表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/225

ファイナルアンサーーー!?

 バザー最終日。

 観客も凄い数になっちゃって、僕もうヘロヘロ。

 自作メガホンのお陰で、何とか声をからさずに済んでる、アギーラです。


 ベルちゃんには、今日も終日でお手伝いをお願いしている。

 ラシッドさんもすっかり気に入ってしまったらしく、うちの店の手伝いに来て欲しいくらいだなんて言いだす始末。

 年齢がなぁ…あと十年はちょっとなぁ…って、ブツブツ言ってる。


 僕は僕で、ベルちゃんは僕と同じかもしれないと思い始めてる。

 転移者ってのももちろんだけど、見た目と年齢が違うんじゃないかってところも。

 ラシッドさんの話でも、とっても良い子みたいだし…僕だって良い子だなと思ってる。

 バザーが終われば、孤児院の子供と話す機会はそうそうないだろう。

 …腹を括るべきか。


 そんな事を考えてる間にも『人工魔石あてっこ大会』、最終日の最終組決勝戦。

 会場があまりにも盛り上がり過ぎて、僕は叫ぶ。


「ファイナルアンサーーー!?」


 ◇◇◇


 会場を片づけ終わり、人工魔石をラシッドさんへ託して、僕はベルちゃんを孤児院まで送り届ける事に。

 孤児院はすぐそこですけど…みたいな怪訝な顔をされたけど、お世話になったから、アリー先生にもお礼を言いたいと伝えたらすぐに納得してくれた。

 自然に自然に…会話のついでって感じでサラッと言うぞ…。


「すごく盛り上がってくれて良かった」

「大成功でしたね」

「そうそう、景品プレゼンターの登場の段取りとかも…本当に助かりました。どうもありがとう…ナルスズカさん」


 ベルちゃんはビクッとして立ち止まった。

 一瞬顔色を失い逡巡をみせた後、


「なんで…あ、ナップサック…」


 思い当たったようだ。


「ナップサックね…」

「あ…」


 さらに沈黙。

 暫くすると、ちらちらっとこちらを見ながら言ってきた。


「もしやアギーラさんはマヨネーズを…」


 えー!気になるのソコ?


「いや、作ってないから…」

「ですよね…ちょっと言ってみただけです…」

「でも、マヨは僕もびっくりした。他にもサンドウィッチって普通に言われてるし、デンタルフロスだって…少なくとも僕らの他にもいるのか、いたのか…って事だよね」

「あの…アギーラさんは日本人ですか?」

「うん。ベルちゃんも日本人だよね?院長室で蝶ネクタイって言いかけたてたから、そうかなって。ナルさんってお名前ですか?」

「そう、成留鈴花って言います」

「僕は滝ノ宮明です」

「同じ世界の日本から来たんでしょうか…パラレルワールド的な可能性も…もう…何が何だかわからなくって…」


 西暦や元号を確認したら、ほぼ同じ時に転移転生した事が判明する。

 パラレルワールドかもしれないというベルちゃんの台詞に一理あると思い、こっちに来る前のニュースや芸能ネタで確認しようって話になった。

 確かに、そんな事が一緒のパラレルワールドって嫌だろ?

 最後の日にスマホで見たのは…あっ!と思い出して同時に言った。


「三戸佐サトミが結婚!」「joyjoyseven翔結婚!」


 そうそう…三戸佐サトミ、同じ同じ。


「…こんな事が一緒なパラレルワールドとかないよね…たぶん一緒の日本から来たんだと思う…」

「アギーラさんは日本で…何歳だったんですか?」

「16歳の高校二年生。学校からの帰宅途中で転移。ベルちゃんは?」

「…28歳、普通の会社員。会社からの帰宅時に家の玄関先で人違いで刺されちゃって…たぶん転生?」


 転生と転移と…それに日本を離れた時は同じでも、こっちに到着した時期は数年のタイムラグがある…なんだかめちゃくちゃじゃないか。


「転生かぁ…僕は転移なんです。なんだかめちゃくちゃですよね…」

「その…とんでもない事聞いちゃうけど…誰かに、例えば召喚士とか…?そういう方との出会いなんて…ありました?」

「まったくないです。僕、森に素っ裸で放置だったんですよ…」

「うわっ…それは酷い。私は…頭を打った孤児院の子供の中に、魂だけが入っちゃった感じなんです…」

「え?」

「…良くわからないんですよね。まだ、本当のベルちゃんが体の中にいる感じがしてて…いつか私の魂は居なくなるんじゃないかと思ってるんだけど…」

「そうなんだ…せっかくのお仲間発見なのに…」


 ちょっとしょんぼりする。

 せっかく良い人そうな同郷者(地球人で日本人)を見つけたのにな…。


「うん…せっかくのお仲間発見だけど、この体は私の物じゃないんだ。貸してもらってるだけって感じなの」

「そっかぁ…。でも、成留さんがベルちゃんでいる間だけでも仲良くしてもらえると嬉しいです」

「もちろん。凄い心強い感じがしてきた。高校生に言うのもなんだけど…」


 緊張しきってた体からこわばりがス~っと消えていく。

 少し話しただけだけどわかる。

 この人、色々大丈夫な人だ。

 

 感覚が似てる感じの人だって、わかるもん。

 ほら、クラス替えとかでさ…一言二言話しただけなのに『コイツ良き!』って思う時、あるでしょ?あんな感じ。

 勇気を出して、話しかけてみて良かった~!


 他に共通点があるのかどうかを少し探ってみたけど、見つからない

 ただ、二人とも東京在住だったって事くらい。だけど生活圏は重ならなかった。

 成留さんは小さい頃は大阪に住んでたらしいけど、僕はずっと関東だし…。

 趣味も違うし…年齢も性別も。

 

 誰かが召喚したった訳じゃないのかなぁ…これ、ずっと疑問だったんだよね。

 余計にわからなくなってきた。


 ひたすら牛歩戦術を駆使して話をしてたけど、とうとう孤児院の建物前に着いてしまったので、アリー先生を呼び出してもらう。

 御礼を言って、馬の鞍に装着するクッションパッドのグーチョキパ分配率を棚上げにしていた事を思い出し、話し合いと称して来週にでも孤児院へお邪魔することを告げる。


 新しい発明品がベルちゃんと共同で出来そうなので、その後で少しベルちゃんに面会を申し込みたいとも言ってみた。

 ちょっとゴリ押し気味だったかなぁ。

 あんまりグイグイいくと、下手したら変質者だと思われちゃうかも…それは嫌だぞ。


 「あら!またベルは何か面白いものを考えついたの?」

 「違うよ。アギーラさんの発明が改良できそうだから、少しお手伝いしたいなって」


 ベルちゃんナイスアシスト。

 どうやら、ベルちゃんは既に色々と発明をしているらしい。

 アリー先生はまったく疑問を抱くことなく、すんなり許可をくれたんだ。

 

 ベルちゃんと小さく肯きあって別れを告げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ