課後ではない時間に鍛錬しているのかと思って、授業中までもずっと。


 そして、裏庭にヘラルドが居ることを確認した後、再び人形を放ろうとしているのに、そのヘラルドが居ない。


 裏庭に、姿を現さない。


 裏庭で、ひとり秘密裡に鍛錬に励む筈の彼は一体どこにいるのか、ピアには見当も付かず、手をこまねいているうち、無意味に日を消化してしまった。


「セレスティノも、ちっとも図書館へ行っていないみたいだし」


 この時期、ゲームでは既にセレスティノの図書室通いが有名になっていたにも関わらず、実際には、少しもそんな話を聞かない。


『公爵家と言っても、ねえ』


『財力が無いと、図書室通いをしないといけないなんて、気の毒なことだ。いっそ、公爵位を返上したらいいだろうに』


 他の裕福な貴族がそう言って嘲笑うなか、ミラモンテス公爵家と同じように家計が苦しい貴族の家の子息、息女たちには、希望の星のようでもあったセレスティノ。


 ゲームでのピアは、図書室へ行こうとして広大な学院内で迷子となってしまい、困っている所にセレスティノが通りかかる。


 図書室通いで有名なセレスティノなら絶対に知っていると、ピアは、相手が上位貴族であることから緊張しつつも、声をかける。


『あの、すみません。図書室へ行きたいのですが、迷ってしまって』


『図書室か。これから行くところだ』


 それだけを言って歩き出すセレスティノに、ピアが呆然としていると、数歩すたすたと行った先でセレスティノが振り返る。


『行くんじゃないのか?図書室』


『あっ、行きます!』


 付いて来いということだったのか、と嬉しくなったピアは、その大きな背を見つめながら図書室までの道のりを歩く。


 そしてやがては、図書室での交流を通じて親しくなっていく・・・筈なのだが、今のままでは、セレスティノにも会えそうにない。


「もういい。こうなったら、みんな纏めて出会ってやろうじゃないの。となると、Sクラスに突撃するしかないかな。それか、食堂」


 出会える期限は入学から七日、つまり今日。


 そして、ピアの所属するEクラスの教室は、Sクラスの教室とは棟も異なり、とても離れている。


「確実を狙うなら、食堂かな。なんだ、最初からそうすればよかった」


 場所的にも、部外者であるピアがSクラスの教室へ突撃するよりも、皆が利用する食堂の方が、偶然を装うにも容易い。


 というわけでピアは、裏庭で張り込むのを諦め、より確実に出会い、接近できそうな食堂で三人に声をかけると決めた。




「大丈夫よ。出会ってしまえば、こっちのもの。みんな、あたしに夢中になるんだから」


 生徒たちで賑わう、昼食時の食堂。


「あっ、いた!みんな、今行くから待っていてね!」


 その中にエルミニオ達の姿を発見したピアは、自分のトレイを手にすると、鼻息荒く、揚々と歩き始めた。



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