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捨てるカスあれば拾うベルあり②

 今日はね、実験の日なの。

 孤児院で毎日のように大量に出るゴミ、ドラジャの搾りカスを使ってね。

 念願の厨房使用権(監視付き)、やっと貰えたんだから。

 ちゃんとお手伝いをした上での交渉の成功であります!


 未だに昇格無しで、じゃがいもや人参の皮むきだけど…。

 包丁使い…今ではかなりの熟練よ。

 皮むき選手権にだって出られるかも…そんなもんないけど。


『料理に興味がある事は大変結構な事だけれども、4歳児が一人で作業するのはダメです』だってさ。…ですよね~。

 

 でもあきらめずに何度かお願いしてたら、転生して一番初めにお世話してくれた鳥人族のふっくらさんが、仕込みの合間にならって私の見張りをかって出てくれて、今日の実現と相成ったのです。

 ふっくらさん…好き。ぽっ。


 少しだけ絞りカスを食べてみる。

 今日は『絞りカスを捨てないで取っておいて欲しいの』って、かわゆさ自分史上最大限で事前にお願いしてあったから、きちんと鍋に取り置きしてくれている。

 

 クリーム色っぽい豆のカスだから、見た目はクリーム色。

 もちろん何度かこっそり食べたことはあるんだけど…えぐみはない…少しねっとり感がある…かも。

 味は…正直、美味しくはない。豆のカスって感じで舌触りも悪い。

 

 でも、これにさらに熱を加えるとどう出るか…。

 一晩水に浸して煮てあるからか、豆特有の青臭さは思ったより残ってないし、とにかく実験あるのみよ。


 お目付け役のふっくらさんがチラチラこっちを見てる。『あらあらまぁまぁ~、ゴミ食べちゃうのね~』とか思ってそうな顔して。

 あんまり他の材料は使えないから、まずは前々から考えていた一品を作ろう。


 ◇◇◇


 まずはじゃがいもを茹でてつぶす。じゃがいもはとっても良く出てくるお安い食材。一つ二つ使ったって大丈夫。

 そこへドラジャの搾りカスを…じゃがいもと…同量入れちゃおうかな。多いかな…まぁ、実験だからね、同量からいってみよう。


 マヨネーズを加えてさらに海塩を加える。

 本当はもう少し海塩を入れたいけどね~、海塩の値段がお高めな世界なんでほんの少しだけ。

 あ、海塩って普通の塩の事ね。この世界では塩はみんな海塩って名前なんだ。塩の壺にはみんな『海塩』って書いてあるもん。


 塩を少し…これをさっとこねたら、今度は手のひらサイズの小判型に丸めていく。

 食用油はそこそこ流通している為、薄く鍋に引くくらいならまったく問題ないからちょびっとわけて貰おう。

 

 鍋も鉄のような材質のものがあったので貸してもらって…ここからは、ふっくらさんが付きっきりで面倒を見てくれる。


「あらあらまぁまぁ~、ドラジャの搾りカスなんてどうするのかと思ったら、焼くのねぇ」


 ふっくらさんには、火の扱いがまだできない私に代わって焼いてもらうのだよ。

 油を熱してそこへ種を落としていく。ジュッといういい音がする。材料に火は通ってるけど、もっちもちにする為にはじっくりと焼いてもらいたい。

 キツネ色に焼き上がれば、出来上がり!

 さて、さっそく一口。


 ――もっちもっちもっちもっち

 

 うん、もっちもちだわ!やっぱり粘度が高かったみたい。

 じゃがいもだけでちょっと不安だったけど、むしろ繋ぎとしても役に立っている気がする。

 ふっくらさんにも一つ試食してもらおう。 

 

 大変!大事件よ!!ふっくらさんが、あのいつもの『あらあらまぁまぁ~』って言わないんだけど!

 ふっくらさんは「これは…」って言って、「危ないからここに少~し、座っていて頂戴ね~」って、私をひょいっと抱っこして、厨房の隅っこにある小さな木箱に座らせ、自分はどこかへ行ってしまった。


 ここ…私の定位置じゃないか…。

 うーん…座ってる間に考える。じゃがいも3対ドラジャ7くらいでもいけるかもしれない。

 でも、少なすぎてもおいしくないだろうし…。

 とにかく、かさ増しとしての利用価値は十分だと立証できたわね。

 

 あ…これってもしかしたら、いつもハラペコ厨房うろうろでおなじみ、成長期軍団の希望の光となるやもしれんぞ。


 ◇◇◇


 ふっくらさんがどこからかご婦人方を二人、連れて戻ってきた。

 え?試食させて欲しい?はいはいどうぞ~。


「「・・・!」」


 二人とも無言で食べておるぞ。さてはビビっておるな。

 ゴミだぞ、ゴミ。ふはははは。

 食べ終わったと思ったら、三人であーだこーだと話し出した。


「これは画期的じゃない?」

「…これを今まで捨ててたのよねぇ…」

「ベルちゃん、他にも何か作れるの?」


 うーん…結構汎用性があるからね、何品か作れそう。

 ご婦人が集まってるから…ここはいっちょ甘い物で攻めてみたい。

 このプレゼンが上手くいったら、もっと厨房を使わせてくれる機会が増えるかもしれないし。

 思ったより膨らむ感じがあったから…上手くいくかもしれない。


「…もし、上手くいったら、ジャムを少しだけ使っても良いかな」

「ワイルドグーズラズベリーのジャムならたくさんあるから少しなら使っても良いわ!」


 言質取った!作るぞ~!!

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