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異世界転移、これじゃない感。

 あれ?なんか話が大きくなってきちゃってない?

 少々困惑、アギーラです。


 みんなでご飯を食べた日から数日後、初めての魔法付与授業の日。

 ラシッド先生が言いにくそうに話を切り出した。


「いや…ごめん。教会に『人工魔石あてっこ大会』の話を念の為にしておこうと思って、伝えたらさぁ…なんだかおおごとになっちゃったんだよ」

「おおごと?」

「うん…お店じゃなくって、別に場所を設けるから、そこでやってくれないかって…」

「え!何でですか?」

「大人も子供もたくさんの人が参加できるように、もっと大きな場所を使ったらどうかって言うんだよね…こういう事するのって、今まで聞いた事も見た事もないもんだから…」


 僕の想定は10人くらいの子供を集めた、余興みたいな感じだったんだけど…なんだか本当におおごとになりそうだぞ。


「それでね、篤志家の貴族や商人なんかが景品を出したいって言ってくれてるらしくて…バザーって三日間続くんだけど、全部の日でやってくれって…」

「えっ!大変じゃないですか!!」

「うん…。それで教会から、貴族や商人から景品の寄付を頂いた事をわかるようにしたいって言われて。もちろん寄付だから返礼品とかじゃなくてね。何か感謝の意を伝える方法を考えて欲しいって…そんなのどうしていいのやら…」

「今までもバザーには寄付があったと思うんですけど…これまではどうしてたんでしょうか…」

「それが、今までは教会や孤児院への寄付ばっかりで、僕らみたいな外部の者が出す店に対して寄付するって、なかったらしいんだよね。いや…別に僕らに利がある訳じゃないけれど…」


 あぁ…なるほど。


 あ、あれはどうだろう。よく町内会のお祭りにあるやつ。紙はお金がかかるからなぁ…木札かな。木札ならばらして冬に必要な薪にできるし。


「それなら、木札でも立てればいいんじゃないですか?」

「木札?」

「はい。木板に『ミネラリア南のドワーフ鍛冶店、ラシッド様、バザーご賛同ありがとうございます』って、景品を寄付してくれた人の名前を書いて、バザー会場の入口に並べるんです。そうすれば寄付をした貴族や商人も、まんざらでもないだろうから満足、教会側は感謝の意をみんなに見せられて満足、僕らは景品をタダで手に入れられて満足…そんな事じゃダメかなぁ…」

「ダメじゃないダメじゃない、アギーラ凄いよ!」

「あ!木札が大変なら…白灰で書く…板の…あれ、なんでしたっけ?」

「書板かい?」

「そう!それに書いても良いですよね」

「それ良いよ!」


 教会の施設の一部が学校として使われているらしく、黒板とチョークみたいなもの…書板と白灰は沢山あるだろうって。これならすぐに用意が済みそうだって喜んでる。


「あと、景品を渡す役を寄付してくれた本人にして貰うってどうですか?まぁ、日時の調整がいる話なんで、ちょっと面倒かもしれないですけど…勝ち残った人にみんなの前で景品を渡してもらうんです。自ら用意した景品を渡す姿なんて、とっても良い事した気分になれそうでしょ?ご主人が無理でも、篤志家のご家庭なら、奥さんがバザーをお手伝いしてる可能性も高いから、お願いしてみても良いかもしれないですね」


 天才だなんだと持ち上げられて、いつの間にかバザーの打ち合わせになり…残念ながらその日の授業は全く進まなかった。

 魔法付与の授業、初日だったのに…。


 シーラさんとも話した結果、僕はバザーの全日、がっちりラシッドさんのお手伝いに駆り出される事になった。

 ラシッドさんはこのバザーの手伝いの見返りに、魔法付与の基礎授業を自分の出来る範囲ではあるけど、しっかり責任をもって面倒を見てくれるって約束してくれたし…僕としては本当にツイてるとしか言い様がない。一生懸命やりますよ、司会進行。


 司会と言えば、アレ…作っとこうかな。


 ◇◇◇


 そしてバザーの当日。


 あの後、日に何度も開催するって事になってしまったので、僕からもクッションを景品として出すことにしたんだ。シーラさんとガイアさんの名前でね!

 シーラさんは子供が勝者だった時の為にって、砂糖菓子も用意してくれた。シーラさん一押しのお菓子、カシュリのカシュリだよ。


 最初は洗濯板を出そうと思ってたんだけど、すでに景品リストに入ってたんだ…誰だか知らないけど、お買い上げありがとうございます!


 そうそう、クッションと言えば…孤児院に頼んで作って貰ってたんだけど…もうびっくり!

 なんと、リュックサックに入って戻ってきたんだ。

 背負い袋って言うらしいけど、形状は完全なるリュックサックだった。


 リュックって、この世界では初めて見たかも…って思ってたら、どうやら新製品らしい。

 そう言えば旅行の最中も一度も見たことがなかったな。

 みんな大きな荷物を持つ時は、サンタスタイルだし。


 あれ、なんて言うんだろう。担ぎ袋っていうのかなぁ。

 馬で移動する冒険者たちは、袋を二つ持つんだ。

 麻袋にパンツの紐をくくりつけたみたいなやつなんだけど。

 それを馬にね、バランスよく左右に袋を振り分けて乗せる感じ。


 護衛をしてくれたダリアさんとロイドさんはもちろん、大主道を行く馬にはほとんどそういう感じで、荷物が積まれてた。

 あれも馬からすると安定してて良いのかもしれないけど、こういうリュックがあると良いよね。

 ほら、ダンジョンの中とか山歩きでも手ぶらで移動できるし。

 僕も欲しいなぁ…いや、ダンジョンには行かないけどさ…


 ◇◇◇


 この背負い袋は、冒険者がダンジョンに入る時に使えるようにってコンセプトで作られたらしい。

 背負い袋とクッションと馬の鞍用クッションの冒険者用三点セット。

 ちょっと前に中綿を鞍用のクッションに流用したいって話がきてたから、OKは出したんだけど…まさか専用パッドになって戻ってくるとは思わなかった…。

 

 ガイアさんに対応をお願いしちゃってたけど、冒険者セットって事で如何でしょうかって戻ってきて、びっくりしたって言ってた。

 冒険者仲間に使ってみてもらって、フィードバックして…改良版がバザーに並ぶらしい。


 クッションカバーはちゃんと別で二重になってるし、リュックはクッションを背中側に入れて、他の荷物も入れて移動できるようにって作られてる。これだと背中がクッションにあたって良い感じだな。

 さらに馬の鞍用パッドは、鞍にぴったりフィットする形状になって戻ってきた次第。


 これ作った人…なかなかわかってるな。

 鞍用パッドもだけど、このリュック…毛布なんかを上部へ括りつけられるようにもなってるし、両サイドにちゃんと水筒が入るサイズの深いポケットがついてるんだもん。あ、しかも背中側に隠しポケットもある!


 孤児院、恐るべし…


 ◇◇◇


「アギーラ、それ…なんだい?」

「どうですか?司会ってわかるように、ちょっと目立とうと思ったんだけど」

「ふぅん…大きいボウタイかぁ…。相変わらず、面白い事を考えるなぁ。確かに初めての試みだし、担当者がわかりやすくて良いね」


 そう、僕が作ったアレとは、でっかい蝶ネクタイ!

 祭りごとの司会と言えばこれでしょ。

 あと、思いのほか大きなステージが用意されてしまってたので、急遽メガホンも作っておいたんだ。

 喉が枯れちゃうのは嫌だからね。

 あとは、スケジュールを確認して、景品を確認して、人の名前を間違えないようカンペを作って…忙しい忙しい…。



「おっ待たせしましたぁぁ!これから『第一回、人工魔石あてっこ大会』を開催しま~す!勝ち残った人には素敵な景品を…」


 異世界転移、これじゃない感。

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