表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
225/225

【目指すはスローライフEND】 

 最近、嬉しいって意味で驚いた事と言えば、シーラさんとガイアさん、ライアン君の一家とソウさんが、本格的にここ、ヌクミーズ村に住みついちゃった事かな~。

 あ、どうも。ベルです。


 そうそう、グリンデルさんからも近々引っ越したいって相談を受けてるんだよね。

 グリンデルさんは、何やらユスティーナ国に居たい理由があったみたいなんだけど…。

 

 昔むかし、ユスティーナ国となにかしらの(いさか)いがあったらしいけどさ。それが、ここ最近のゴタゴタの最中に解決したみたい。


 いや、解決とは言ってなかったな。なんかね、自分の中でやっとケリが…ようやくけじめがついたんだとかなんとか…?

 よくわかんないけど、自分の中で何かしら思うところがあったらしいよ。


 グリンデルさんはエルフの血を引いてるから…田中正さんの手記にあったあの話、聞いてみたい気もするんだよね。

 ヌクミーズ村に引っ越してきてきたら、聞いてみよっかな。あぁ…ダメか、守秘匿魔法契約結んだんだった…。

 

 ミネラリアの薬局はどうするのかって?

 薬局は縮小しつつも、そのまま経営するんだってさ。もう少ししたらマルが一人立ちできるから、マルを店長さんにするつもりらしいの。


 そうしたら基本的にはマルに店を任せて、自分もここ、ヌクミーズ村で薬草作りをしたいって…。

 ここで作った薬草をミネラリアの薬局に卸して、相談役兼オーナーって感じになる予定なんだって。


 あとはねぇ、ミネラリアのバザーで顔見知りになった、アギーラの魔法付与の先生である鍛冶師のラシッドさん。と、何故か一緒にその師匠であるグスタフさんも、近くここに越してきたいって希望してるの。

 厳密に言うと、ヌクミーズ村というより、アギーラとソウさんが最近見つけた、近くの洞窟目当てらしいけど。


 それと何故かアギーラやシーラさんの知り合いだっていう職人さん達が、やたらと移住したいって言ってきてる。

 ここ、職人ビレッジか?

 

 昨日は昨日で、元ギルド職員で現在は背負い籠派じゃないガチの採取人だっていうジェイさんって人が来てね、夫婦で移住したいって…ここってそんなにいい所かなぁ…。

 そりゃ私は好きだけど。なんでこんなに大人気なんだろね…。


「たぶんだけど…祝福の手を持つ人達が魅了されている気がする」


 すっかりマッチョになって、日焼けしまくってるバズさんがそんな事を言ってくる。

 何故か数匹のミニミニマッチョ妖精軍団がバズさんにご執心で、背中にぴったり張り付いて離れないんだよ。これ…本人に伝えるべきかどうか迷ってるんだ。


 背中に張り紙されてるのに気付かない人に見えなくもないから、言ってあげたいけど、もうちょっとそのままにしておこうかとも思ってみたりして…。


 だって、もしかしたらバズさんをボスだと思ってるのかもしれないでしょ?邪魔しない方が良いのかなって…。

 って、いやいや待て待て。なにそれ…祝福の手…魅了…魅了?


「ここには…ほら、たくさんいるだろう?精霊様妖精様…。だからじゃないかな?」


「あー!」


 そうだよね、パケパ芋ノスケミンッチーチョの他に、ミニミニマッチョ妖精軍団が泉の上空を占拠してるし…アギーラもそう言えば妖精だった。


 さらにはここにエルフとドワーフも来ちゃう予定だよ。クロノスケの頭には精霊の祈り木もあるし…ここ、色んな意味で大丈夫かな?


 そう言えば、魔石生産人のリブロさんまでも、ヌクミーズ村に住みたいって言ってくる始末で…ここも人里離れてはいるけど、田舎って感じがしなくなってきた…嫌だ!あたしゃぁ、田舎でスローライフするんだ!!

 

 悲しいかな最近の懸念と言えば、村の面積不足なんだもん。絶対に畑とコーヒーとカカオの木の区画だけは死守よ、死守。


 私の今後の予定?

 野暮だねぇ…予定を入れないのが、スローライフってもんでしょうよ。

 

 とか言いながらも、実はさぁ…ガイアさんとソウさんがミネラリアのダンジョンをそろそろ攻略したいんだけどって、ギルドから相談されてるらしくて…。

 

 私も一緒にどうかって誘われてるのよ。

 ほら、私ったら魔獣の急所が見えるから、一緒に行かないかってさ。

 なんせミネラリアのダンジョンの地下十階にはミカンがあるらしいんだもん。温州ミカンみたいなやつだってアギーラが…ほら、心が動くでしょ?


 あ、ガイアさん!ガイアさんの話もしないと。

 ガイアさんったらね、とうとうSランク冒険者からSSランクに昇格したの。そんでもってギルドから褒賞金も出たからガッポガッポよ。


 ソウさんもSランクになって、ガッポガッポか特例としてギルドの招集に応じなくても良い権利のどっちかを進呈って言われてさ…悩むことなく、もちろん後者を取りました。そりゃそうだろね。


 あの瘴気の件…詳細は伏せられてるし、私の関与はごくごく一部の人しか知らないけど…ガイアさんとソウさん、二人の働きはもう大々的にギルドでは知られてるもん。

 だから二人共、ワンランクアーップ+α!って事になったらしいよ。


 ちなみに私の存在は秘匿されてるけど…おほほ、ガッポガッポ、頂きました~!

 こっちからしたら醤油のヒントだけでも十分にご褒美だけど…あと腐れないものは貰えるなら貰うタイプ。有難く頂戴しましたよ。


 醤油は結局のところ、ドラジャ豆とドラジャ豆麹、小麦、塩が主成分で、後は…なんと言っても温度管理が最大のポイントであり、最大の課題。って感じのところまで、研究が進んでるんだ。


 だからね、醤油研究小屋をアギーラに作って貰ってるところなの。どうせなら美味しい醤油を手に入れたいもん。まだまだ時間はあるし…必ず手に入れるからね。ふんがふんが。


 コーヒーもチョコも日々着々と研究が進んでるし…って、あれ?気を抜くとすぐに脱線して食べ物系の話になっちゃう。

 えーっと、私の今後の話だったっけ?


 あ、私の話の前に…ビーナスさんはあの例の禁断の魔法陣の件で大忙しらしくて、自宅訪問はもう少し待って欲しいって…ってバディバードで連絡がきたんだけどさ…この連絡、いると思う?バディバードって、お値段が超お高いってのに…。


 ちなみに私達の帰還(異世界転移)については…まったく時代の同じ所へ戻るのは無理、なんだってさ。

 別の世界か、別の時代か…そんな感じになるらしいよ。


 アギーラはきっぱり断ってたし、私はそもそも死んでるし…まぁ、こっちも了承済みって事で、話はサックリ終了。


 アギーラにはいつか、家族の話なんかも聞いてみたいけどね…未だ踏み込めてはいない。まだまだ人生は長いから、そんなに急いだって良い事ないって事よ…。


 私は、そうだなぁ…妖精女王様に会いに行けるかもしれないから、浮遊の訓練をけっこうがっつりしてるかな。

 

 ほら、左小指7色特典…ホログラム妖精女王様から、時がきたら遊びにいらっしゃいって、お招きを受けたじゃん?来るべき時に備えて、準備は万端にしておかなくっちゃって思ってさ。


 ついでにアギーラの話をしておくと、アギーラはちゃんと精霊や妖精…パトナやお芋ちゃん、イズミン、ツッチー、マッチョブラザーズ達の姿が見えるようになって、しかもお話まで出来るようになったんだから、大進歩だと思わない?

 

 妖精女王様の所にお呼ばれしても、一人だけ誰も見えずにロンリネス~…なーんて、寂しい思いをしなくて済むもんね。これで心置きなく、二人でお招きを受ける事ができる…


(ベル、大変大変!ちょっと…開けて!!)


 おっと、噂をすればなんとやら。半透明アギーラが小屋の外で叫んでるよ。そうそう、大事な事がもう一つあったわね。


 私特製の魔素水を飲みまくったせいか、半透明アギーラと私は、なんと普通に会話できるようになったのでーす!


 今までは、私はアギーラの声が聞こえるけど、アギーラは私の声がウヮンウヮン反響してよく聞こえなかったの。

 だから私はさ、文字ボードで指差し会話をしてたもんで、会話にタイムラグがあったんだけど…今ではクリアに聞こえるようになって。これがまた便利なのよ~。


「半透明アギーラさんや、私の優雅なリラックスタイムにぎゃぁぎゃぁと。なんだねチミは、騒々しい…」


 アギーラを小屋の中に迎え入れる。あぁ、私のまったりタイムが…。


(れ、冷黒鳥が出たんだ!)


「え!それって…冷蔵庫の材料の事!?」


(そうだよ!醤油研究に温度管理のできる装置が欲しいって言ってたでしょ?今、ガイアさんとソウさんが追ってる。ベルが来れば急所一撃だから…ほら、急いで!)


 外に出てみれば、ミニミニマッチョ妖精軍団が、空中で向かうべき方向を矢印となって示してくれている。

 最近じゃさ、どこで覚えたのかマッチョポーズで…空中でボディビルダー顔負けのキメポーズを披露してくるんだよ…

何故だ…?


(早くしてっ!)


 あー、はいはい、行きますよ。行きますってば…。

 おかしいなぁ。スローライフのスローって“のんびり”って意味も含まれてると思うんだけど。

 あれ?…そ、そうだよね??


<べ…ッ…、ベ…うぅ…?>


 ん?今度はずいぶんと下の方からなにやら音が…


<ベ…ルゥ…>


「え…クロノスケ!?クロノスケが喋ってるの?」


<ベ…ルゥ…、ヨン…デ…ぅ…>


 うんうん。クロノスケが私の名前を呼んでいる(ヨン…デ…ぅ…)という奇跡。

 

<ジョっおゥ…たま…、よン…でぅ…ノ>


 空を見上げては、しきりとクロノスケが訴えてくるけども…


「クロノスケ…あんた、いつのまに喋れるようになったの…?」


 確かに、確かに最近どんどん人味が増してる感じはあった…あったけれども!


<ベゥ…ベrゥ…ベ、ル…ベル>


 ねぇこれ…確実に喋って確実に短時間で上達してるよね。いやもう、普通にベル言うとるやん…。

 そしてその上達著しいクロノスケが曰く、女王様が呼んでるってしきりに言っておると…


<アじたぁ…のォ…アじたぁ。いぐ…いッシょ…?>


 あしたのあした。明日の明日?明後日って事だよね?


(ベル、何してるの?早く~っ!)


「クロノスケ、明日の明日って…明後日の事?」


<キャン。よン…でぅ…、ジョぅお…う…たま…>


「女王様が…私を呼んでる?」


<プスン>


「わかったよ、クロノスケ。先に醤油…冷蔵庫をゲットしてこよう。その後でゆっくりお話を聞かせてくれるかな?」


<キャン>


(ベ~~~ル~~~!!!!!ぐぅぐるぅぅ…)


 はいはいはいはい、今行きますってば!

 全くアギーラったら…唸ってやんの。


 なんだかこれってさぁ…私の思い描いてたスローな…スローライフと違う気がするんだけども…。

 スローライフって、もっとのんびり感があるやつだと思ってたんだよね。


 げっ。アギーラの背後から、しびれを切らしたらしいソウさんが、ばっさばっさと大きな翼を広げて急接近してきた。

 ソウさんもアギーラも…なによその仏頂面は…。

 ものの一分くらいでしょうが!二人共、せっかちなんだから。


 急いでパケパ芋ミンッチーチョをナップサックに、クロノスケを抱え上げて…ソウさんの背に飛び乗った。

 私の体はふわり大空へと、異世界の大空へと…高く高く舞い上がって――



 【目指すはスローライフEND】 

これにて終了です。

お読みいただき、本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ