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捨てるカスあれば拾うベルあり③

 只今、前々から気になっていた、孤児院の厨房からでるゴミの活用実験の真っ最中よ。

 ラヴァリマの餌である、ドラジャ豆の搾りカスを利用した甘味風料理。

 今から作っちゃうんだもんね。


 蒸し器があるのかないのかわからないから、前もって用意しておいたフワンフワの葉っぱを用意。

 この葉っぱ、本当に便利なんだよね。

 ラナが果物を木から取った時なんかにも緩衝材っぽく使えるし、籠にすれば持ち運びも楽なのよ。

 

 この葉っぱをね、折って編んでいくんだけどさ。

 年長組から作り方を教わってからというもの、超使い倒してるの。

 …よしっ。用意も済んだので、作るぞ!

 次に作るのはジャムが少しあれば満足できる甘味…を目指す一品!


 お金をかければ、甘い物だって色々手に入るだろうけど、ここは孤児院。贅沢はしないからね。

 固いパンに少しジャムを塗ってくれるだけでも御馳走なんだもん。

 ちょっと手間はかかるけど、やわらかい甘味は高得点なはずよ。


 少しの牛乳とさっきより多めのマヨ、そして海塩をほんのすこーしだけ入れる。そこへドラジャの搾りカスを入れてよく混ぜる。手で丸めて形作れるギリギリの緩さのタネを作る。

 

 それをきれいに洗っておいたフワンフワの葉っぱで包む。

 フワンフワの葉っぱも大昔は食用、近年までお皿なんかにも使われてたらしいからね、使っても大丈夫なはず。

 あ、でも一応…ふっくらさんにも聞いとこうかな…。


 深めの鍋を貸してもらう。鍋の中に緩衝材用に編んだフワンフワの葉っぱを引く。その高さの半分くらいの量のお水を入れる。

 熱に耐えられそうなお皿がないかなって聞いたら、オーブンにも入れられるというお皿を貸してくれた。

 オーブン!そうか、パンがあるんだもんね、考えつくべきだったよ!!


 厨房奥の部屋にあるから気が付かなかった…。

 背が小さいと、視界が狭いというか…あんまり全体像が見えてこないんだよね…。

 ともかく、耐熱皿ゲットだぜ!

 あれ…この言い方ってなんだか黄色っぽくてアウトなのかしら…。


 そっと鍋の中に耐熱皿を入れる。

 フワンフワは大昔は食用だったって、ふっくらさんもさっき言ってたもん。

 安心して、ドラジャのタネを包んだフワンフワの葉っぱをのせましょう!

 

 蓋をしてから、ふっくらさんに火をつけてもらった。

 そうそう、コンロは魔道具なんだって。

 読み本をコソコソ見まくってるから。もう魔道具くらいじゃ驚かないわよ。

 

 コンロは大抵どこの家庭にもあるらしいから、異世界スタンダードってやつね。

 しかも大中小の3種の火力が使えるという親切設計。

 魔道具師さん、ありがとう!


 火加減がわからないから、鍋に入れた水がポコポコと沸騰してくるまでは中の火で、あとは小の火にして付きっきりで様子を伺うことにしよう。

 水が沸騰してきた所で、フワンフワの葉っぱが熱に耐えられそうか確認する。…うん。大丈夫そう。


 さらにフワンフワの葉っぱを鍋蓋に少し噛ませておく。蒸気が籠りすぎるとベチャベチャになりそうだからさ。10分程蒸したところで一度葉っぱを開いてみた。

 やっぱり!ちゃんと蒸しパン状になってるぞ。ちょっとだけどちゃんと膨らんでる!


 火は通っているだろうか。竹ぐしがないのでフォークを刺してみる。

 よさそうかな…。火を止めて、耐熱皿を取り出してもらった。少し冷まして…さぁ、試食!


 ――ふわふわもちもちふわふわもちもち


 ちょっと…これも美味しいんじゃない?

 ドラジャの搾りカスは蒸すとふんわりもっちもちになるんだな。

 

 ただ、これだけでは味がしないので、先ほど言質を取っておいた、ジャムを少しだけ分けてもらう。

 蒸しパンに切れ込みをいれて薄ーくジャムを塗る。どれどれ…。


 ――ふわふわもちもちふわふわもちもち


 やわらかーぃ&あんまーぃ。

 やわらかいから甘さが引き立つね。

 ドラジャの搾りカス、結構いい仕事するよ。


 目から器用に光線を出している主婦三人組を交えて試食会をする。

 

 大・好・評!

 ふはははは。

 今まで捨てていた、ドラジャの搾りカスが脚光を浴びていますよ!


 「これでいつもハラペコ厨房うろうろ軍団の食料事情が改善されるといいね~」、なんて言いながらワイワイしていると、騒ぎを聞きつけたのか単に鼻が利くのか、なんと院長先生が厨房に顔を出してきた。…もう一度作る事になってしまった。


 「少量のジャガイモ茹でるのって…もったいないなぁ」って言ったら、多めに使っても良いってさ。言ってみるもんだね。

 ついでに人参も少量貰って茹でる。これでついでにポテトサラダ、かさ増しバージョンを作ろう。


 ジャガイモを荒くつぶし人参を適当に切り、ドラジャの絞りカスとマヨで和える。海塩少々。

 蒸しパン以外の2品を先に食べてもらう。

「ドラジャガモチとマヨネーズドラジャガです!」な~んて、適当な名前と共にお出しする私。


 人数増えてる…。

 また皆で試食する。

 私とふっくらさんはコンロの前でなんちゃって蒸し器を見張ってるけどね。

 あ、ふっくらさん…自分の分だけちゃっかりキープ…。


 院長先生は材料を聞いてはマヨネーズドラジャガをつっつきまわして驚いている。

 コラッ、子供の前でお行儀悪いぞ。

 でもまぁ…気持ちはわかるよ、ゴミだもんね。

 

 それにしてもドラジャの搾りカス…まだ残ってる。

 これだけ使えるってわかると、すっごくもったい気がするわよね。

 だけど、豆のカスだから腐りやすい。

 冷蔵庫なんてものはないし…搾ったその日だけしか使えない。

 

 あ…これってもしかして…カラカラに乾燥させれば少し日持ちするんじゃない?

 今は夏だし…天日乾燥できたりするかも。これはまた実験しなくっちゃ。

 っく~!楽しいんですけど~!!


 院長先生が詳しい話を聞きたがったもんだから、色々とプレゼン、もとい、説明する。

 「昔は人の食料でもあったんだって聞いたから、ドラジャの捨てていた搾りカスを何かに利用できないかって思って…」、なんて話をしていると…蒸しあがったかな……うん…よし、出来た!

 

「ジャムを少しだけ挟んだドラジャ蒸しパンです~」と、またも適当なネーミングを付けつつ、院長先生の前に皿を置く。

 「こういうの、いつもハラペコ厨房うろうろ軍団の腹の足しにならないかな」って考えて作ったの…。

 まるで聖女のような優しさマシマシ発言に、院長先生はとっても嬉しそうだ…いや、単に蒸しパンがゴミにしては、おいしかったからってだけかもしれないけど。

 厨房に入りたいという打算まみれなんだけど、こういう方便も厨房出入り許可ゲットの為には必要なのよ。


 ご婦人方に卵や牛乳、チーズなんかを使った料理案なんかをつらつらと話をしていたら、院長先生が「レシピをみんなに教えてもかまわないか?」って聞いてきた。

 もちろんどうぞ!


 ラヴァリマを飼っているのは子だくさんの家庭も多いだろう。

 ハラペコ成長期児童のお腹が少しでも満たされますように!

 

 …これ、レシピって言われると、ちょっと恥ずかしいけどね。

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