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口八丁手八蝶ネクタイ君

『人工魔石あてっこ大会』、最終日の最終組。

 大盛り上がりのステージ袖に控えておりますは、ワタクシ、ベルこと成留鈴花でございます。

 今日も終日、『人工魔石あてっこ大会』のお手伝いなんだ。


 最後の景品授与は領主様なんで、ステージ袖に領主様も控えてるんだけど、すごい楽しそう。

「こうやってみんなで楽しむのもいいもんだねぇ」って、お付きの人に話してる。


 ヒラヒラのブラウスとか着てないの…普通のおじさんだったからつまんない。

 そう言えば、貴族女性の観察が出来なかったなぁ。

 大会のお手伝いで楽させて貰ったから文句は言えないけど、やっぱり見てみたかった…。


 残すはあと一問。

 アギーラさんも司会に熱が入っている模様。


「ファイナルアンサーーー!?」


 ぬぁんですと?メガホン片手に叫ぶアギーラさんをステージ袖から見やる。

 このシチュエーションでそのセリフって…


 ◇◇◇


 無事に大会は終了し、ばたばたと会場を片付ける。

 片づけ終わって、なんとなく聞くに聞けずで…孤児院へ戻ろうとした私を、アギーラさんが送ってくれると言い出した。


 いや、孤児院すぐそこなんで…って、思ったら、どうやらアリー先生へ御礼を言いたいらしい。

 納得して一緒に向かった。

 歩き出してすぐにアギーラさんは話をし始める。


「すごく盛り上がってくれて良かった」

「大成功でしたね」

「そうそう、景品プレゼンターの登場の段取りとかも…本当に助かりました。どうもありがとう…ナルスズカさん」


 ………。


 今、なんて…?

 思わず立ち止まる。

 怖い…なんで私の名前を知ってるの?


「なんで…あ、ナップサック…」

「ナップサックね…」


 セーオーイーブークーローだーよーねーーー!

 もうポンコツすぎて、言い訳もできないじゃん…。


 待てよ…もしかしてこやつ、長寿タイプか?

 私の当初の覆面商人計画を潰した犯人じゃないでしょうね。


「もしやアギーラさんはマヨネーズを…」

「いや、作ってないから…」


 違った。


 ◇◇◇


 彼は日本人で滝ノ宮明さんというらしい。

 日本人だけど…本当に同じニホンなの?それともパラレルワールドからお越しで?


 そんな事もありうるような気がして、出来るだけ歴史の大局に関わらないようなネタで、確認するのが良いのではないかと話し、覚えてる芸能ネタを披露しあう。

 だってパラレルワールドで、そんな事が一緒の世界とか嫌だし。

 あとは…あ、還暦女優の結婚があったわね。


「三戸佐サトミが結婚!」「joyjoyseven翔結婚!」


 あっ…joyjoyseven翔…そっちよね。うん、同じ同じ。


「アギーラさんは日本で…何歳だったんですか?」

「16歳の高校二年生。学校からの帰宅途中で転移。ベルちゃんは?」


 ひと干支まるっと若かった…。

 薬師さんの見立てだと、ちゃんと成人してるって言われたらしいから、普通に16歳のまま転移した模様。


 面倒を見てくれている住込み先のご夫婦には、転移者だって事も全部話してあるらしい。

 すごいな…もうそんな事が話せる程に、信頼できる人が見つかったんだ。

 とっても良いご夫婦なんだって。


 良い人達に助けて貰ったんだねぇ、おばちゃんも嬉しいよ…ひと干支まるっとを若干引きずる私。

 ラシッドさんや薬師さんなんかには記憶喪失だって話してるらしい。

 そうだよねぇ…こんな話、なかなか言い出せないと思うもん。


「その…とんでもない事、聞いちゃうけど…誰かに、例えば召喚士とか?そういう方との出会いなんて…ありました?」

「まったくないです。僕、森に素っ裸で放置だったんですよ…」


 げっ。そんな転移、嫌だーーー!


 私が刺されたのと同じ時期に転移したらしいのに、こっちの世界に着いたのはアギーラさんは数年後。

 アギーラさんは転移で、私は魂だけが一歳児のベルちゃんに入り込むタイプの転生。

 …なんだこれ。めちゃくちゃじゃない?


 ずっと、誰かが召喚したのかと思ってたけど…違うのかな。だって、こんな転生も転移も時間軸もごっちゃごちゃって…ないわよね…。

 別の人が召喚したんだとしても、アギーラさんへも私にも、誰も何も言ってこないとはこれ如何に?って感じだし。


 それにね、アギーラさんがお世話になってるご夫婦の話だけだけど、異世界から来た人の話なんて、聞いたことがないって。

 あんなにサンドウィッチ食べまくって、マヨネーズ塗りたくってるのに。

 

 そうそう、これだけは言っておかねばいかんという事を、先に伝えておかなくっちゃね。

 私は頭を打った孤児院の子供の中に、魂だけが入っちゃったタイプの転生で、もしかしたら今すぐにでもこの世界から消えるかもしれない可能性を。

 その場合、今の記憶がどの程度残るのかがわからないという事も。


「そうなんだ…せっかくのお仲間発見なのに…」


 うわぁ…さっきからずっとピコピコしてたケモ耳が、急にしょんぼりしちゃうのね~。

 可愛いズルい羨ましい。

 じゃなくって…なにこの子、めっちゃええ子やん…。


「成留さんがベルちゃんでいる間だけでも、仲良くしてもらえると嬉しいです」

「もちろん。凄い心強い感じがしてきた。高校生に言うのもなんだけど…」


 色々話していくうちに、緊張がほぐれていくのがわかる。

 同じ日本人だからと言って、話が通じる奴とは限らないと思って身構えたけど、本能レベルで大丈夫を察知。

 会社でも取引先の人でも会った瞬間に、『こいつは同じ属性だな』って感じる人、いるでしょ?そういう感じよ。


「ゆっくり話したいけど、孤児にはなかなか難しいなぁ」って話をしたら、なんやかんや言ってアリー先生をあっさり懐柔し、あっという間に次回の面会をセッティングしてしまった。

 実は新しい発明品の件で、話が盛り上がってしまったので、馬の鞍に装着するクッションパッドのグーチョキパ分配率の話し合いをした後に、個別で面会させて欲しい、だってさ。


 口八丁手八蝶ネクタイ君、元詐欺師疑惑(ロマンス詐欺含む)。

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