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異世界旅~家に帰るまでが遠足です~㉒

 旅も終盤、僕らはとうとうカシールまで戻ってきた。

 なんか、あっという間だったな…。


 夕方、カシールの町をちょっと見てまわって、年輪屋へ寄って、木材の調達をすることになった。

 曲がりの良い木は加工後に届くから、今日は違う木材を買い付けるらしい。


 タンデムでの魔石取引がうまくいったシーラさんは、色々閃いたらしくて、何やら新しい魔道具を思いついたみたいだよ。

 今日はアマンダさんがお留守でロベルトさんがお店を仕切っていた。

 従業員が客車までついて来てくれて、購入した木材を積んでくれる。


 曲がりの良い木…僕もいつかは使ってみたい。

 すごく曲線が綺麗に出るし…リクライニングチェアとか、作ってみたいなぁ。


 ◇◇◇


 朝、屋台で往路でジャムを買ったお店でジャム瓶を戻してお金を少し返してもらう。

 そこでついでに朝食を買ってもらった。

 ワイルドグーズラズベリーのジャムがおいしかったから…あ!コンポートがある!!

 こっちの方が生の果物感があって美味しいんだよね。

 ワイルドグーズラズベリーのコンポートとチーズがたっぷり入ったサンドウィッチと果実水。

 僕、ベリー系とチーズの組み合わせにどハマリ中。


 シーラさんはルコッコの卵とチーズのサンドウィッチと、ネオネクトウのジャムが入った紅茶。

 あとは、ミネラリア周辺でとれる木の実、ミネラリアグリーン。


 僕のお昼は、脂がのって美味しいよって口車に乗せられて、ストロング・ザ・ボアのお肉とキュウリとじゃがいもに黒ソースがたっぷりかかったサンドウィッチ。

 このお肉、独特の弾力が癖になるんだよなぁ。

 飲み物は基本のロムロム果実水。


 シーラさんは行きも同じものを頼んでたような気がするけど、レディーキラーディアの肉汁でパンまでデロデロになるサンドウィッチと、この地方で作っているお茶を買っていた。


 家に帰るまでが遠足です。

 気を引き締めて、ミネラリアへ出発だ!


 ◇◇◇


 まさかまさかの最終日。

 なんと、僕らの馬車に虎威が付きました~!

 虎威は護衛のいる馬車の後に付いて借馬車を走らせる人達の総称。

 ただし、大主道限定。


 他の道じゃ護衛を雇えない商人が単独行動するなんてありえないから。

 ま、そんな無謀な人もいないだろうけど。

 でも、ここではとっても縁起が良いとされてるから、みんな好意的。


 ダリアさんとドイルさんが、虎威の馬車に近づき何らや話をしてる。

 後で聞いたら、虎威が来るとギルドカードを見せてもらって身元確認したり、必要なら馬車の車内を覗かせてもらったりするんだって。

 人となりが不満なら断わる事もできるらしい。

 そうだよね、強盗の手引する人かもしれないもん…大主道ではそんな事できないだろうけど。


 途中で、狭い道へと逸れて離れて行ってしまったから、その先には村があるのかも。

 お礼やら気を付けてやらの挨拶を、ダリアさんとドイルさんにしたらしい。

 わざわざ被っていた帽子を取って、僕らにも御者席から手を振ってくれた。


 男性の服を着てたからてっきり男性だと思い込んでたら、まだ若いだろう獣人女性らしき商人だった。

 背中に大きな刀を背負ってる。なかなかの迫力だ。


 虎威、縁起ものだよ。よーく心の中で拝んでから、僕も手を振り返した。


 ◇◇◇


 ダリアさんやドイルさんとも今日でお別れ。

 最後の休憩を一緒に過ごそうじゃないか。

 旅の間中、ありがたい事に天候に恵まれて、雨は一度も降らなかった。

 だから各休憩所では、いつも厚手の大きな布を一枚敷いて、クッションを並べて…思い思いの姿勢で休息を取ってたんだ。


 これが大好評。特にダリアさんは旅の間で、僕のクッションコレクションをすっかり気に入ってくれたみたい。

 最初に僕がえっちらおっちら自作のクッションコレクションを、客車へと運び込んでいたのを見ていた呆れ顔からは想像もできないよ。


 こうやって休憩で一緒になる度にダリアさんはドーナツ型座布団に座っている。すっかり休憩時の指定席になっちゃった。

 恐ろしくって考えたくもないけど、一日中、ずっと馬に乗ってるんだもん。いくらゆっくりな速度とは言え、辛いはずだよね。


 二人ともまだ16歳なのに、ギルドランクはもうEランク。

 すぐに上のランクへ駆けあがっていってしまうだろうから、もし大主道でいつかまた旅をすることがあっても、もう馬車の護衛をお願いすることはないだろう。


 でもどこかで再会できたら嬉しいよね、なんて言いながら、朝買った屋台飯を休憩所で食べていたら、到着したばかりの隣の客車の様子が、ちょっとおかしい事に気が付いた。


 客車のカーテンは閉まってるけど、まだ若い女性がオロオロしながら出てきてはまた馬車に入り、単馬で馬車と並走していたらしい旦那さんっぽい人もウロウロして、馬の水飲み場でタオルを濡らしたり、桶に水を汲みに行ったりと忙しい。

 チラチラと横目で見ていると、シーラさんも同じくチラチラと横目で見ていた。


 気が付いたらダリアさんとドイルさんがいない。

 あれ?って思ったら、隣の馬車の護衛二人と立ち話をしている。どうやら知り合いみたい。

 ダリアさんが戻ってきたので、何かあったのかと聞いてみる。


「あの護衛の二人…実は私たちが組んでるパーティーメンバーなんですけど…」


 なんでも、タンデムまでの片道護衛を引き受けてるらしい。


「小さなお嬢さんを連れた、ご家族の護衛を引き受けたらしいんですが…お嬢さんが初めて馬車に乗ったそうで、体が痛くて耐えられないって苦しがってるみたいで…」


 おぉ、同士よ!やっぱり異世界にも居たんだね!!

 いや…感動してる場合じゃなかった。


「日程的に引き返せそうにないらしくて…困ってるみたいで。いや…引き返す返さない以前の問題で、動けないみたいなんですけどね…」


 あんまり休憩が長引けば、どんどん到着時間もずれ込んでくる。小さな子供を連れた家族なら、なおさら早めに行動したいだろうに。


 クッションコレクションで、どうにかならないかな…。

 僕と同じ状態ならば、このクッションは効果てきめんなはず。

 旅もあと数時間だし、渡しても大丈夫だよね…主にシーラさんの分を…

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