異世界旅~家に帰るまでが遠足です~②
お読みいただきありがとうございます。
明日から基本、一日一話更新になります。
屋台で朝食と昼食を買ってから、いよいよ異世界旅へと出発だ!
僕の朝食はネオネクトウという果物のコンポート。注文してからバターが染みたパンの上にコンポートをドバっとかけてくれる。
ほぼ形が残ってなくて、とろんとゼリーみたいに口の中に入ってくる。
ネオネクトウは、初夏から秋に入るくらいまで取れる果物で、今が旬だからね。
ジャムじゃなくてコンポートが出回ってるみたい。
加熱すると甘味が強くなるけど、生のネオネクトウはしっかり酸味も残ってる。甘酸っぱくてジューシー。香りも良いんだよ。本当に美味しいんだから。
ガイアさんが言ったからって訳じゃないけど、万が一お腹を壊しちゃうと困るから、生の果物は今日はやめとくけどね。
あとは馬車酔い予防と言われている薬草茶を、水筒に入れて持ってきているので、それをちびちび飲む事にした。
薬草はそのまま食べても効き目があるらしいので、水筒に薬草がそのまま入ってるんだ。一日中、水を継ぎ足して飲むつもり。
だって、馬車に乗るのは2回目で、しかも長距離移動なんだから。
なんせ素っ裸で異世界転移させられた身、色々懲りてるんだ。
自分でできる危機管理だけはしっかりしておかないと…
シーラさんの朝食は、ルコッコという大きな鶏のような動物の卵を焼いたものに、チーズを挟んだサンドウィッチと、具がたくさん入ったクリームシチュー。
僕は昼用に、何もついてないパンとネオネクトウのジャムをひと瓶。あとはミネラリア周辺で良く取れるらしい、ミネラリアグリーンっていう木の実。
飲み物は果実水。もう一つの水筒へ入れてもらう。
果実水は飲み水にロムロムがひと絞り入ったやつだ。これが基本の果実水って感じかな。
ロムロムはレモンとオレンジの中間みたいな果物。何故か一年中とれるらしい。ビニールハウスとかないのに…そんな事ってあるの?
そういう魔法があるのかなぁ…異世界、凄い。
シーラさんはマッドカナールという赤身のお肉と、ほうれん草のソテーに黒ソースって言う、肉汁を煮詰めて作った、どろりとした黒いソースがかかったサンドウィッチと、ネオネクトウのジャム入り紅茶を買っていた。
ちなみに僕の普段の食費は全部シーラさんがお金を出してくれてるから、もちろん旅の間の食費もシーラさん持ち。
申し訳なさすぎる…だけど、旅先の食べ物って考えるだけでテンションあがる!
ここはありがたく御馳走になっちゃおう!!
テンションがあがったついでに、旅の間の食事を少し紹介できたらいいな。
いつも食べている物や、きっと初めて食べる物もあるはず!楽しみ!!
◇◇◇
しばらく森の中を走っていると、休憩地点へと馬車は入って行く。
ここの領地の、いや、この国のいわば主要道路だからね。町と町の間の森や林の中に数ヶ所、こういった休憩地点まで整備されてるんだ。
警備の人も常駐してるんだって。さすが大主道。
広い空き地に水場とトイレがあって、浄化魔法が使える人が定期的に周回して清掃もしてくれてる。
町中のトイレとは違って浄化槽タイプっぽい感じらしいよ。詳しくはシーラさんも知らないみたい、残念。トイレの事って面白いからついつい聞きたくなっちゃう。
だって、異世界で洋式便座風に出会えるなんて思ってもみなかったからさ。
ギルドの会員でギルドカードに『浄化特化』って印が入ってる人が、旅のついでにトイレやなんかを浄化してくれたら、屋台の無料券が貰えるらしい。浄化が出来る人はやっぱり重宝されてるんだなぁ。
ギルドは浄化魔法保持者にテストをして、ギルドの規定以上の腕があればカードに印をつける。
その印のあるカードを持った人で、行商の帰り道で魔力が余ってる人なんかが、結構掃除してくれるらしいんだ。
クッション用の毛皮を買ったロート君のお父さんも、掃除してるに違いないよね。
水場で手を洗ってお昼ご飯だ。
水場は主に馬用だけど、手足を洗うくらいなら人が使っても大丈夫なんだって。
馬車の旅ってさぁ…土埃まみれになるんだよね…。
ここのところ天候が良いけど、雨の日なんかは足も泥まみれって事にもなりかねないらしい。
おっ!中央には屋台まで出てるぞ!!
近くの村の人が出してくれてるんだって。村も現金収入獲得のチャンスだからって力を入れてるらしい。
森の動物達がこぞって遊びに来ちゃうような、匂いがきつい食べ物じゃなければ大丈夫みたいで、サンドウィッチや肉の串刺し、果実水なんかが売られてる。
それでも肉の串刺しなんかは結構匂いがあるからさ、村の人はここまで運ぶのって怖くないの?怖いよね??何度も村とここを往復するらしいし…。
昼食を取りながらそのことをシーラさんに聞いたら、匂いが外に漏れないようにする匂閉布っていう特殊加工した布があるんだって。
恐らくそれで台車や荷物を覆って運んでるんじゃないかって。
いやはや、なんとも異世界は便利なものがあるんだね。
それにしても…サービスエリアでついつい買い食いしちゃうあるあるは、異世界でも同じなんだなぁ…。
サービスエリア、もとい、休憩地点のトイレにはトイレ紙がない。
シーラさんから言われて、僕はちゃんとトイレ紙をたくさん持ってきてるから安心だけどね。
これがないと辛いもん…って、思ってたら、なんと屋台でもちゃっかりトイレ紙、売ってた。
町で買うより少し割高だけど、トイレでトイレ紙がない恐怖には勝てないのは異世界でも同じなんだな。
やっぱトイレ紙、大事。
◇◇◇
今回の旅は、タンデム在住の魔石生産人に会うのが一番の目的。
お願い事があるみたいで、会って話をしたいんだって。
基本的に、ほかの町の職人さんとやり取りをする場合は、早馬便っていう宅配サービスなんかを利用したり、懇意の商人さんが運んできてくれたりするから、僕が思っている以上にスムーズだったけどね。
でも一年に一回は出来るだけこうやって出かけて行って、いつもお世話になってる人達に顔を見せに行ってるんだって。
もちろん日程ありきだし、全員に挨拶できるわけじゃないけど、それでも毎年回ってれば数年に一度は会えるからって…シーラさんってすっごく義理堅いんだ。
ミネラリアも大きな町の一つだけど、他の町を見て歩くのも楽しいって。
大きい町はやっぱり洗練されてるし魔道具屋もあるから、じっくり見てまわって購買動向をチェックしたいんだって。
異世界の自然も満喫したいけど、町歩きも良いよね!
すっごく楽しみ。せっかくの異世界だもん、どうせなら色々見てみたいな。
問題は馬車、いや、僕のお尻と腰と背中だ。あと、太もも!
人生初馬車に乗って三分もしないうちに…お尻に『キーーーーーン』って、激痛が走ったあの衝撃。僕、トラウマ抱えそう…そう思ってたけど…ふっふっふ。上手くいったぞ。
自作のクッションが良い仕事をしてくれている。
もうかれこれ数時間、揺られてるけど超・快・適!!
シーラさんが僕の抱き枕を貸してくれって、しつこいのが難点っちゃ難点かな…貸さないからね…。
大きな長方形の座布団と、普通のクッションに加えて腰当て用、ドーナツ型の円座クッションも作ったんだよ。クッションって重ねすぎてもダメだからさ、色々調整しながら乗ってるよ。
普通のクッションは一人2個ずつで他は一個ずつ。
さらに僕用には抱き枕型と、振動対策で車体の隙間に詰めるクッションなんかもプラス。あと予備の長方形座布団も実は持ってきてたりする。
いやだってさ…これがないと僕、生きていけないんだよ…
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