表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/225

異世界旅~家に帰るまでが遠足です~⑩

 昨夜はあんなにはへべれけだったのに、朝の6時にはしっかり朝食の屋台を物色してるシーラさんを、ジト目で見てるアギーラです。

 なんでそんなに元気なんだ?


 昨日ね、主従コネクティングルームの主人の方の部屋を、シーラさんが譲ってくれたんだ。「一瞬も湖を見る事もなく、ベッドに入って一秒で寝る自信がある」って言ってね。


 商人なんかが親子でこの部屋を使う事も多いらしいんだよ。それって現主人が未来の主人を連れてきてるようなもんでしょ?だから、従者用のお部屋もいかにも従業員用って感じじゃないんだ。

 窓が小さくて、ちょっと狭めではあるけど、しつらえはどちらの部屋もあんまり変わらない。だから、ありがたくお言葉に甘えて部屋を代わってもらっちゃった。


 そして僕は夜の湖三昧。

 それにしても綺麗だったなぁ。三つの衛星(地球の月みたいなもの)と、星が湖面に反射して…。

 ボーっと見てたらさ、急に遠くの湖面が左右に割れたんだ。

 十戒でお馴染みモーゼの海割りか?なんて、思いながら目を凝らして見たら、すっごく大きな蛇が鎌首もたげて泳いでる。衛星と星明りに照らされて、怖いくらいに神々しくてね、もう目が離せなくなっちゃってさぁ。

 

 しばらく見てたんだけど、そのうちどこかへ行っちゃった。

 きっとすっごく大きな蛇だったんだと思う。湖の守り神様かもしれない。

 いや~、かっこよかった!

 すっごく僕の思い描く異世界っぽい感じだったんだ。良いもん見られた~。

 

 なーんて思って、興奮冷めやらずに気付けば朝。

 僕は現在、ぐったり寝不足この上ない状況なんだ。

 

◇◇◇


 シーラさんは…ミルクスープ片手にレイクロコダイルーズの串焼きを頬張ってます…やっぱり元気だ。


 僕は何にしようかな…「コンガリイールが焼きたてだよ~!」

 ん?何が焼きたてだって?…元気のいい声がする方へ目を向けると…おいしそうな白身の切り身が串刺しで売っている。早朝、湖で巨大コンガリイールが取れたんだって。

 「すっごく美味しいからね」って言う、おばちゃんの声に押されて朝食に選んでみましたが、さてお味はいかに。

 

 コンガリイールは魔獣。

 大きなものは食べられる部分が沢山あるから、食用として大人気らしいんだ。

 美味しいのにあんまり見かけないから、たまに取れるとみんなすっごく喜んで食べるらしい。

 

 皮を付けたままコンガリ焼くとすっごく美味しいってところから命名されたコンガリイールは、ほくほくでふわふわなのに弾力もあって…脂がのってる白身でしっかりとしたコク。

 これはたまらない。

 これ、何串でも食べられそう…夢中で食べてたら、シーラさんがもう一串買ってくれた。

 

 コンガリイール…イール…そうか、うなぎっぽい魔獣なのかも…味も似てるし…。

 なんかさぁ…言語が僕の知ってる英単語だと英語で頭に入ってきたり、かと思えば日本語で入ってきたり…なんだかまちまちなんだよね…。コンガリはブラウンじゃないんだよ、コンガリ。

 一瞬あれ?って思う事もしばしばなんだ。

 いえ…本当にありがたいとは思ってますけども!ますけどもね!!


 あ…これってもしかして…昨日のあの湖の守り神様(僕が思ってるだけ)じゃないの!?

 なんかショック…。

 胸躍った寝不足の原因を朝食にしれっと食べるなんて…これが異世界の厳しさってやつなのか?…違うか。

 飲み物は湖野菜のスープ。うん、やっぱりめかぶっぽい。


 昼はオーブンで焼いたというレイクロコダイルーズのお肉と、その油をたっぷり吸ったじゃがいものサンドウィッチ。

 

 今日は馬車酔いの薬草茶はやめてみることにしたんだ。

 もし具合が悪くなってもタンデムには連泊するから良いかなって。

 それにたぶんだけど、大丈夫だと思うんだよね。そろそろ素面(薬草茶なし)でも、馬車を試してみなくっちゃ。

 飲み物はシンプルに基本のロムロムの果実水にしよう。


 シーラさんの昼食はマーブルマッドカナールだけがドンッと入ったサンドウィッチ。

 マーブルマッドカナールは赤身のマッドカナールに、すこしさしが入った感じのお肉。霜降り肉みたいな感じかな?

 お肉だけってインパクトがすごいよね。食べ応えがありそう。


 水分補給は宿で馬車酔いの薬草茶を自分の水筒二つ両方に入れてたから、それで過ごすみたい…うん、それが良いと思うよ。


 冒険者のダリアさんとドイルさん、本日お世話になる御者さんとは厩舎前で集合。

 さすがに今日はまいどした君ではなかった、ザ・おっちゃんって感じの人だ。


 目的地は旅の一番の目的地、タンデム。いざ出発!


 ◇◇◇


 なんだか道が今までで一番安定してる。

 やっぱり王都が近いから道も整備されてるのかな。

 でも、クッションコレクションは絶対に手離さない背離さない尻離さない。


 僕らが住んでいるエヴァンス領は、南北に伸びる楕円形のような形をしている。

 その領地の最西部にあるのが僕らの住むミネラリア。

 今回の旅はエヴァンス領内を行く旅なんだよ。

 そこから王家と侯爵家が直轄統治する王都にも行くけどね。

 王都はミネラリアから北西にあたる位置にあたるんだ。

 

 その王都にはね、『精霊の祈り木の丘』っていう場所がある。


 丘の真ん中にある『精霊の祈り木』は、神様がこの大陸を創った時、一番最初に大陸中央に植えた木の事らしいんだけどさ。

 

 なんと、その『精霊の祈り木』は見える人には見えるらしいんだよ!

 何それ!!


「天気が良ければトリオネル~タンデム間の大主道の休憩所や馬車の車窓からね。見える人には見えるわよ」って、シーラさんが言うんだもん。


 トリネラルからタンデムまでは、林の中をエリーゼ湖に概ね沿う形で大主道が続くんだけど、何か所かある休憩所はすべて湖に面してるんだ。

 その一つであるタンデムに最寄りの休憩所は『精霊の祈り木の丘』が見える、絶好のビューポイントでもあるんだって。


 ちなみにシーラさんは王都に住んでたこともあるから、丘は何度も見たことがあるけど、木は一度も見えなかったらしい。

 すなわち見えない人ってやつだね。


 ちなみに、『精霊の祈り木』がある丘の周辺は、ユスティーナ王家が誰も立ち入れないように管理してる。全て王家の敷地になっていて、一般人は入れない。

 その敷地には高い壁が築かれてて、王都に入ってしまうとその壁や街並みが邪魔して逆に見えにくいんだ。


 そもそも神様ルールみたいな感じで、『精霊の祈り木』のある丘部分には、人間は入れないらしいよ。なんでも『祈りが届いた者だけが入れる』とか言う、訳のわかんない謎ルールがあるんだって!

 何それ何それ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ