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私の壮大な(!?)スローライフ計画の第一歩

 あまりにあっさりとご褒美をくれるなんて言うもんだから、状態の悪い魔獣蝙蝠(ツガイコウモリ)を下賜されたら困るわ~。とか、そんな状態だって鑑定して、奴らの悪だくみを看破したら、それはそれで面倒な事になりそうだしなぁ。なーんて、妄想しまくって一人悶々としてたんだけど、バルハルト辺境伯がしれっと話し合いに介入してくれちゃったお陰で、私の妄想も一発解決。


 御大(おんたい)自ら出張(でば)ってくれまして、状態の良い魔獣ちゃんをしっかり貰い受ける事ができましたー!

 辺境伯ったら、現状、お貴族様良い人ランキング圧倒的一位だよ。他に貴族の知り合いなんていないけどな…。


 他国の貴族ではあるけれど、その爵位の高さや、(バルハルト)TUEEEEE説は、ユスティーナ国の貴族間でも知られているらしく、長いものにはぐるっぐるに巻かれちゃう貴族の風潮が、ここで役に立ったっぽい…ありがたやありがたや。


 その辺境伯、ヌクミーズ村に飼育員と|ツガイコウモリの乗りバットマンまで派遣してくれるって大盤振る舞いで…賃金も全部持つって言ってくれたけど、さすがにそこまでは甘えたらいかんと思うからね、丁重にお断りしておきましたわ。


 私達が作る村だもん。自分で出来るだけやっていきたいからね。それに、こういう時の為にちゃーんとお金を貯めてるんだし。ヌクミーズ村の為になる事には、一切出し渋ったりしないつもりよ。


 なんせ村づくりって、私の壮大な(!?)スローライフ計画の第一歩って感じがするし、何と言っても響きがかっこいいじゃん!

 銭、どしどし使っちゃうもんね。


 ツガイコウモリ達のお世話係も一緒に派遣してもらう事になってるけど、ダットンさんとバズさんも名乗りを上げてくれたから…こういっちゃなんだけど、飼育体制も万全。


 これから新たに命を預かる事になるから、管理体制はしっかり万全にしておきたいなって考えてたんだけど、ダットンさんとバズさんになら、安心してお任せできるってもんよ。


 バズさんはお世話係だけじゃなく、なんとバットマンにも立候補。体を動かす仕事がずっとしてみたかったって、それはそれは楽しみにしてるんだ。


 ってな訳で褒賞の一件は、蓋を開ければバズさんが一番張り切って、一番ウキウキしていたという結末でございました。 

 こういうのってまったくもって悪くない。むしろ、すっごく良いよね!


 ◇◇◇


 褒賞やるから来いや。と、上から目線で言われたが為に、しぶしぶのしぶでやって参りましたここはユスティーナ王宮。からの~、さっさと退散!


 時系列的にはバルハルト辺境伯が、ご褒美…ツガイコウモリの交渉をしてくれたり、人員手配をしてくれたりしてるあたりでございます。


 アギーラとガイアさんが近くで待機してくれてたから、ヌクミーズ村にさっさと戻ろうと思ってたんだけど、ミネラリア在住の薬師、グリンデルさんが会いに来てくれる事になったり、魔石生産人のリブロさんとお話が必要な案件もあり…結局、タンデムから北上した森の中で、小屋を出してお泊りする事にしたんだ。


 王都からタンデムの町に入ってすぐに、リブロさんとは面会を済ませて…用件はね、リブロさんからは雑魔石のあれこれ報告と、私からはダットンさんとバズさんの推薦話を少しばかり。


 大丈夫大丈夫。ダットンさんとバズさんをユスティーナ国に…って話じゃないから。二人をジネヴラ国での雑魔石絡みの人材に如何でしょうか?って話。

 

 リブロさんがずーっと人材欲しい人材欲しいって泣いてたから、二人に手伝ってもらえないかって…以前から思ってたんだけど、やっとお話できたのよ。

 

 異世界中で雑魔石を使うアギーラが発明した魔道具、ザッツライトが大活躍してるし、今後を見越して、他国でも雑魔石の生産管理体制を整えようって話が出てて…その第一歩として、ジネヴラ国にいる二人を推薦したいなってね。 

 

 実はね…本人もすっかり忘れてたらしいけど、バズさんは塔に幽閉される前、魔石生産人みたいな事もしてたんだって。

 ちなみにダットンさんは魔石生産はした事なかったらしいけど、やってみたら普通~にサクサク出来るっていう…。

 

 私の周りってさぁ…ちょいとチートがすぎやしませんか?って話なんだけど、まぁ、そんなこんなで前々から二人の作った人工魔石を、リブロさんが買い取ってくれてるご縁もありまして、ちょうど良いかなって思ってたの。


 魔石の生産が出来る人は一握りだけど、これが出来たらこの世界じゃぁ、かなりのラッキーマンって感じなんだよ。

 少ない労働時間&労働力で実入りが良いって事も大きいけど、いつでもどこでも出来るのも魅力。地球で言うところの、リモートワークみたいな感じで働けるお仕事って、この世界にはほとんどないんだもん。


 バズさんは、無償でひたすら魔石生産をさせられてた時期があるらしくて…魔石生産人としての対価、受け取る金額に驚いてたけど、二人共、これで十分に生計が立てられるって知って、すっごくホッとしてた。


 あれ?これって何の話だっけ。そうそう、雑魔石の話だった。


 ヌクミーズ村にあるあの泉で試してみたら、かなり良い感じに雑魔石が仕上がったから、あの泉自体を雑魔石の生産拠点にしようかなって現在企画進行中。


 そうなったら二人共、ツガイコウモリ関連と魔石生産の仕事で、十二分に生計は立てられるし、貯蓄もできる。

 もちろん魔石生産するだけでも十分だけど…とにかく今は色んな事がしたくてたまらんらしいから、口出しはいたしませんよ!過労にならない程度で、好きな事が沢山出来る人生を楽しんで欲しいもん。


 リブロさんとの話が終わったら、わざわざタンデムまで会いに来てくれたグリンデルさんと待ち合わせ。合流したその足で、そのままタンデム近くの森の中に設置した小屋へご招待!なんせ話したい事がいっぱいあるんだから、一晩二晩は覚悟してもらわねば!!


 その前に…ちょっと聞いてよ!もうね、グリンデルさんったらほんとにズルいんだよ。薬草茶と飴ちゃんの件で、王宮に一緒に呼び出されてるはずだったのに…逃げたんだって。

 代わりにユスティーナ薬師会の会長さんであるトラヴァさんが来てたけど…自分だけズルいでしょ…とんだズルンデルさんだよ。


 まぁ、それでも王家が大っ嫌いだっていうズルンデルさんが、王都近くのタンデムまで、私達に会いに来てくれたんだから文句も少な目ですけどね。ずっと心配してくれてたから…私もまたこうやって元気な姿を見せる事が出来て嬉しいし。


 お店があるから無理かなって思ってたんだけど、グリンデルさんが経営してる薬局には、孤児院の卒業生である、私のお姉ちゃん的存在のマルが働いてる。


 そのマルが今やお店を任せられるくらいに、立派に成長してるんだって。だから、安心してこうやって遠出も出来る…そんな素敵報告を聞きながらも、パケパ芋ノスケミンッチーチョの話やら、クロノスケの葉っぱの話からのソウさんの話…とにかく私のお喋りだって止まらない。


 話す事が山ほどありすぎて…もう、ぜーんぶ話しちゃったんだから。もちろん、アギーラと私が異世界人なんですって話も含めてね。


 そしたらさ…グリンデルさんはあんまり驚かなかった。

 でも…その時ほんの一瞬、すっごく若くてべらぼうに美形なビジョンが、おばあちゃん姿のグリンデルさんに重なったの。


 こういうビジョンが見えてしまったのは初めて。でも、ホログラムな妖精女王様なんてものが見えちゃった事もあったりしたもんで、こんな事だってあろうよ…なーんて自然に受け入れちゃう私も私よね…もう、異世界仕様にどっぷり。

 

 それでも…なんだかこれ以上見ちゃいけないって思って、瞬きしたら、次の瞬間には消えちゃってた。

 なんだか見ちゃいけない、聞いちゃいけないって気がして…何も聞けなかったよ。


 でも、見た瞬間にわかったもん。

 グリンデルさんはエルフの血が入ってるって言ってたし…たぶんグリンデルさんの…エルフとしての真の姿を見たんだろうなって感じたの。


 それにしても、見た目云々を色々言うのは失礼だけどさぁ、エルフっておっそろしいほどの美形だったなー。

 ほんの一瞬しか見なかったのに、心が捕らわれちゃいそうになるくらいの美形よ。語彙力な!とか言われちゃいそうだけど…そうとしか言いようがない。

 美形ってある意味、恐いんだなぁ…良い勉強になったよ…うん…。


 でも…おっかないほどの美形ビジョンは、悲しそうな顔してた。気のせいかもしれないけど…


「あの、グリンデルさんが用意してくれた身元保証のギルドカード、本当にありがとうございました。使わずに済みましたけど、あれがあるって思うだけでどれだけ気が楽だったか…」


 おばあちゃんグリンデルさんの横顔を見ながら、ワントーン明るい声を出してお礼を言っちゃったりして。いやもう、いつものグリンデルさんだけど…心なしか元気がないような気がするからさぁ…


「そうかいそうかい。使わなくて済んだなら、何よりさね」


「そう言えば、グリンデルさんって本当はグリンデルイースさんって言うんですか?ギルドカードの記載を見ちゃったんだ…」


「あぁ、またそりゃ懐かしい名だよ。うちの里は…まぁ偉そうな…苗字って訳じゃぁないんだけど、一族固有の言葉が名前の後ろにつくのが慣例だったんだ。イースさんとこのグリンって感じでね」


「へぇぇ。本当は名前がグリンさんで…イース家のグリンさんかぁ」


「まぁ、もう良いじゃないか。昔の事さ…忘れとくれ」


「はぁーい」


 グリンさんかぁ…あれ?

 グリンって、最近どっかで聞いた事があったような…どこでだっけ…うーん、うーん…

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