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異世界旅~家に帰るまでが遠足です~⑰

 午後はシーラさんと別行動で王都を一人散策中の、アギーラです。

 知らない町を歩くのってすっごい楽しい!

 なんだか海外旅行みたい…海外どころか世界外だけど…。


 僕は午前中に行った方と逆の道、北側を通って西門へと続く道を歩き出した。

 こっちには貴族街がないから、西門まで行っても問題ないはず。

 できたら西門まで行ってみたいけど、あっちふらふらこっちふらふらの僕には時間的に無理っぽい。

 三時になったら東門側へと歩みを戻すことに決める。


 こっち側は随分と露店が多い。

 こういうの…ついつい見ちゃうよね。

 装飾品、ガラス製品…鞄や靴…あ、トマト売ってる!やっぱりすっごいおっきい!!

 ごちゃまぜの雑多感が楽しい。

 目移りしながらも西門の方へと向かって歩く。

 何となく、他の店とは違う、雰囲気のある露店に目がとまった。


 品物が他の露店に比べて明らかに少ない。

 その割に…売ってる品物に統一感がないんだよね。

 骨董屋さんって訳でもない感じ。あまり古い物って感じでもないみたいだから。


 服や文具、包丁…装飾品にタオル…これ、籠手みたいだ…防具かな…売ってるものが幅広い。

 何だか面白い店だなぁ…そう思って品物を見ていると、店主らしきおじいちゃんが、「手に取って見ても良いからね」って、言ってくれた。

 僕みたいな10歳児風貌のガキンチョにも優しいおじいちゃん。

 こういうお店はゆっくり見たい。


 なんとなくみんなお高そう…あ、変わったふちの形のコップがある。これ…良いなぁ。

 面白そうな品物が多いので、ついつい時間をかけて見ていたら、一枚のエプロンが目についた。

 美容師さんとかがしてる感じの…はさみとかクシなんかを入れておける、ポケットがたくさんついたやつみたいな…あの、ヒラヒラしてるやつじゃなくってね。

 こういうの…欲しいなぁ。


 そう言えば、エプロンとか…シーラさんはつけてない。

 作業中はガイアさんの着古したシャツを着てるし、お客さんと応対する時は普通の服。

 シーラさんにプレゼント出来たら良いな~なんて思ったけど…あれ、ガイアさんのマーキングっぽいからね…やめとこ。

 僕、そういう事には首を突っ込まないタイプなんだ。


 ちなみに僕も、シーラさんが一番初めに用意してくれた、ガイアさんの服を作業着にしてる。

 結局、あの服はそのまま僕にくれたんだよ。

 いら…違うから。おさがりであってマーキングじゃないんだからね。


 あの服、作業着にするにはちょっともったいないな、って思ってたから、エプロンを買えば普段着に昇格できるし。

 なんだよ…この世界はサイズの合わない服を着てる人なんて、たくさんいるんだから平気だよ…僕はオーバーサイズを着こなすタイプなんだ!


 エプロン…これからを考えると、一枚欲しいかも。

 僕…カタチから入る人、嫌いじゃないもんね。


 露店でエプロンを見つけた僕は、しゃがんでその薄い茶色のエプロンを手に取って見る。

 しっかりした生地…見るからに手持ちのお金じゃとても買えない感じがするなぁ…。

 今回は諦めて、お金が貯まったら買おう。

 おい、少しずつでもお金を貯めるんだって誓いがどんどん崩れてくぞ、自分。

 

「ワークエプロンが欲しいのかい?」


 おじいちゃんが声をかけてきた。

 これ、ワークエプロンって言うんだね。


「はい。良いなって思ったんですけど、ちょっと僕のお小遣いじゃ買えそうにないから…」

「職人になるのかい?」

「うん。今、修行を始めたばっかりで…」

「そうかい。一度着けてみたらどうじゃ?」

「え?いいの?」

「なに、着けるのはタダだから気にするな」


 僕は、薄い茶色のエプロンを着けさせてもらった。

 あれ…なんか一瞬、エプロンの生地が熱くなった。

 それに…なんだか透明な膜が体を包んだような気がしたけど…気のせいかな。


 それにしても…で、でかい!!

 僕がエプロンを着けたんじゃなくて、エプロンが僕を着けている…。

 ふと見上げると、おじいちゃんも苦笑いしてた…。

 僕は会話で気恥ずかしさを誤魔化そうとして質問してみた。


「僕には少し(だいぶ)大きすぎたみたい…。あのぉ…今後の参考までに…このワークエプロンはお値段は、おいくらくらいで…」

「これは大銀貨1枚だな」


 おぉぅ…高~ぃ!エプロン一枚、約十万円!!


「とてもじゃないけど僕の手が出せる値段じゃないや…サイズも…。試着、ありがとうございました」

「ここの店にあるのは全部、魔法付与がされてるものばかりなんじゃ。だから、ほかの店の物よりずっと値段は高いがな…でも、それだけの価値はあるぞ」

「うわ~、魔法付与!僕、初めて触りました!!」


 魔法付与…僕のスキルにもあったやつ。


 あ、そうか…だから店の品物に統一感がないんだ。

 こんな風に何にでも付与出来るのかな。固有スキルは職スキルと相乗効果がある可能性が高いって言うけど、僕は道具に付与できるのかな。やっぱり素地の差があるかな。

 色々聞きたいけど、あんまり自分のステータスを晒すのは良ろしくないだろうし…聞きたいけど…聞けない…ぐるぅぐぅぅ。


「このワークエプロンは、少し着けた者の防御力が向上するんじゃ。それに布地自体の耐久性向上も付与されとるな…それくらいかの」


 いや、それくらいって!

 おじいちゃん…これ、ずいぶんずいぶんなエプロンじゃないですか!

 そして何故、エプロンに防御力…戦う生産職用か?


「一瞬、体に膜が張ったみたいに感じたから何かと思ったら防御力かぁ…魔法付与ってこういうふうに感じるものなんですね。凄いや…どうもありがとうございました」


 これは思わぬ収穫だったなぁ。初めて魔法付与された品に触れたし、付与が体感できるなんて事、知らなかった。この世界、情報がなかなか手に入らないから、こうやって実物にお目にかかれるのはすごくラッキー。

 王都に来て良かったな~。ミネラリアなら絶対に露店では売ってないだろうし。

 ぺこっと頭を下げて立ち去ろうとした僕に、おじいちゃんがあわてて声をかけてきた。


「坊主…魔法付与のスキルがあるんじゃないのか?まさか…まだ覚醒前か?」


 おじいちゃん…それはあんまりだ…、

 僕をどんだけちっちゃい子だと思ってんのさ…

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