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閑話 ダンジョンの話に見せかけて、不審者には気を付けようねって言うお話

「今日はダンジョンについてお話をします。ダンジョン…知ってる人はいる?」


 何人かの子供が勢いよく手を挙げる。


「おや、結構いるなぁ。でも、全く知らないお友達もいるからね。もし知っているお話でも、みんな静かに聞く事。わかりましたか?」


 今ね、孤児院でダンジョンについてのお話があるって言われて、10歳以下の子供達は全員集合よ。

 もちろんワタクシ、ベルこと成留鈴花もちゃんと参加しております。

 話し手は院長先生、脇にアリー先生が控えている。真面目な話をする時の布陣。


「この大陸にはね、ダンジョンと呼ばれる、巨大な深い深い何層もある地下洞窟が突然できる事があります。突然できるっていうところは、この前話をした瘴気と同じだよ。近くに村や町があれば、出来た事がすぐにわかって、冒険者達が魔獣をやっつけてくれる。冒険者の事はみんなもう知っているね?」


 こくこくと子供達が肯いている。


「人があんまり行かないようなところにダンジョンが出来てしまった場合は、魔獣がダンジョンの外に溢れかえってしまう事もあるんだ。それで初めてダンジョンが出来たってわかった事もある。ただし、大抵は国が『どこそこにダンジョンが出来ましたよ~』って、きちんと教えてくれるんだ。だから、その事で大きな被害は出た事はないんだよ。それにね、不思議なんだけど、ダンジョンは人の気配が沢山ある場所の周辺に出来る事が多いんだ。だからすぐにわかるんだ」


「町の近くにできるの?」


「そうだよ。町や村の近くにできる事が多いんだ。なんでかはわからないけれどね。そして、つい最近、このミネラリアの近くにもダンジョンが出来ました」


 子供達は一斉に騒ぎ出す。


「院長先生~、魔獣がここにも来るの?」


「大丈夫。冒険者の人達がダンジョンに潜って魔獣をやっつけてくれるから、外には出てきません。ここには来ないから安心してください」


「冒険者が負けちゃったら魔獣が出てくる?」


「そうだなぁ…冒険者が負けた事は一度もないからわからない。でも大丈夫、今回もちゃーんとやっつけてくれるからね」


「ダンジョンはずっとあるの?私が大きくなって冒険者になったらそのダンジョンに入れる?」


「うーん。ダンジョンはね、地下の一番下の階にいる、とっても強い魔獣が倒されてしまうと、二年~三年くらいで消えてなくなっちゃうんだ。だから今回できたダンジョンに入るのは無理だろうねぇ。でも、みんなが大きくなった時には、また別のダンジョンが出来ているかもしれないよ?」


「ダンジョンが消えるってなんでわかるの?ダンジョンが消える時に人がいたらどうなっちゃうの?」


「ダンジョンはね、消える時期が近くなってくると、入口がどんどん小さくなっていくんだ。その時にはもうギルドが立ち入り禁止にしてしまうから、誰も入る事が出来なくなっちゃうんだよ。もし、消える時にダンジョンの中に人がいたらどうなると思う?」


「どっかに消えちゃう!」


「あっはっは。それは困るなぁ。心配しなくても大丈夫。ダンジョンがあった場所の地上に戻されるだけなんだ。それにね、まるでダンジョンに意思があるみたいで面白いんだけれど、基本的には中に人がいる時はダンジョンは消えないんだよ。ただしね、もうすぐ消えるってわかってる時に長時間うろうろしたりすると…地上に戻されてしまう。そうなると持ち物は全て没収。武器も防具も集めたお宝も…もちろん服もね。素っ裸で地上に放り出されちゃうんだ」


 …「「「「「えー!」」」」」…


 ゲラゲラと笑いだす子供達と一緒になって私も笑うふり。

 いやマジで?…笑い事じゃなくて怖いんですけど!


「ギルドが『入っちゃダメ!』って、決めた後に入らなければ大丈夫だからね。みんなが大きくなって、もしもダンジョンへ入るような事があったら、ちゃーんとギルドのルールを守る事?わかったかな?」


 …「「「「「はーい!」」」」」…


「ギルドも冒険者もダンジョンの豊かな恵みを得る為に、しばらくは一番強い魔獣を倒さずに討伐をすることになると思います。でもね、僕たちの生活が決して脅かされる事の無いようにって魔獣をしっかり退治してくれているからね。他の町…いや、他の国からも沢山の冒険者が、このミネラリアへ沢山入って来ます。しばらくは町がとっても騒がしくなると思うんだ。中には悪い人も紛れているかもしれない。だからいつものお約束を、あとでアリー先生ともう一度確認しましょう」


 長々とダンジョンをそのままにしておくと、魔獣はいつか外に溢れてくる。

 だから、冒険者をダンジョン内に入れて、魔物が外に溢れださないようにしっかり討伐しつつ、まずは最下層が何層かを確認するんだって。それからしばらくはダンジョンの素材をある程度まで確保して、もう良いかなってところでボスの魔獣を倒す。

 ダンジョンの旨味を最大限に頂きつつ、魔獣が外に出てこないぎりぎりの時期にボスの魔獣を倒して、ダンジョンを終結に導く。このタイミングが大事らしいの。

 

 ダンジョンの近くのギルドが取り仕切るのが慣例らしいから、今回のダンジョンはミネラリアの冒険者ギルド長が統括責任者なんだってさ。冒険者ギルド長には、そこらへんの匙加減が求められるらしい。

 だけどね、今回のミネラリアの近くに出来たダンジョン、噂では物凄く大きいらしい。

 だから、素材の回収は二の次で、最初からどんどん攻めてくらしいって…。

 面白い素材が出るって、既に大陸中の評判になっているらしいけど、素材ばっかりに気を取られてタイムオーバーして、魔獣が町に溢れたら困るからね。


 この話はね、厨房の隅でじゃがいもの皮むきしながら、ご婦人方の話をこっそり聞いて得た情報なのよ。

 私、気配隠しがすごく上達してる気がするわ。


 瘴気と違って、町にもお宝や面白い素材が出回ったりするから、すごく楽しみだってご婦人方も言ってる。

 冒険者は町にお金をたくさん落としてくれるし、地域の名産を持ってきて売ってくれたりもする。近くにダンジョンが出来るとどうしてもみんな浮き足立っちゃうらしい。


 ボス魔獣を倒すまでは中級~上級冒険者が、ボス魔獣が倒されてからは初級~中級冒険者もミネラリアの町に沢山やってくるだろうって。

 

 ダンジョンの話に見せかけて、不審者には気を付けようねって言うお話だったみたいだね。

 ダンジョンかぁ…行く事はないだろうけど、ちょっとだけなら見てみたい…気がしないでもない…。

 

 あ、話し手がいつの間にか、アリー先生に交代してるわ。

 アリー先生といつものお約束を唱和よ!さんはいっ!!


 …「「「「「知らない人についていかない。知らない人から食べ物を貰わない。知らない人とお話する時は…」」」」」…

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