0話:贖罪
───俺はいつまで引き金を引けばいい?
何度"彼女"を殺せばいい?
どこまで傷付けばこの"物語"は終わる?
俺は何度も繰り返す───自分の正体、役目も分からずに。
これが今、何度目なのかすら憶えていない。
虚無的な空の下、銃撃と結晶の割れる音がひたすらに鳴り響く。
撃鉄を下ろし、弾倉を回し、弾を発射する。しかし、どの弾も効果は無い・・・・・・いや、そう思いたいだけなのかもしれない。
放たれる結晶を弾丸で相殺していくが、それでも対処し切れず何本か被弾してしまった。
傷は付くものの、今戦っている相手はもう自分の知っている彼女ではない・・・・・・あの娘は目醒めてしまったのだ。
もう声は届かない───だから撃つ。何度も引き金を引く。結晶が何本も身体に突き刺さろうが、痛覚を押し殺す。いつもやって来た事だから辛くない。
唯一辛いのは、彼女を撃つ事だ。
彼女が痛みを感じているのか、判らない。
遺跡が稼働し、門が開かれるのだけは阻止しなくてはならない。
───さもなくば、この世界が滅びてしまうから。
覚悟を決め、俺は彼女に向かって走る。結晶がこちらに向かって来ようが関係ない。
俺は飛び跳ねて彼女と同じ高さになり、引き金を引いた。
一発の銃声が虚空に、静かな風景の中に吸い込まれていく。あの子の周りに展開されていた結晶は消え、彼女はその場に落ちた。
彼女の額には銃創がある、俺が撃ったんだ。そう、この手で。
───今回もまた阻止した。
結末は何種類あるんだ?
いつまで繰り返せば最善の結末を迎える?
自身のこめかみに銃口を当て、俺は引き金に再び指を掛ける。もうあの子は居ない、そこに在るのは彼女だった亡骸だけだ。
次は今回の様に記憶は無くなっているかもしれない、だがそっちの方が幸せなのかもしれない。
───引き金を引き、この現実から目を覚ます。
今度の現実では、救えるのだろうか?