ワインナイフの魚つり!
「眠い~~~……もう80万年は寝てないよー……」
切りたった尖り崖の上、長い釣竿を垂らした女が、眠り閉じ目の幼な顔で寝言を喋った。
女の髪は長く伸びた深いワイン色で、前髪からは房のひとつがささくれのように跳ねており、後ろ髪の先は女の背からわき腹を通って豊かな胸……細いお腹の両脇、鼠径部と足の付け根に巻きついて服の様相を成している。
女の目は常に閉じられ、眠りの中では「目の前の見るべき景色」をそのまま夢で見ている。
その目は、たっぷりとした色のない睫毛に、ふさふさと飾られている。
その閉じ目の前には、小さな無害ビーム形成の交差ナイフが、アイマスクのように3つセットで並んで浮かんでいる。
頭の後ろにはビームで作った様々な食卓ナイフがズラリと揃って浮かんでいる。どちらのビームも、ラメ付きのクリアピンク色。
美しい手指足指はビームで構成されており、その色は透明に白く、眩い。
つるりとスベスベした、胸から上と背中、肩と腋と腕と足は、惜しげもなく晒している。髪の毛に覆われて持ち上がる豊満なバストは、丸く形がよく、比較的に控えめサイズだ。
足首には細長いビームの6枚花弁。足には先の尖ったビーム靴。
その風貌と戦い方から、彼女は皆からワインナイフと呼ばれている。本当の名は彼女も忘れていて、名前があったのかも分からないための苦肉の策だった。
「……あっ! かかった」
ふと、釣竿がメチャクチャにしなる。その勢いと曲がり具合たるや、まるで水平線を泳ぐクジラがかかったかのようだ。
そして、水柱と爆発を起こし、古代甲冑ムシ魚のアノマロガローが姿を現した。
「うお~! 食器ごときが生意気な!」
「"フォーク"」
「ぐわあ~! 何だ、これは!? 動けないっ」
空を覆うほどの巨体をくゆらせたアノマロガローは、しかし横から伸びてきた3本のビーム槍に押さえられる。哀れにバタつく彼に向かって、ナイフは握った片手を突き出した。
「"ナイフ"」
「ぐえ~っ! し、死ぬ! 死んだ」
ビームのクソデカ薄刃に貫かれたムシ魚は、粉々に砕け散る。
彼のキバやヨロイの欠片が雨となり、崖の陸地へ降り注ぐ。女は笑顔で、欠片を拾い集めた。
「へへっ。素材回収、終わり! 明日からは装備を厳選しよっと」