表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/225

冬前に 思い出したい ノルディック

 ツガイコウモリ便で閃いた刺繍の図案を早々に諦めた残念画伯、ベルこと成留鈴花でございます。

 仕方なく縁にぐるっと、とってもシンプルな模様を入れる事にする。


 ▲▽▲▽▲▽


 よしよし…こういう幾何学模様的な刺繍ってそう言えば見た事ないなぁ。

 これなら男女問わず使えそうだし、直線の方が刺繍も単純で楽…。


 …あ、これって外側のクッションカバーをナップサック型にしたら、持ち運びやすくない?

 ちょっと作ってみよう。


 ――ちくちくちくちく


 これ…便利かも!

 私も中綿が欲しいなぁ…


 ◇◇◇


「私のノルマ、クッションカバーできました~」

「ありがとう、ベル。早くて助かるわ…うん、運針もとっても綺麗よ。もしかしたら裁縫スキルがあるかもね」


 やっぱり?私もそんな気がしてたんだよね。だって、すっごく縫うのが早いんだもん。

 5歳にして鈴花比較で、2倍速って感じ。いや、それ以上かな。

 鈴花がちょっと裁縫ポンコツだったってのを差し引いても凄いわ。

 しかも、針をずっと持ってても、硬い布を縫ってても、手がまったく痛くならないオマケ付き。

 子供の皮膚ってすごく柔らかいはずなのに…どうなってるのか疑問だけど、もう考えるのは放棄してる…。


「ねぇ…その袋は何?すっごく可愛い刺繍じゃない」

「これはねぇ…自分の分も欲しくなっちゃって…ちょっと刺繍を入れてみたんだけど、どうかな」

「これも、自分で好きなように刺繍したの?」

「うん。単純な模様をね、一列に繋げてみたの。これなら男女問わず使えそうじゃない?」


 もちろん、蝙蝠図案に失敗したから、急遽適当に作ったなんて事は言わないわよ。


「シンプルなのにひと手間かかってるってわかるし…すごく素敵だわ。あらこれ、ベルの持ってる袋と形が似てるわね」

「クッションを持ち運びが出来るようにしてみたんだけど…冒険者が移動しながら使うんでしょ?なら、背負って持てたら楽な人もいるかなぁって。大剣の人なんかは背負うのは無理そうだけどさ。少なくともこうやって片肩にかけて歩けるだけで、荷物を持つのがずいぶん楽になると思わない?紐を調節できるようにすれば背負ったままお尻に敷けるかなぁ…どう思う?まぁ、無理でもこれ単体で袋としても使えるから便利だと思うんだけど…」

「………」


 …裁縫親衛隊に捕獲されちゃった。


 背負い袋型クッションカバー地獄、ここに爆誕。


 ◇◇◇


 知らなかったんだけど、こっちの世界にはリュックサックみたいな形のバッグはないんだって。

 前にナップサックを背負って捕獲された時に、すぐに開放されたからさ…てっきりあるんだと思ってたんだ。だって、背負い籠もあるし…薬草採取する時とかに使うやつ。


 名前を聞かれたからとっさに『背負い袋』って…背負い籠を思い出してたからつい…。

 えーっと、ネーミングセンスについての苦情は、一切受け付けませんのであしからず。


 大きな荷物を持つ時は、七福神の誰かが持ってそうな袋みたいなやつを持つらしい。

 冒険者の人とか…荷物運ぶのすっごく大変じゃない?

 ダンジョンの中って馬は入れないわよね…そうよね…。


 子供や小柄な女性ターゲットのナップサック型ももちろん作る。

 これは単品でバザーで売る事になったんだ。

 ナップサックは作りがシンプルな分、やっぱり軽さが魅力だからね。

 こっちには可愛い刺繍を入れて、遊び心を発揮しようじゃないか。

 

 リュック型のクッションカバーのほうはね、紐の部分を体格のいい大人が使えるように長めにしたの。

 そう、院長先生を使ってフワンフワと蔦でしっかり採寸したから、大抵の大人が使えると思う。

 

 しっかりした布を二重にして丈夫なベルトタイプに変更。

 そこにボタンとボタン穴を付けてベルトの長さを調節できるようにしてみたんだ。

 サイドポケットや背中側には隠しポケット付きよ。


 さらに腰で荷物の重さを支える事が出来るようにウエストベルトもどき付き。引き解け結びにすれば、すぐに荷物を手放せるんだ。

 魔獣が襲ってきた時には、すぐに荷物を放り投げて戦えるようにって所におもきを置いたんだけど、どうかしらね。

 

 水筒なんかはサイドポケットに入れておけばすぐに取り出せるし。手荷物が少なくなると思うのよね。

 まだまだ改良が必要だけど、初めて作ったにしては上出来だと思うわ。


 もう完全にクッションカバーではなくなっている事には気付かないふり。


 ◇◇◇


 馬って乗ったことある?そう、乗馬。

 私は小さい時に、〇〇ファミリー牧場的なところで一回だけあるんだけどさ。

 まぁ、ポニーにしか乗ったことがないから、私には全くわからないんだけど…超、痛いんだって、お尻やらなにやらが。

 

 慣れるまではほぼ全員が苦しむって。尾てい骨や内また部分なんかが、すっごく痛いらしいの。

 あとはダイレクトにダイレクトな部分。

 人間はほぼ全員が辛い洗礼を受けるらしいし、獣人もかなりの種族が残念な結果らしいわ。

 シッポでカバー出来る部分が多少あったとしてもさ、ダイレクトなダイレクトは同じだもん…まぁ、良くは知らないけどさ…お、同じよね…?


 乗馬って基本的にずっとお尻を浮かせてるのかと思ったら、そうでもないんだなぁ。

 上手く乗れないと摩擦かなんかでお尻の皮がむけちゃったりするらしいよ。

 わ~、まじか…。


 たぶん、鞍のクオリティが低いのと、ズボンの生地が硬いのが原因の一つだと思うんだけど…鞍もズボンもそうそう変えられないじゃない?

 多分、ズボンは森やダンジョンに入った時の為に、わざと硬めの生地のズボンを身に着けてるんだろうし、鞍は高いしさ…。


 

 そうそう、中綿部分も無事解禁。ビッグなんちゃらって言う魔獣の毛皮を使用するんだって。

 だから、既存の鞍に装着できるクッションパッドも作ってみたの。

 鞍のクッションパッドへの試作品への毛皮の流用にも許可がでたんだ。


 どうやらグーチョキパが超特急で取れたらしいよ。

 …グー舎って冒険者との繋がりがあるのかしら。

 

 この魔獣の毛皮、トランプのリフルシャッフルみたいに、交互に毛並みをかみ合わせてしまうと、ぴったりくっついて離れない。

 しかも皮膚の部分がなんか滑り止めみたいな素材感だから、カバーにつめれば中でグラグラしたりしないし。これ考えた人凄いわ~。


 クッションパッドはね、馬に乗れる院長先生や乗馬の基礎訓練を受けてる年長の子供達に、きちんと意見を聞いて作ったから、結構良い感じに出来たと思うの。

 

 ありがたかった事に、鞍の製造にギルドが一枚かんでたらしくて、注文品以外は鞍の型が同じだったから、大抵の鞍には装着可能なパットができました!

 これで馬上が少しでも楽になると良いな。

 注文品で作るようなお金持ちのお尻事情は、自分たちで解決してもらおう…。


 本業と全然関係ない所で、お尻が痛いのを我慢するなんて全く信じられないわ。

 なんで、誰も改善しようとしなかったんだろう…もしやMなのか。


 背負い袋にクッションと馬の鞍カバーをセットにして、孤児院にクッションの縫製を発注してくれた冒険者さんに、モニターになってもらうべく何セットか届けてもらう事にしたの。


 これ、冒険者セットって事でどうだろう…異世界人類みなドM、とかじゃなきゃ、絶対売れると思うんだけど…


 ◇◇◇


 あとね、図案も売り出したら?って言われて、全30パターンを考え中。

 一図案を購入すれば5パターンずつを買えるようにすれば良いんじゃないかって…簡単にアリー先生が言うんだ…簡単に…。


 男性も使えるようなシンプル幾何学模様の連続パターンや、チロルテープみたいなイラスト風のお花や星なんかの連続柄とかね。

 こういうのデザインを広めるには、とにかく単純な形が一番。


 よしよし。あと、10パターン。

 バザーで先行販売するからねって、早くしろとせっつかれております。

 ひぃぃ、異世界に来てまで締め切りがあるなんて…。


 でもこういう柄が無かったのは意外。

 まぁ、ドーンな花の刺繍ばっかりだもんね…薔薇とか薔薇とか…。

 依然として、フォークロアやノルディックなんかの図柄は、悲しいほど思い出せないけど、色んなデザインはひねり出してるんだ。


 冬前に 思い出したい ノルディック


 いや、優雅に一句してる場合じゃないんだった…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ