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まさに隠れ家カフェ…違った、まさに看板のない鍛冶店。

「ステータスオープン!」

 

 …あぁそうさ、シーラさんが留守の時に大声で言ってやったさ。

 ぴくりとも反応がなかったあの時の僕の気持ちを想像してみてよ…。


 だって…結局魔力はまた引っ込んじゃったんだ。体内に爆発物抱えてる気分で落ち着かないよ。

 もし叫ぶくらいで魔力が覚醒するならって思って、僕…頑張ったのに!

 

 しばらく立ち直れない…しょんぼりな僕、アギーラは、シーラさんとナイフを買いに、町の南側にある鍛冶店へと向かっております。


 ◇◇◇


 ミネラリアの町は真ん中に大きな広場があるんだ。それをぐるっと囲むようにお店が立ち並びあって、市がたつ日はその広場中に露店がぎっしりと並ぶ。その日は僕もよく買出しに来てるよ。

 

 凄く大きな教会もある。シーラさんはあんまり信仰深い方じゃないみたいだけど、教会にはいつも沢山の人が来ているから、結構信仰が厚い人が多いんだと思う。

 僕も…信仰が深いも浅いもそもそも知らん…って事で、軽くスルーしてる…。


 その中央の広場から、東西南北にまっすく大通りが続くっていう、非常にシンプルな作りの町。中央の広場に面してたり、メインストリートの石畳が店前にある所なんかは、家賃がすごく高いらしい。


 薬師のグリンデルさんの薬局は、広場から北側にあたる。畦道になってすぐくらいのところ。裏手に薬草畑があるんだって。

 『緊急の患者さんが駆け込みやすく、且つ、一定の敷地面積を取れる場所』って、条件で探したらしいよ。町中に畑を作るのもなかなか大変だよね。


 僕の仕事の一つでもある買い出しは、中央の広場に面したお店で済むから、あまり大通りをあっちこっち見て歩いたことがなかった…だって、広いんだもん…歩くだけで疲れちゃうんだ…

 ちなみに、シーラさんのお店は町の東側にある。

 石畳の道が途切れて、町の東の門の検問所がバッチリ見えるような東端だ。石畳みから畦道になっちゃってるけど、大通りに面した店舗ではある。


 南側の目的地の鍛冶店は、南のメインストリートを抜けて、石畳から畦道に変わり、さらにしばらく歩いて南門が見えたあたりから、一本脇に入った路地にあった。


 シーラさんも良い空き店舗があれば、路地に入った店舗でも良いかなって思ってるらしい。

 東の森に工房があるから、東側から移動する気はないんだけど、今の家賃でもう少し作業場が広い店舗を狙ってるんだって。


 東西の大通りは西は王都への道へ、東は隣国への道へと繋がるから検問所が立派だけど、南の門は小さいし検問所も一人用の案内所って感じだった…〇くじ売り場みたい。

 近場での薬草採取や狩り、伐採なんかをする人、森の中に工房を持ってる人なんかしか通らないから、あんまり人員は必要ないらしい。


 鍛冶店に着いたけど…思った以上に間口が小さい。本当にここかなって思うくらい。

 シーラさんが言った通り看板がないお店だ、いやもう普通の民家だ。

 扉も閉まってるし、僕一人出来たら間違いなく通過してたと思う。

 まさに隠れ家カフェ…違った、まさに看板のない鍛冶店。


 扉をノックして一呼吸おいてからシーラさんが扉を開けた。

 …うん、わかる…こういう感じの店の扉って、急には開けちゃいけない気がするよね。


「おはようございまーす。シーラです。入りますよ~!」


 カウンター越しに奥に向かって叫ぶ。

 間口は狭かったけど奥はすごく広い。あぁ、こういう間取りの店舗をシーラさんも探してるんだな。

 奥からがっしりとした体躯の身長130cmほどの若い男性が出てきた。


「あ、シーラさん!おはようございます。お久しぶりですねぇ」

「そう言えば、しばらく顔を出してなかったわね。今日はラシッドにちょっとお願いがあって。そうそう、この子はアギーラって言います。うちで見習いをしてるの」

 

 僕の勝手なドワーフイメージとは随分違うんだけど…。

 さわやかで人懐っこい口調の優しい顔をした青年だ。

 ラシッドさんは僕を見てにっこり笑った。


「初めまして。僕はラシッドって言います。このお店で修行中の鍛冶師見習いです。宜しくね」

「こちらこそ。アギーラと申します。シーラさんにお世話になっている魔道具師見習い兼、店の従業員です。どうぞよろしくお願い致します」


 びっくりしたようにアギーラを見るラシッドに、シーラさんが笑いながら言った。


「ラシッド…この子は見た目は幼く見えるけど成人してるからね」

「わっ…ごめんなさい…バレてました?いや、ビックリしちゃって。そうなんだ…成人してるんだねぇ」

「ふふふ。アギーラ…全敗記録更新ね。ねぇ…ラシッドはまだナイフとかの既製品販売はしてるの?そろそろ独立するって聞いたけど…。実はアギーラにナイフを一本用意してやりたくって…ラシッドの既製品はものが良いから、もしまだあるんだったら譲ってくれないかなって思ってね」


 そんなにそんなに幼いかよ…僕の見た目って…。

 いじける僕をよそ目に二人はさっさと本題に入った。


「あぁ、かまいませんよ。シーラさんの頼みですしね。そうなんだよなぁ…独立するにもどこで店をかまえるかとか…色々ねぇ…。まだまだ先になりそうですよ。そうだ!今度、シーラさんの独立した時の話、聞かせて下さい。どうも僕は優柔不断みたいで…まだどこの町で店を出すかも絞り切れなくって…」

「まぁ、そうなの?じゃぁ今度ガイアが帰ったら、ご飯食べに来なさいよ。今、セレストに行ってるの。…って、言ってもアタシの話はあんまり参考にならない気がするけど。来たらガイアも喜ぶからさ」

「ガイアさんにも色々聞きたいなぁ。是非、お願いします。それで…ナイフだったね。どんな感じのが良いかな。アギーラ、こっちにいくつか用意があるから…ちょっと見てくれる?」

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