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グーチョキパって言うんだって…。

 学び始めた事ってめっちゃ語りたいでしょ?

 急に英単語を会話にまぜてきちゃう的な。

 そう、まだまだ魔道具作りを語り尽くしたい、アギーラです。

 

 設計図、作成の手順指示と共に必要な物は、魔道具への動作指示。

 その仕様は、驚くことなかれ…完全に某表計算ソフトでおなじみの関数だった。

『魔石が起動したら○○する』『ここが△△ならA点へ』とか簡単な式をどんどん刻むだけ。


 ちなみに同一式に重ね掛け、いわゆるネストがいくつできるかは、素地や習得レベル、技量で決まるみたい。

 シーナさんは現在、最大で38層まで可能なんだって。

 この国でも10人いるかいないかっていうレベルらしい。凄いや!


 難易度の高い大型の魔道具なんかも、関数がちょっと変わるだけだった。

 日々、VL〇〇KUPなんかを使ってるそこの君!

 この異世界に来たら、魔道具師の素質があるから調べてね!!

 

 でも残念な事に…これも素地や習得レベル、技量で使えない人が出てくるんだよね…。

 それでもある程度でもこなせる人は、大量生産の魔道具工場にお勤め出来るから、ウハウハらしいけどさ。


 独自言語での作成手順指示や動作指示の関数式を、最終的には自動で作動確認する。

 それで問題がなけば、設計図を含めて、そのすべてを魔道具設計図専用魔紙に魔力で刻んでいくんだ。この刻む作業には魔力を使うんだよ。

 でも魔力量は関係なくって、とにかく魔力の質、相性なんだって。

 

 あとは魔道具設計図専用魔紙に流れる微量な魔素が、歪まないように図や式を刻まなきゃだめだから、その技もやはり習得するのに苦労するんだって言ってた。


 池に石を投げると波紋ができるでしょ?

 技術がないのに刻もうとすると、あんな感じの波紋みたいな変な皺が浮かんできちゃうんだ。で、魔紙が使い物にならなくなる。

 石を投げても池に波紋が出ないようにさせる感じらしいけど…高度な魔道具になればなる程、これがなかなか難しいみたいなんだ。


『魔道具師』スキルがある人って言うのは、こういった事が先天的に上手く出来る素地がある人、それと上達速度が早い人なんかの事を指してるんだろうね。


 僕はまだ魔力覚醒がないから、とにかく今は製図とルールの猛勉強あるのみ。

 もしね、魔道具と僕の魔力の相性が悪くても、魔道具の設計図案職人って手もあるらしいんだ。

 シーラさんが、道具職人も良いし、その道を邪魔するつもりもないけれど、設計図案職人を目指すのも良いかもしれない、って言ってくれてさ。

 

 魔道具師になるには魔力の相性があるから、努力だけじゃいかんともしがたいけど、ってね。

 別に二つの職の職人になったって、かまわないんだからって。

 言語習得のチートには感謝しなくっちゃ。

 もちろんプラモと某表計算ソフトにも。


 ◇◇◇


 魔道具の設計図案職人は設計図案だけを作って、実際の魔道具設計図専用魔紙には魔道具師が図案を刻む…分業制みたいな感じ。

 まだ設計図案職人は少ないけど、これからどんどんニーズが増えるってシーラさんは思ってるみたい。

 魔道具師は少ないけど、魔道具の需要は天井知らずだから。


 お客さんのイメージを設計図案に出来るようになれば、それでも十分に生活出来るってシーラさんは思ってるらしい。

 ましてや、商品発明から設計図案までをセットで売る事が出来れば、ものによってはとてつもない利益が見込めるって。


 不思議なんだけど…魔道具設計図専用魔紙に刻んだ魔力の質は、魔道具全体の実際の組み立てにも影響するらしいんだ。

 実際の魔道具の組み立てや装飾なんかは、魔道具設計図専用魔紙を作った魔道具師本人が、一人ですべて作り上げていく方が、最終的に魔道具の出来が良くなるんだって。

 

 僕の洗濯板みたいな単純なもの…大量生産できるような単純な魔道具は、そういった影響もないみたいなんだけど。

 複雑な物であればあるほど出来が左右されるらしい。


 シーラさんは複雑で繊細な注文品を作れる魔道具師だからね。

 結局、組み立てや装飾まで、全部自分でやる事になる。木を彫り込んだり、金具を取り付けたり、塗装したり…模様を描いたりもしてるんだ。

 

 もちろん、魔石や自分では作れない金具部分や、木の切りだしなんかは、もちろん業者に頼むんだけど、最終的に組み立てるのはシーラさん。

 この仕組みは、未だよくわかってないみたいだけど…シーラさん曰く、魔力が混ざって変質するのを、複雑に作られてる魔道具は嫌うのかもしれないって。

 

 この世界の人たちは、魔力が少なくなってきてるって言われてるけど、全くゼロになったって訳じゃない。

 物に触れれば、微量な魔力痕が残るってことも十分考えられる気がする。

 不思議だけど…魔道具師からしたらすっごく大変だよ。分業にできるのは設計図案までなんだから。

 

 忙しすぎて犬人の手も借りたいってさ。雑用、頑張ります…。


 ◇◇◇


 壮大に話が逸れたけど、洗濯板に注文がたくさん入った話をしてたんだった。

 

 しばらく頑張ったんだけどシーラさんが「もしアタシがフルで手伝ったとしてもとても捌ききれないわ」って言いだして、昔から付き合いのある、道具、魔道具ともに大量生産を請け負う各工場に、生産をお願いすることになったんだ。

 

 ご家庭の懐具合もあるし、購買層が違うかなって思って、道具と魔道具とで2種類作ったんだけどね。

 魔道具の方はそんなに売れないだろうって思ってたんだ。

 

 でもふたを開けたら…両方とも買ってく人、続出。「働く女性の食いつきがすごいんですよ」って、言われちゃった。


 考えても見てよ、寒~い冬の夜、疲れて仕事から帰ってきたら大量の洗濯物。明日も明後日も仕事だ。今日中に洗濯を一度しておかないと…よし、洗濯機を回して…じゃないんだ、大量だから外の洗濯場で手洗い。

 うん、ぞっとする。…いやもう、洗濯機回す下りですでにぞっとしたけども。


 「一分でも早く洗濯が終わるなら…これ、両方ください」


 そう言って洗濯板を買ってくれた人がいたんだと、販売店の人に聞いたんだ。

 僕らの当初の予定を大幅に上回る注文数に、魔道具工場はとっても大変だったらしい。

 嬉しい悲鳴をあげながら工場長さんが話してくれた。


 単純な魔道具なら動かせるくらいの…安価な魔石があればいいのに。


 ◇◇◇


 丁度良い機会だからついでに…なんて言ってシーラさんから、『守秘匿魔法契約』…魔紙による魔法契約の結び方も教えてもらったんだ。

 これは『見聞きしたことを口外しません』って、魔法で結ぶ契約なんだよ。

 この魔紙も魔道具設計図専用魔紙と同じ原理の紙なんだって。

 

 あとはグーテンブルージュ権利保護舎への『グーテンブルージュ著作許諾発明申請書』の書き方とか。

 どちらも生産職の権利を守るためには絶対必要だからって。


 権利関係の保護を申請した旨と、あとは保持期間や権利のパーセンテージなんかを決めて提出するだけなんだけどね。

 自分で数字的な事だけ決めてしまえば、そんなに苦労しなくて申請できて、効率的で便利なシステムだなて思ったよ。

 

 でもさ、申請書っていうから、てっきり定型書式があるのかと思ったら…ないんだよ。

 こんなの重要部分は決まってるんだから、さっさと雛形作ればいいのに…って思ったから、今後の事も考えてサクっと作っちゃった。


 大量生産品になる場合、まず、魔法契約を交わして製品の打ち合わせをして、申請書が通ってから生産ラインに乗せるってのが一般的なんだって。

 付き合いの長い工場みたいだけど、契約は工場の方からきっちりお願いされるんだ。

『情報流出があってもうちの責任じゃありません』って、線引きできるからね。


 大量生産時のノウハウを叩き込まれ、事務的な事も本格的にみっちりと仕込まれる。

 そうは言っても、これも定型書式を作ればあとは同じようなもの。

 シーラさんに定型書式を見せたら「これはグーチョキパを取れる!…そしてまずはアタシにも一枚ください…」なんて言われて、またその申請をしたりね。

 僕も、なんやかんやで忙しい日々を送ってるんだ。


 そうそう、『グーテンブルージュ著作許諾発明申請書』の事、グーチョキパって言うんだって…。

 どう思う?これ…転移者が一枚噛んでると思う?

 

 まぁ、グーテンブルージュ権利保護舎…通称、グー舎ができたのは100年以上前らしいから、よほど長生きの種族の人でない限りは会えはしないだろうけど。

 思ったんだけどさぁ…僕は犬人でしょ?

 『異世界転移したら長生き種族のエルフの血が入ってた~!』なんて人もいるかもしれないって気がしてきたんだよ。


 あ、大事な話があったんだ。

 なんと僕は書類上ではなく、正式に魔道具師の見習いになりました!

 もし魔力の相性が悪くても、設計図案職人にはなれるからって。

 もちろん同時に道具職人としての道も模索しつつ、店舗従業員でもあり雑用係でもあるけれど。

 

 いつか…シーラさんの役に立つことが出来たら嬉しいな。

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