お芋ちゃんの恩返し?④
糸伸びる系ネタ、多くない?そう思ってるのはワタクシ、ベルこと成留鈴花だけでしょうか…。
お芋ちゃんの恩返し(?)が巻糸の形となって戻ってきたのでございます。
そう、例のボヨンビヨン・モリの巨大繭の糸。
ふぇぇ…繭一個でこんなに取れるの?
12本もあるんだけど…。
しかも巻糸…これ、随分とでっかいのねぇ…プロ仕様かな…。
製糸工房の人、張り切って特急で作業してくれたんだろう。
納品は大人を通してもらう事になってるから、院長先生に渡して帰っていったみたい。
一度、全部の巻糸を私に納品して、ギルドとの話が済んだら、販売の話し合いが動く事になったんだ。
納品に来てくれた人が、この糸の事について院長先生にきちんと説明したらしい。
さっき、納品の報告と一緒に院長先生が話してくれたの。
なんと、ボヨンビヨン・モリはサラマンダーって言う火の精霊の化身って言われてるらしい。
サラマンダー…急にふぁんたすてぃーっく!って思ったけど、ボヨンビヨン・モリの時点で相当よね…。
ボヨンビヨン・モリの糸を織り込みながら作った服は、火と物理への耐性があるらしくて、分厚くて重い完全武装タイプの防具並みの防御力を発揮するんだって。
しかも驚くことなかれ、この糸を編み込んだ布は洗濯不要なのよ!…配分率何%から不要になるのかは知らんけど…。
なんでも糸自体に強い浄化作用があってそれがどうとかこうとか…。
あとはこの糸を織り込んで作った防火袋も大人気。
だから高値で取引されてるんだって。
信じられないって?
奇遇ね、私も信じられない。
でもね、どんなに高値であっても珍しいものであっても、私にとってはお芋ちゃんの糸なんだもん。
巻糸1本は自分用に貰いたい…それくらいは良いよね?
あとはとりあえず院長室に置き逃げするわ!
◇◇◇
これがお芋ちゃんの糸かぁ…。
すっごくしっとりしてて艶がある…なんだか濡れてるっていうか…光ってるみたいに見えるのよ。
これってやっぱり絹糸なのかしら。伸びる絹糸…生成りじゃない真っ白な伸びる糸。
髪ゴム作りたい…ダメかな。すっごい高価って言ってたもんね。
でも、作りたい…。
・・・・・。
欲望に巻けた…。
これ、本当に丈夫な糸だ…四つ編みじゃなくって三つ編みでもいけたかも…。
サラマンダーって炎の精霊だっていうから、敬意を表して赤いビーズをいくつか組み込んでみました~。
うっとり。自画自賛中――
ウェービーメェメェで作ったシンプルな髪ゴムは、アリー先生にあげちゃったからさ…私も一つくらい何か持ってても良いと思うの。
これはお芋ちゃんとの思い出の品って事で…ぐふふ。
さ、明日は朝早くから忙しいの、もう寝なくっちゃ。
もっと先の話かと思ったら、院長先生からまたすぐに話があって、明日ギルドへ行く事になっちゃったんだ。
そう、この巻糸やレシピを売ったお金のやり取りなんかの話の為にね。
朝、ドラジャの搾りカス料理を作って、いくつか持っていく事になってるから忙しいのよ。
おやすみ!
◇◇◇
おはよ!
朝の支度が楽すぎる…お芋ちゃん、ありがとう!
それにしても、4歳にしてギルドへ足を踏み入れるとはね…。
まだ、教会の敷地と森以外にはろくに外出なんてした事ないのに、行き先がギルドって…ドラジャの搾りカス料理を作りながらちょっとボヤく私。
もうちょっと洒落た店とか…可愛いお菓子屋さんとか。
いや、全く洒落てなくても普通に食料品店…初めてのおつかいは、そういうデビューで良かったんだけど…。
ギルドって…むさくるしそうじゃん…ヒャッハーな世紀末風モヒカンとかいないでしょうね…。
あ、そう言えば、そこはかとなく金融臭もしてたっけ。
インテリモヒカンとか…なんか嫌だわ。
商業ギルド長との面談というか…ちょっと特例的な金銭のやりとりになるので、顔を出しておいたほうが良いって院長先生が言うからさ、ついていくだけなんだけど。
ドラジャの搾りカスを使った料理のレシピを販売することと、お芋ちゃんの恩返し(?)品…珍しいボヨンビヨン・モリという蚕の繭から取った巻糸の販売で、私にお金が入ることになったせいなんだ。
まぁ、主には巻糸の件で呼び出されたって感じかな。
糸がね、とっても珍しいものだから、商業ギルドを通しておいたほうが、万が一のトラブルを避けやすくなるって…ギルドを通せば入手元とかを探られた時に盾になってくれたりするんだって。
トラブルは絶対お断りよ。
本当のベルちゃんに迷惑かかるかもしれない案件は、早めに芽を摘み取っておかないとね。
本来なら、ギルドカードでお金のやりとりができるんだけど、私はまだ4歳。
ギルドへ登録できるのは12歳。
魔力覚醒がまだな私には、院長先生が保護者となって、入ってくる金銭の預託先に指定しておくってシステムを利用するのが一番良いって話になったらしいの。
よしっ、出来たぞ。
ドラジャガモチとルコッコの卵入りドラジャ蒸しパン。
マヨネーズドラジャガ、小さく切ったパンとネオネクトウのジャム。
乾燥させたドラジャの搾りカスが入った小瓶。あとはレシピ案を持って…。
今日作ったマヨネーズドラジャガはね、キュウリと人参も入ってるの。
そう、この世界にもキュウリがあったのよ~。
でもね、なんていうか…すっごくサクサクしてて、いわゆる日本で食べてたキュウリとは少し違う。
すっごく大きいから種も大きかったらなんか嫌だなぁって思ってたら、それはないの。
どういう植物生態なんだろうか…。
でもね、水分が少なめだからサンドウィッチにぴったり。
マヨネーズドラジャガも水っぽくならないし、食感だけが楽しめるから言う事なしよ。
私、こっちの世界のキュウリの方が好き~。
そうそう、厨房で仕事してるご婦人達が、一つくらいちょっと良いものを入れなさいって言ってくれて、卵をわけてくれたの。
だからね、蒸しパンは豪華に卵入り!
厨房にいたみんなで、こっそり食べてきたんだ。
やっぱりふっくら感とコクがプラスされて美味しくなるわ~。
む…オムレツ食べたい…。
卵はルコッコっていう、大きな鶏みたいな動物のもの。
普通に卵って言えば、これが出てくるって感じね。
肉も鶏肉っぽいし卵も鶏卵っぽいから…鶏の親戚筋って勝手に位置付けてる。
むむ…唐揚げ食べたい…。
◇◇◇
巻糸と一緒に荷物は全部院長先生が持ってくれる。
しかも、年長組がギルドへ素材を売りに行くからって、ラヴァリマが引く荷台に乗せて行ってもらえる事になったんだ。
ラヴァリマ君、よろしく!
ちょっと触らせてもらおうね…もしゃもしゃ…かわええのぉ…。
さ、それでは筋骨隆々汗の巣窟へ行きましょ~!




