表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/225

異世界旅~家に帰るまでが遠足です~⑫

 今回の旅の一番の目的地であるタンデムへ無事に到着しました、アギーラです。

 ドキドキの魔力覚醒の事は夜までお預け。

 まずは宿を確保しないとね。


 ラッキーな事に5泊連泊で取れたお宿は、一軒目で訪ねたいつもシーラさんが贔屓にしてる常宿。

 一階が料理屋、兼、宿泊客の食堂になってるんだ。

 出発を遅くしたから当然到着も遅かった。僕らは一階の食堂で晩御飯にすることにして、今日はそのまま部屋でゆっくり休もうって事になった。


 シーラさんはいつも一人部屋だけど、今回は主従コネクティングルームでの宿泊。

 なかなかお料理が美味しいらしく、シーラさんはこの宿に泊まる朝食も夕食も済ませてしまう事が多いんだって。上が宿屋だから、お酒を飲んでも安心なんだそうだよ。


 荷物を部屋で解き、ちょっと休憩してから一階へと降りていく。

 食堂はすでに結構な人で賑わっていた。

 メニューはスープ3種類とメイン3種類から1種類ずつ選んで、それにパンがつく。

 選べる定食セットみたいだ。

 店員さんが説明してくれる。


 ・湖野菜のスープ

 ・トマトのスープ

 ・3種きのこのクリームシチュー


 夏になってトマトが出始めたらしい。初めての異世界トマト。

 トマトのスープは是非とも頂きたい。

 メインは…


 ・ストライプテイルのバター焼き

 ・マーブルマッドカナールとじゃがいもの塩焼き

 ・ルコッコとキュウリの黒ソースがけ


 ストライプテイルも捨てがたいが…キュウリ!

 異世界のキュウリがある!!

 ちょっと興味があるよ。いやすごくある。

 うん。ルコッコとキュウリにしよう。


 あ、シーラさんと全く同じチョイスになってしまった…。

 食中毒が怖いから、シーラさんと僕は旅の間、別々の物を頼むことが多かったんだけど、タンデムでは5泊するから一緒でも良いよね。

 きっとシーラさんも夏野菜に惹かれちゃったんだな。

 シーラさんはお酒の果実水割を、僕は基本のロムロム果実水を頼む。


 明日行く王都の話なんかをしていたら、トマトのスープがパンと共にやってきた。

 じゃがいもと、きのこと…これは豆かな?

 具だくさんだなぁ…あ、ルコッコが入ってる。

 メインと被るはご愛敬。


 煮込まれたじゃがいもでとろみがついた、酸味の効いたスープは目にも鮮やかで食欲をそそる。

 パンをのっけて食べて美味しい。

 美味しくてメインが来る前にパンがなくなっちゃいそうだね、なんて話していたらメインがやってきた。


 輪切りにしたキュウリの上にルコッコのお肉が大量にのって黒ソースがかかってる。

 おかわりパンとマヨの皿を置いていってくれた。

 サービスだって。…良いお宿だね。

 黒ソースは肉汁を煮詰めて作ったどろりとしたソースで、ちょっと味が濃いから、さっぱりしたルコッコと良く合うんだ。キュウリが僕の知ってるキュウリだったら黒ソースも追いマヨも絶対旨い。

 

 さぁ、キュウリはどうかな。

 皮を剥いて薄く輪切りにしてあるんだけど…キュウリが大根サイズ…直径10cmくらいあるんだ。

 味は同じだけど、地球のキュウリよりサクサクしてる。

 こっちの世界はサクサクしてる食べ物がないんだ。

 すごく嬉しい。サクサクサク…これ旨い!

 これにマヨのっけて食べるだけでも尊い…。

 そう思ってシーラさんを見ると、すでにそうやって酒のつまみにしてた。

 …家でもこれ、作ろっと。 


 トマトはトマト、キュウリはサクサクキュウリ。でした。

 夏野菜、堪能。美味しかった!


 ◇◇◇


 さてさて、部屋に戻ってベッドへダイブ。

 ちょっとだけお楽しみ…ステータス画面を見てみようじゃないか。


『ポワン』――


 ***

 アギーラ(16)

 ♂ クー・シー


 体力160/160

 魔力180000/180000


 固有スキル

 言語1

 俯瞰1

 魔法付与1

 生活魔法1 

 +


 職スキル

 道具1 

 ***


 …分からないところは、考えても仕方ないから置いといて。


 あ、1だけ減ってた魔力が回復してる!

 ご飯食べたから?

 休憩したからかな?

 自然に微量回復するのかも。…わからん。


 僕、やっぱり道具職人になれそうじゃない?

 職業的にはもうその方向で固めても良いかも。なんだか作りたいものがいっぱいあるんだ。

 でも魔道具の図案作りも楽しいから、もちろん引き続き勉強するけど。


 職スキルがあるからって、別にその職に就かなくてもかまわないとは言うけれど、こうやってステータス画面に堂々と書かれちゃうと、どうやったって意識しちゃうよね。

 でも、自立に向けて自分に自分の背中を押してもらえた気がする。 


 固有スキル…いっぱいあるなぁ。

 生活魔法があれば御の字って感じだって聞いてたけど、随分奮発してくれちゃってる。


 言語…この世界の言葉がするする分かったからね、これはわかる。

 それにしても、これでレベル1かぁ…。

 そう言えば魔力覚醒もしてない転移直後からこのスキルを使わせてくれたって事もある。

 たぶん転移補正的なものと相まったんだとは思うけど。

 そんなレベル1ってどうなんだ…。


 異世界の言葉もそうだけど、魔道具で使う独特な言語も一発で理解しちゃったんだよね。

 レベルが2になるとどうなっちゃうんだろう…。

 でも大陸は共通言語だって言ってたし、シーラさんは他にも大陸がある可能性なんて、はなから考えてもいない口ぶりだった。

 あれ…これって宝の持ち腐れじゃない?

 いや、感謝してる、感謝してるって。

 

 俯瞰…これって、遠くの丘を空から見に行った事と関係あるんじゃないかと思う。

 フカンって広い視野で全体的に物事を見る事が出来る人を『物事を俯瞰できる奴』とか言う…あれと同じ言葉だよね。こういう…物理的に見る事も言うのかな。

 もしそうなら、物理的俯瞰って事になると思うんだけど…違うかな。

 でもなぁ…あれで、魔力1消費とか、さすがにないよなぁ。

 魔力量もまさかの宝の持ち腐れじゃないでしょうね…。


 魔法付与…これは言葉の通り、何かに魔法を付与ができるって事だよね。

 一体、何に付与できるんだろう。

 同じスキルがあっても、人によってどこまでできるかがだいぶ違いそうだし…。

 

 この世界、読み本やら冊子はあるにあるけど、全体数が少ないから欲しい情報がなかなか手に入らないんだ。

 情報が大事なのはわかるんだけど、すっごく情報収集がしにくい世界なんだよね。



 生活魔法もちゃんとある。

 これ…地味に嬉しいんだけど。

 僕は何が出来るのかな。

 浄化と浄化の一種らしい乾燥と、手から水を出すのと、火だねが作れる?そんな感じだったっけ。

 パンツ乾かしたりできるかもね。楽しみ。

 こういう旅をしてると、水が出たらいいなぁって思う。

 僕が思ってるより断然快適な旅だけど、やっぱり休憩所なんかで綺麗なお水が手に入ると嬉しいもん。

 人によって量が違うみたいだけど…大抵は両手一杯分らしい。

 それでもありがたいよね。


 ―――バシャァァ――


 うわっ。噓だろ!

 手、手から水が出た!どこ?どこから出たの??指先か?手のひら??

 

 いや、それより…どうしよう…、

 どこが両手一杯分だよ…。

 これ、これ…お漏らししちゃったみたいじゃないか!

 匂いがしなくたって、夜中こっそり洗った後って雰囲気になっちゃうじゃん!!

 5泊するんだぞ!旅の恥がまったく搔き捨てられない!!

 なんでベッドの上でこんな…絶対朝までに乾かないよ。

 どうしようどうしよう…おろおろ…

 

「アギーラ、起きてる?…なんか変な音がしたけど、大丈夫?」

「ひゃい!」


 主従コネクティングルームだった!

 僕の方からは鍵なんてかけてないよ。多分シーラさんも…

 絶体絶命だ。お漏らしがバレちゃう!

 いや、漏らしてないけどもっ!!


「だ、大丈夫です~。うるさくしてごめんなさい。寝返りうったら鞄を落としちゃって」

「大丈夫なのね?おやすみ~」

「おやすみなさーい」


 セーフ、セーーーフ。

 主従コネクティングルームは部屋が扉一枚で繋がってるから音が漏れやすいんだよ。

 

 いや…セーフだけどもセーフじゃない。お漏らしベッドは相変わらず鎮座ましますのです。

 でもベッドの上で良かったのかも。これ、床だったらシーラさんの部屋にまでお邪魔しますの大惨事だよ。

 

 ・・・ちょっと試してみようかな…、

 

『乾燥!』


 ―――ジーー――


 ぬあっ。乾燥も出来ちゃった!


 ◇◇◇


 つ、疲れた…。

 嬉しいけど疲れた…。

 

 これ以上、遊ぶのはやめとこう…いや、完全に遊ばれてたけど。

 

 とにかく今はダメ。

 タンデムの職人さんに会いに行くのが、今回の旅の一番の目的なんだからね。

 自分の事は全部帰ってからにしなきゃ。

 旅の目的をしっかり終えて、無事に家に戻ってから色々試そう。


 …ちょうど良いからって訳でもないけど、ミネラリアに戻ったらシーラさんにきちんと全てを話そうかなって思ってる。

 信じて貰えるかは別だけどさ…。


 もう嘘ついてるのが…辛いんだ…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ