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トイレ紙準男爵①

 子供のお仕事といえば?

 遊ぶことー!

 本日も全力で子供らしく遊んでおります、ベルこと成留鈴花でございます。


 でもさ、こっちの遊びは何というか…おもちゃがないからという事も関係してるのかもしれないけど、鬼ごっことかくれんぼみたいなものが主流。

 木登り?…あれは本能でしょ…。

 あ、あとはたまに泥団子作ってるの…大好き。ぽっ。


 でも何より一番の遊びは、敷地脇から郊外をつなぐ広大な森での素材集めね。

 もちろん遠くには行かないわよ。この世界には魔獣が存在してるんだから。

 ここら辺に出てきたことはないらしいから、一応は安全って事にして森にみんな入ってるけど。

 

 これが遊びかと言われればどうなんだろう…。

 まぁ…孤児院だしね。生きる術を遊びに取り入れるってのも悪くないか。

 みんなでワイワイ散策しながらお喋りしてるんだから遊びって事になる…かな。

 食べ物を森から取ってきたり、薬草を採取したり…友達をガン見したり友達をガン見したり友達をガ…


 いやね、これがすっごく楽しいのよ。

 獣人の子どもはやっぱり身体能力が違うから。

 高い木になる果物や木の実なんかを取るのが得意で、それを見てるだけでも楽しい。

 いや、それを見てるのこそが至福。


 最初に軽々と木々を飛び移る我が友を見た時は、興奮しすぎてハァハァしちゃったから物凄く気持ち悪がられたけど…私が悪いんじゃないわよ…ね?


 私はと言えば、木にするする登ったり隣の木に飛び移ったりできる訳もなく、ひたすら薬草や低木になる木の実の採取。特に薬草採取はお気に入りなんだ。

 

 だって、これが普通に流通してるポーションの材料になったりするんだよ!

 ポーションだよ!こんな言葉を普通に使うなんて思ってもみなかった~。

 大丈夫よ、迷子にはならないようにってちゃんと気を付けてるわ…。


 薬草の種類を覚えるのも楽しいのよね。結構詳しくなってきたんだから。

 兎人族のマルは薬草にとっても詳しくて、私が興味を示すと色々と教えてくれるようになったんだ。

 教えると自分の勉強にもなるからって言って、面倒をみてくれるお姉さんなのよ…めっちゃええ子やねん…。


 ◇◇◇


 この薬草採取のおかげで、孤児院の運営が上手くいってる訳も知ることになったの。

 これ、ずーっと疑問だったからさ。すっごくすっきりしたわ。


 みんなこざっぱり清潔にして暮らせてるし、お腹が空いて困るような事もない(元、ハラペコ軍団は除く)。

 贅沢は決してしてないけど、必要なものはしっかり調達される。

 お手伝いに来てくれてる人もたくさん雇えてる。


 よほど国の保護が手厚いんだろうと踏んでたんだけど、少し正解でだいぶ不正解だった。

 何故なら、収入は孤児院自体が運営する事業で賄えているから。

 国はその事業の権利を守る為に盾になってくれてる感じかな。


 昔はどこの孤児院も運営が大変だったんだって。

 権力が集中しすぎじゃないかって思うんだけど、この世界の教会は国営。同じ敷地内にある孤児院もまた国営の施設って事。

 不況不景気っていうのはどのにもやってくるもので、相当厳しい時代がこの世界にもあったらしい。


 そんな辛い時代をくぐりぬけ、凶作での不景気を乗り越えた孤児院。

 時は今から約100年前。衛生面を改善すべく大改革が行われた頃。


 衛生大改革に合わせて今の前段階のトイレが誕生したらしいんだけど、いち早く『お尻を拭くもの』に目を向けて、安価で衛生的なトイレ紙を作った人がいた。

 それが当時、この国の西にある隣国、カサンドラの孤児院の院長だった、のちに『トイレ紙の準男爵』と呼ばれるようになったロイドさん、その人なの。


 なんでも今使っている低コストのトイレ紙を発明して、なんとその権利を永久的に大陸全土の孤児院へと譲渡したらしいのよ。


『グーテンブルージュ権利保護舎』、通称『グー舎』っていう権利保護団体がこの世界にはあるんだけどね。

 その団体へ『グーテンブルージュ著作許諾発明申請書』を申請して許可がおりれば、その申請した権利は守られるらしいのよ。

 この申請書ね、通称『グーチョキパ』なんて呼ばれてるらしい。


 …ちょっと元日本人の私からしたら冗談みたいな通称なんだけど、みんな普通に呼んでるんだよねぇ。

 これ、権利保護団体の関係者が転生者って事あると思う?偶然かなぁ。


 トイレ紙に『永久グーチョキパ』ってなかなか取れない、この永久独占権の許可がおりた為に、トイレ紙は全土共通で孤児院の独占市場なんだって。

 トイレ紙の準男爵は捨てられ子で孤児院に恩義を感じて、その恩返しがしたかったって言ったらしいわよ。


 何とできた人なんでしょ~!

 そう思ったのは私だけじゃなくて、当時の人達もみんな同じ思いだった。

 各国が一代限りの名誉伯であるけども、準男爵位を与えたの。各国がって…凄いわよね。


 望んだ褒賞は何だと思う?

 なんと孤児院と孤児院で作る孤児院で製造する製品工場の敷地と建物。これを貰い受けて、それまたすべて孤児院へ寄付したんだそうよ。

 あとは孤児院の非課税継続とか、そういう大人な感じの話がいくつか。


 褒賞と言うよりは、各国との商談みたいだったんだって。

 個人的に利益が一つもなく、しかもとても変わった内容の褒賞だったって、読み本に書いてあるんだもん。


 土地の貰い受けてって言っても、この世界的には『この大地はすべて神のもの』っていうのが大前提にあるらしく、それを王家が一括管理して、貴族やなんかに治める権利を与えるって感じらしいけどね。


 神さまに代わって王家が治める土地の権利を、貴族や功績のあった人が預かり受けるって感じ?

 …なんだそれ…すっごく難しいわ。


 孤児院は教会付属の敷地内にあるんだけど、厳密には孤児院は孤児院の土地建物なんだって。

 だから、どこの国も王都には孤児院がないらしいの。

 王都って管理が厳しいから、そもそも孤児が少ないらしいけどね。

 

 領地はあげられないけどそれならばって、どこの国も了承したらしい。どこの国も国営にも関わらず、土地建物が孤児院に権利があるって言うんだから驚きよね。


 トイレ紙準男爵の思い通りって感じ…手のひらの上で踊る各国王家が容易に想像ついちゃう。

 しかしまぁ、よくこの褒賞を許可したわ…って、ちょっとだけ思っちゃったのは私だけかしら。

 …相当、裏工作があったんでしょうね。


 時代が変われば、色々と起こるかもしれない事態を想定してたんだろうか。

 不遇の時代が長かったってのはわかるけどさ、国をあてにしてない感がすごいったらないわ…

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