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わらしベル長者のカリカリ蜂蜜ミネラリアグリーン

 おほほほほ、わらしベル長者こと成留鈴花でございます。


 ラヴァリマの餌を作る時に出たゴミ、ドラジャの搾りカスで作った料理レシピがご縁で、なんと蜂蜜を頂いてしまいましたの。


 この世界には商業ギルドと生産ギルド、あと冒険者ギルド、この三つのギルドがあるんだけど…。

 まぁ、三つと言っても同じ建物の中だから、母体は同じ経営なんでしょうね。

 そのうちの一つ、商業ギルド長のサワットさんから、蜂蜜を頂いてしまったのですよ。おほほほほ。


 冒険者ギルドはわかるけど、商業と生産ってどういう線引きかわからなくって院長先生に聞いたら、生産系の職人とそれ以外って感じなんだって。

 この世界には大工、道具職人、家具職人、鍛冶師、魔道具師、錬金術師なんていう生産職が多数存在するんだけど、そういう人達は生産ギルドに所属するの。


 普通の繭糸を売るだけなら、どこにも所属しないで買取だけしてもらっても良かったんだけど、ちょっと珍しいものだったからね…。私は目立ちたくないし、入手先も知られたくないから…こういう場合はギルドを通すに限るんだって。

 まぁ、ボヨンビヨン・モリの繭はあまりにも珍しいから、発見者はラッキーだね!みたいな感じで扱われるんだろうから、入手先を探られたりすることもなさそうだけど…たぶん…。


 サワットさんも正義感の強そう、且つ権利関係にも厳しそうなおばちゃまだったから、私としてはちょっと安心したのよね。ちょっとあきんど全開すぎておっかなかったけど、信頼はできそうだったから。

 そうそう、商業ギルドは商人はもちろん、レシピ、冊子、図案、読み本関連はすべて商業ギルドの管轄らしいの。

 その関係で、服飾系と料理系の関連職種の人がギルドに入会する場合は、生産職でも何故か商業ギルドが担当になるんだって。

 料理人や縫製職人…もちろん製糸工房も商業ギルドの管轄。

 今回、私が持ち込んだ二つはどっちとも商業ギルドが対応できるものだった。

 別のギルドへも顔を出すとなると、ちょっと年齢的(見た目的)にも目立つリスクがあるからね。これはラッキーだったわ。


 蜂蜜を私が使って良いのか、それとも厨房へ渡した方が良いか…なんて、院長先生と話をしていたら、タイムリーにサワットさんからの言伝が届いたの。

『ドラジャの搾りカスは便秘解消に役立つとの薬師の見解です。乾燥ドラジャの搾りカスに関してはもう少し検証が必要』、だってさ。

 仕事、早っ。

 仕事が早い人って、他の人にも同じスピード求めたがり屋さんよね。

 『冊子のタイトル案を出してください』だってさ…。

 

 うーん。

 豆だし、体に悪いはずないから、冊子も健康押しで作ったらいいかも。

『お財布にも体にも優しいドラジャの搾りカス☆レシピ集』

 あ、これいいんじゃない。早速、院長先生に言伝を頼む。

 

 サワットさん、便秘の事…めっちゃ熱く語ってたもんね。

 異世界にも便秘ってあるんだなぁ…。

 それにしても魔法と獣人、そして便秘って…。

 あぁ…私の異世界観が…


 ◇◇◇


 さてさて、異世界の蜂蜜だよ!

 なんでもこの蜂蜜は魔獣の蜂の巣から採れた物らしい。

 この世界には昆虫の蜂と魔獣の蜂がいるんだって。


 こんなに自然が多いんだから、もっと普通の蜂の養蜂を積極的にしたら甘いものが増えるのに…そう思ったけど、蜂の巣を目当てに魔獣がひょっこりしたりするらしいから、なかなか難しいそうなの、残念。

 

 魔獣の蜂蜜かぁ…くんくん…すっごく良い匂い。

 貰った人特権(味見)発動~!


 …これ…温州みかんの匂いだ…。

 懐かしい味…実家のこたつで食べたみかんの味を思い出すよぉぉぉ。

 みかんの匂いにノスタルジーを感じつつも、厨房へ向かう。

 院長先生との話し合いにより、蜂蜜をみんなに食べて貰えるように工夫するからって蜂蜜使用権をゲットしたので、厨房を使わせてもらえるように頼んであるの。ぐふんぐふん。


 厨房に居たご婦人方によると、少し前にこのミネラリアの近くにできたダンジョン産の蜂蜜じゃないかって。

 …待てよ待てよ。ダンジョンに蜂がいて、その蜜は温州みかん味。

 ん?ダンジョンにみかん味の花か何かがあるって事?

 え?ダンジョンって花とかも咲いてるの?

 そもそもダンジョンは地下にあるって聞いたけど…。

 ダメだ…異世界が謎すぎる…。


 サワットさんが言った通りにドラジャ蒸しパンに挟んでも良いけどさ、たまにはドラジャから離れたい。

 いや、だって毎回、厨房でカスだとかゴミだとか言ってるのもなんだかね…。

 そこで今回は、この時期に森へ行っては誰かが持ち帰ってくるでおなじみ、ミネラリアグリーンを使った一品にしたいと思います!


 だって紅茶とかにいれちゃったらさ、すぐになくなっちゃうでしょ?

 出来れば、みんなで食べられそうなものが良いよね。


 ミネラリアグリーンはここミネラリア周辺で良く採れる木の実なんだ。

 木の実は基本的に、そのまま食べるって感じかなぁ。

 しっとりしてて、独特の木の実の甘味とコク…油分があるから、それだけでももちろん美味しいんだけどさ。

 たまには、贅沢に甘~い木の実にするもの悪くないと思うの。

 簡単にできるしね。甘いものが少ないからこれだってとっても贅沢な一品よ。


 材料は…

 ・蜂蜜

 ・飲料水

 ・ミネラリアグリーン

 ・油紙


 よし!作るよ!!


 まずはミネラリアグリーンを全部殻から出す。

 フライパンで素焼きにする。

 いや、してもらう。

 いや、フライパンっぽい鍋だから勝手にフライパンって命名よ。


 焼き色が少しついて、パチパチ音がしてくるまで中の火で…お願いします。ぺこぺこ。

 出来上がりを平らなお皿の上にあけてもらう。

 完全に冷めるまでは、じゃがいもの皮むきをお手伝い。

 

 冷めたら試食。


 ――カリッカリッ


 香ばしいねぇ…これだけでも十分美味しい。

 生も美味しいけどさ、私はやっぱりローストが良いな。


 さて、ここでこれを全部食べてはいけないよ。

 それじゃ、ただのローストミネラリアグリーンだからね。

 でも美味しかったから、後で厨房の人達と一緒に食べる分を少し残しておこう。


 ミネラリアグリーンを炒ってもらったフライパンに飲料水と蜂蜜を入れる。

 プクプクしてくるまで中の火で…お願いします。ぺこぺこ。

 鍋から良い匂いが立ち昇る…私からしたらこれは完全に温州ミカンの匂いだけど、たぶん他の人にはロムロムの匂いに近いんだと思う。

 あ、プクプクしてきた…ローストミネラリアグリーン投入!

 全体に蜂蜜がかかるように混ぜ混ぜ…。

 水気が飛んだかな?

 木の実を冷ましていたお皿にさっと油紙を敷く。

 お皿の上に全部あけてください!ぺこぺこ。


 フォークでちまちまミネラリアグリーンを一つずつ離して冷ます。

 別の油紙に10粒ほどわけておく。

 いやさ、これから院長が私のせいでまたギルドへ行くことになっちゃって…サワットさんと製糸工房との話し合いがあるんだってさ。

 仕事、早っ。


 少しだけサワットさんに持って行ってもらおうと思ってね。

 蜂蜜をこんなにたくさんくれたんだもん。お礼をせねばならんと思うの。


 冷めたらカリッカリになるはず。

 今日の夕食に出してもらおっと。


 少し鍋底に蜂蜜が残ったフライパンに、紅茶の出がらしと飲料水をいれて…これはコンロを使って調理してくれた厨房のご婦人方と一緒に頂こう。

 ローストミネラリアグリーンとカリカリ蜂蜜ミネラリアグリーンももちろん試食!


 ――至福


 え?ローストミネラリアグリーンのレシピを教えて欲しい?

 いや…その…フライパンで、ただ炒ればいいだけだからさ…

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