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みんなどんだけ辛かったんだよ…。

 薬局からの帰り道、ついでに町の中央広場の店で買い出しを終える。

 思いのほか荷物の量が多くなってしまい困っていたら、なんとガイアさんを広場で発見するという超ラッキーボーイ、アギーラです。


 軽々と荷物を持ってくれたガイアさんに、グリンデルさんのところへ行ってきたことを伝える。

 グリンデルさんに閉店後にもう一度来るようにと言われたんだ、なんて話をしながら一緒に家へ帰宅した。

 店奥のテーブルの上を急いで片付けると、ガイアさんがそのテーブルの上に大量の荷物を置いてくれる。

 ガイアさんはすっごく優しいんだ。

 それにアキラって普通に呼べるしね…根に持ってないよ…ないよ…。


「昨日は全然眠る時間がなかったろ?少し休んだらどうだ」

「うん…ガイアさんこそ…外で仕事があったのにごめんね。朝まで話し込んじゃって」

「今日は事務処理だけだったし気にするな…それにどうせ話が面白過ぎて眠れん…いや、すまん」

「そう言われると何とも…。あ、お茶入れますんで、そのまま座ってて下さい」


 僕は、紅茶を手早く入れた。


「なぁ…そう言えばアギーラのクッション、どうしたんだ?ほとんど持って帰って来なかったじゃないか」

「あれ、実はですね…」


 僕は、帰り道での女の子が馬車の乗り心地が酷すぎて苦しんでた話をして、ほとんど手放してしまったんだって説明をする。


「そうだったのか。なぁ…あのクッション、また作れるか?」

「え?材料さえあれば…ただ布地に魔獣の毛皮を押し込んだだけなんで、いくらでも作れますよ?」

「俺が一つ持って行ったろ?紐のついた薄いやつ。あれ、ダンジョンでめちゃくちゃ喜ばれちまってな。できればあれと同じやつを作って貰いたいんだが…頼めるか?」

「もちろん良いですけど。え?…クッションをダンジョンで使うんですか?」

「あぁ…俺は休む時には獣化するから気にしたことがなかったんだがな、獣化が出来ない冒険者も多いんだ。どうもなぁ…人型がダンジョンで寝っ転がるってのは、体が辛いらしくて…。あと、馬に乗る時にも、尻に敷くんだって順番待ちになったくらいだ。紐をな、腰に括りつけて乗ってたぞ」


 みんなどんだけ辛かったんだよ…。


「もし、ビッグスカゥラーテルの毛皮が売ってればすぐにでも作れますよ?あ、乗馬で使うなら浄化がかけてある毛皮が良いと思います。馬が匂いを嫌うかもしれないから」

「あん?ありゃビッグスカゥラーテルだったのかよ!」

「はい。あ…椅子用のはカバーを閉じちゃったから中身が見えなかったですね。あれ、ビッグスカゥラーテルの毛皮を重ね合わせただけなんです」

「あの魔獣の毛皮ならすぐに手に入ると思うから、すぐに用意できると思う。布地やら紐やらは買ってきてもらっても良いか?」

「もちろんです。じゃぁ、毛皮は宜しくお願いします」


 紅茶を飲み干すと、ごちそうさんと言いながらガイアさんはどこかへ出かけてしまった。

 入れ替わりのようにシーラさんが部屋に入ってくる。

 僕はまた紅茶を入れた。


「それで、どうだったの?グリンデルはなんて?」

「あの…話が長くなりそうだから、夜にもう一度来てくれって言われました。8時にもう一度、薬局へ行ってきます」

「そう…。ねぇ、今日はもうお店を閉めようと思うの。アタシも休むからさ、アギーラも夜までひと眠りしなさいよ。まだ旅の疲れもちゃんと取れてないはずだから」


 ◇◇◇


 夕方、僕が目覚めて一階へ降りると、ガイアさんが大量の毛皮に囲まれてちんまりと座っていた。


「ガイアさん!それ…ビッグスカゥラーテルの?」

「うん…ギルドに相談したらな…その…いらないからって安い値段で大量に押し付けられちまった。嵩張って倉庫でじゃまだとか言ってたが、どうやらギルドでも話題になっちまったらしくって…沢山作ってくれって押し付けられたんだよ。なんせ事務方の職員も欲しがってたからな。あ、ギルドの職員は口が堅いから大丈夫だぞ」

「いや、それは良いんですけど…凄い量…。ここじゃ置き場所がないから、少し森の工房に持っていきましょうか?」

「いや…工房にもすでに半分運んであるから」

「え!これで半分?」

「あぁ。小屋に入れたほうも全部浄化済みだから安心してくれ。そうそう、布地と紐も少し貰ってきた」


 僕のクッションコレクションで使ったカバーとは違って、日焼けしてない綺麗な布地を出してくる。


「あと、ギルドへ顔を出すたびに知り合いからも欲しい欲しいって言われて…その…注文が…ちょっと…そのな…また増えちまったんだが…」

「それは構わないけど…僕が一人で作ってたら、渡すまでに時間がかかっちゃうかも。どうしましょうか…」


 僕の腕は二本しかないんだ!


「だよなぁ。それで…ちょいと前に商業ギルド長に会った時に聞いてみたんだが、アギーラは町の中央にある教会に併設されてる孤児院は知ってるか?」

「うん。シーラさんから話だけは聞いた事があるけど…」

「そうか…その孤児院だがな。裁縫品を教会のバザーに出してて、えらく評判が良いらしいんだよ。あの商業ギルド長が認めてるって事は、相当な腕前が揃ってるんだろう。正直な所、冒険者が使う物だから、縫製はきちんとしておいてもらいたいからな…」


 もしかして、その孤児院で作って貰える可能性あり?

 賛成!大賛成だよ!!


「縫製工場へ注文を出すほどの個数でもないだろうから…孤児院へ手数料を渡して作って貰って、バザーで売ってもらったらどうかと思うんだ。冒険者がバザーで買うようにすれば、孤児院への売上貢献にもなるだろ?みんな少々高くても買いたいって言ってるから、孤児院分の利益を上乗せしても構わんだろうし。だから、そこへ作ってくれるようにお願いしてみるってのもありかなぁ~、なんてな。もちろんまだ何も話をした訳じゃないぞ。アギーラ次第だからな」

「ガイアさん、それ凄く良いアイデアですよ~!是非是非、お願いしましょう!!」


 良かった!僕ね、色々と作りたい道具があるんだ。

 さすがにこの毛皮の量分のクッションとか…作るの嫌だもん。


「そうそう、これ、グーチョキパは良いのか?」

「え?これはさすがに無理じゃないですか?ちょっと毛皮を合わせる時にコツがあるにはあるけど…ビッグスカゥラーテルの毛皮を布で包んだだけなんで…」

「そういうもんなのか?シーラが商品を出したら、とりあえず何でも申請すべきって良く言ってるから…正直、あれ…クッションとはちょっと違うだろ?」

「あぁ…そう言えばクッションって装飾品なんでしたっけ…。うーん、シーラさんに一応聞いてみますけど…これは取れないんじゃないかぁ」

 

 シーラさんに聞いたら、とりあえずグーチョキパ申請するようにって言われたんだ。

 いやむしろ逆に申請をしておいた方が良いって言われちゃった。

 なんでも類似品のグーチョキパの有無をグー舎が調べてくれるから、グーチョキパ申請は積極的にした方がいいんだって。申請料がかかるけど、後々の事を考えると断然お得らしい。

 

 同じような製品でグーチョキパが既にされていて、権利期間が残ってる場合なんかは、権利の使用料を支払わなきゃいけない場合もあるからね。

 

 魔法だ魔力だってファンタジー全開なのに、なんか権利系がグイグイくる…

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