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トイレ紙準男爵②

 トイレ紙の準男爵…異世界でもあだ名ってあるのよ。

 本名はロイドさんって言うんだって。

 名前よりあだ名の方が倍以上長くなっちゃった残念タイプ。

 

 はぁ…ロイドさんもあだ名チェンジ、希望してただろうなぁ…なーんて、一人で遠い目をしている、ベルこと成留鈴花でございます。

 あだ名にトイレ紙って…ベル如きで嫌がってた自分がなんか恥ずかしい…。


「インパクトの強いあだ名がついちゃったし、『トイレ紙の準男爵』って、読み本まで出ちゃったしね。後世まで残っちゃっても仕方ないよ~」って、マルが笑って言ってるけど、すっごく良い事したのに、この所業ってどうなのかしらね。


 衛生大改革以前はトイレ自体がないわ、お尻を拭くものはないわで不衛生極まりなかったらしい。

 いや、詳しくは怖くてとても聞けなかったんだけど…その…最悪ってやつよ。


 そんな状態だから、感染症だの皮膚炎だの色々苦労があったそうで。

 そこへきてトイレ爆誕とともに、安価で肌に優しくて衛生的で、しかもそのまま下水に流せる天然由来の、ほぼ草で出来たおしり拭きが登場したんだから…まぁ、受け入れられない訳がないわね。


 トイレ紙には『永久グーチョキパ』ってなかなか取れない、この永久独占権の許可がおりた為に、独占市場なんだけどさ、普通のグーチョキパは権利期限があるものが多いし、使用許可料を決めて申請されてるものがほとんどなの。

 だから、発明者の権利さえきちんと守れば、他の人もちゃーんと使えるらしいわよ。

 

 グー舎は大陸全土で活動してるらしくて、グーチョキパはそこで一元管理されてるんだって。

 しかも、一度取れてしまえばこの国だけじゃなくて、大陸全土に渡って有効。


 この世界、ファンタジー全開と思いきや、こういう所はすっごく現実的というかなんというか…


 ◇◇◇


 孤児院に対して国がしてることは、孤児院が持つ永久グーチョキパを、他の業者が横取りしないように目を光らす事くらいみたい。

 だって予算を孤児院に充てなくても、国営の名のもと自分たちで運営資金を賄えてるなんて、国からしたら優良案件だよね。


『国営企業に永久グーチョキパが出たんだから邪魔する奴は許さねぇ』って感じかな。

 あれ?ガラが悪い感じだけど大丈夫かしら…でも、そう言う事なのよ。


 永久グーチョキパは各孤児院で保持できるようにしてあるから、どこの国も孤児院が上手く経営されるようなったんだってさ。

 さらに孤児院は連携して、有事の際以外はトイレ紙は国外輸出入は原則禁止にして、すべての孤児院の利益がきちんと守られるように均衡を図らってるらしい。

 異世界孤児院、各地各国連携がすっごく取れてるんだよね…むしろ怖いくらいに…。


 昔の…国から援助もなく困窮を極めた時代に戻らないように、協力して運営していこうってなったらしいよ。

 トイレ紙の売上も馬鹿にできないし、一致団結して権利を守らないと、どう転がるか…わかったもんじゃないからさ。


 結局のところ、国が孤児院へ支給してるのは食費だけなんだって。

 これは国営の孤児院って印象付ける為の、大人の事情ってやつかもね。


 庶民からも、もし自分たちが不慮の事故や病気で亡くなっても、子供にしっかりとしたセーフティーネットが確保されるって、孤児院が良い状態に保たれてることは、凄く好意的に支持されてる。

 わかるよ~。無料で保険が付いてる感じだもん。親御さんは安心だよね。


 それにね、ポーションが高くて買えなかったり、薬で治らないような病気や怪我をしたりで、職を失った人の雇用の受け皿にもなってるんだって。

 人口の数だけお尻はあるんだから人手は必要だしね。

 あれ…言葉のチョイスが…た、他意はないわよ…。


 国民の人気取りが国庫を痛めなくてもできるこの権利をきっちりと守るべく、違反する業者が出たりしないように、しっかりと目を光らせてるらしい。

 ま、自他国の国が睨みをきかせてる事業に、喧嘩を吹っ掛けるバカな業者はいないらしいけど。

 

 …意外に大人な話になっちゃった。

 でも、近代の孤児院の歴史、いや、トイレの歴史にはこのロイドさんは欠かせない存在。

 情報を制するには、この歴史は絶対に抑えておくべきなの。

 『はーい、ここ、テストに出ま~す!』って、先生がいう所よ。


 ちなみに『トイレ紙の準男爵』、この読み本は孤児院の自由室に何冊もあるんだ。

 ここにいる子供たちにとっては、自分と同じ出自の人のサクセスストーリー。

 偉人伝記みたいなものだからね。


 ◇◇◇


 ここで話は戻るんだけど、草の採取。これはトイレ紙の原料も含まれるの。

 このトイレ紙の凄いところは、ほぼ、どこにでも生えてる草で作れるって事。

 むしろほぼそこらへんに生えまくって困るくらいの普通の雑草が原料なのよ。


 ・成分に消毒成分があるアルコ草

 ・接着成分としてピタの木の樹液

 ・肌に優しい成分があるサボンヌ草

 ・安価にするための秘策である、この世界中にはびこる雑草のマスマス草

 ・ふかふかして肌触りがいいどこにでもある樹木、フワンフワの葉

 ・フワンフワの葉を水分で分解しやすくするために必要なフワンフワの実


 フワンフワの実を使って加工処理をしたフワンフワの葉っぱは、水気があると凄くやわらかくなるんだって。

 もちろん何も加工せず、葉っぱをお湯や水につけてもそんな事にはならないわよ。

 そしたら雨が降ったら森が恐ろしい事になっちゃうし。

 

 少しお水で濡らすとまるでウェットティッシュでお尻を拭いてるみたいな感じになるの。

 さらには下水で分解しやすいという優れモノ。

 配分としては、他にもちょろっと入れる物があるらしいけど、フワンフワの葉っぱ25%とマスマス草70%で95%。本当にどこにでもある雑木雑草で95%よ。

 トイレ紙準男爵の発明力、恐るべし!


 しかもはるか昔の食料難の時代には、この二つは害がないという事で、食用としても重宝していたそうだから安全素材。フワンフワは私も料理の時に、蒸し器として使ってたしね~。

 ちなみに決して美味しくはなかったらしいよ。

 サワットさんじゃないけどさ、繊維質は大事なんだから。


 この二つの素材は専門の業者が大量納品するから集めないんだけど、アルコ草とサボンヌ草は私たちも採取するんだ。

 この採取なんかが、孤児院での遊びってやつなんだけど。

 遊びと捉えるかどうかは微妙だけど、草を探してる時は夢中になっちゃって…認める、すっごく楽しいの。


 マルはトイレ紙準男爵をもの凄く尊敬しているらしい。

 いつか自分も薬草の研究をして、みんなの役に立つ発明をするのが夢なんだって。


 ほんまにええ子…ぽっ。

 お姉ちゃん、ずぅっと応援してるさかいな。

 って…うち、ずぅっと年下やってん…

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