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ガイアとソウと瘴気の渦と貞操危機の妄想と②

 …イライラする。

 …はっ!雑魚なのに、思いっきり切りつけてしまった…。

 …いや…構うもんか。いくらでもやってやるさ。

 

 俺は雑魚相手に、イライラで増幅した渾身の力を込めて、一撃をくらわす。

 やがて小隊の交代連絡があり休憩に入った。


「なぁなぁ、これってやっぱり結界が弱くなってきてるからじゃないか、って噂があるけど…やっぱりガイアもそう思う?」


 綺麗な顔に人懐っこい笑みを浮かべ、無邪気にそう聞いてくるソウは、まるで飲み屋で話をするかのように、軽い口調で話しかけてくる。


 ユスティーナのギルドが他国から連絡を受けてから、二日後には国を発った。

 途中で瘴気祓いが終わる事も想定し、獣化疾走せずに数人のセレストへの派遣者と一緒に行動した為、この辺鄙な海沿いまで移動するのに十日。

 セレストの冒険者たちが、すでに瘴気と戦っていたところへの合流だ。


 このセレスト国への派遣が決まった時、少し期待していたが…ツイてたな。

 ソウと同じ第二小隊に振り分けられてホッとする。

 特に長期戦ともなれば、ソウの特殊な力とコミュニケーション能力は、貴重なものとなってくるからだ。

 

 どんな戦いでもそうだが、長期になればなるほど皆、疲弊していく。

 雰囲気も重苦しくなるし、少しのミスで仲間割れが起こったりするのが常だ。

 基本、ソロの冒険者は他人に気を遣う事が少ないし、個人主義な者も多い。


 今回だって、そういう奴らの集まりと言っても過言じゃない。高ランカーになると、常設パーティを組む奴は少なくなるからな。

 そんな奴らの懐に入り込むのが上手いソウは、この寄せ集めパーティー(第二小隊)のまとめ役を、自ずと買って出てくれている。

 

 ここにいる者は、Bランク以上、いわゆる高ランカーと呼ばれる者達だ。

 ルーキーと言われるランク無しから始まり、G<F<E<D<C<B<A<S<SSの基準で大陸全土共通のランクだ。

 まぁ、SSランカーはユスティーナでも数えるほどしかいないし、こういう招集には参加する義務がなくなるから、ここへは来てはいないのだが。


 ソウは20歳手前くらいか。それにも関わらず、すでにBランクの冒険者だ。まったく恐ろしい奴だよ。

 

 剣の腕前は誰もが認めるところだし、ソウの警戒が緩い時は『大丈夫』な時だという事を知っている。

 高ランクの者になればなるほど、ソウの固有スキル『察知』による、危機察知能力の精度の高さをすぐに見抜き、一目置くようになる。


 ソウの様子をうかがい知る事で、力の抜きどころを間違えずにいられるんだ。無駄な労力を減らすことで、疲労度も各段に違うからな。

 感謝こそすれ口調を咎めたり、態度を不謹慎だと罵る奴はいない。

 そういう見る目のない奴は、所詮生き残る事はできない世界だから。


 基本三つの小隊交代制で討伐に当たっているが、他の小隊との連携も、ソウのおかげでスムーズだ。

 俺たち第二小隊の後を任せる第三小隊は、既にギクシャクしきっているようだ。

 あんな状態で、親玉魔獣との戦いにあたってしまったら、かなり危険なんじゃないのか…どの程度の強さの親玉が出てくるのかは分からないが…ソウもかなり気にしているのがわかる。


 ずいぶんと年下だがその視野は広く、バディやパーティーを組むとわかるが、冷徹な策士の一面も持ち合わせている。

 そうかと思えば、さっきまでの参謀面はどうしたんだというくらい、『大丈夫』な時は、飄々とした態度で皆に声をかけ、あっという間に相手を懐柔してしまう。

 自分のような口下手には、逆立ちしても出来ない芸当だ。


 ソウの私生活を知っているわけではないが、パーティーを組む時はお互いに声を掛け合う仲だ。

 今や俺にとって、最も信頼の置ける冒険者仲間の一人になっている。

 この人たらしめ…ニヤリとしながら答えた。


「あぁ…間違いない。だっておかしいだろ?どこの国の瘴気も同時に、だぜ。結界の弱化に関しては、もうどこでも公然の秘密ってやつになってるしな」

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