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ほーらね、モテモテでしょ?

少しだけ、つがいを連想させるワード“唯一”が再登場します。

苦手な方はご注意ください。

「褒賞?」


「例の獣人族女性の為の薬草茶と飴に褒賞を出す…そう孤児院に通達がきたってさ」


 あんまり時間は経ってないはずなのに、私の中では今やもう懐かしのアイテムと化してしまっていた…お茶と飴ちゃん。


 最初は覆面発明者として頑張ってたんだけど、やっぱり世間に公表するとなると、そうも言ってられなくなっちゃったんだよね~。


 もちろん一般的には伏せられてる話だけど、一部の人にはしっかりと私の関与が認識されてるもん。今や知ってる人はがっつり知ってるって感じになってるからなぁ。

 

 知られちゃったならば仕方がない。とは言え、こういう時はネットがない世界ってありがたい。

 個人情報がバレるとしても、極めて狭い範囲だもん。世界中で画像検索されて顔バレする可能性はないし、アレコレ嫌な書き込みをされちゃうようなサイトもSNSも存在しない。


 唯一の可能性として、もしギルドが積極的に広めたりしたら、秒で拡散されそうだけど…


「もうさぁ…暫くはユスティーナに戻らなくても良いかなって思ってたのに」


「まぁ…あれだけの事を成し遂げちまったんだから、仕方がないだろう。孤児院もベルの居留守の言い訳をのらりくらりしてるらしいぜ。院長先生も大変だろうからな、一回だけ行ってこい」


「そうだよ。ピューっと行ってピューっと戻ってくれば良いじゃん」


「ガイアさんもソウさんも気楽に言うけど…私、一応ユスティーナからこっそり逃亡しちゃった訳アリ子供だし」


「両方とも販売されてて世界中に広まってんだから、今更ちょっかいかけてはこないんじゃない?」


「いや~、何考えてるかなんてわからないもん。それに、ちょっと面倒臭いっていうか…」


「「本音はそっちだな!」」


 ◇◇◇


 現在、ワタクシ達はどこにいるのかと申しますと、例の温か~い泉のある場所。逃亡中にイズミンと出会った…ほら、コーヒーとカカオ発見の地でございます。そう、バルハルト辺境伯から永久貸与していただいちゃったあの場所よ。


 治安の面で多少不安は拭えないけど、魔道具とパケパ芋ノスケミンッチーチョの警備体制に加え、辺境伯も目を光らせてくれてるらしいし…辺境伯ったら、私達にすっごい恩義を感じてくれちゃっててさ、色々と厚遇してくれるのよね。

 

 ここにはダットンさんとバズさんもいるから、生活の地盤が出来るまでは、ありがたく辺境伯の厚意に甘えておこう…。


 そう言えば…毎回ふっさふさなシッポをこれでもかと私に見せつけてくる辺境伯さんの右腕さんが、ここを何て呼べば良いのかって聞いてきてたんだった…。


 あわよくばここで細々と植物を育てて茶葉を売ったりして…憧れのスローライフを楽しみながら、ちゃっかり小遣い稼ぎもしつつ、ひっそりと生きていきたい…なんて野望もあるもんで、出荷する時にこの場所に名前がないと不便だなって私も思ってたのよね。


「ヌクミーズ村。まんま、どやぁ」


「ネーミングセンスには定評のある、ベルさんらしい名前でとっても良いと思います」


「アギーラ君、棒読みな敬語で嫌味はやめようか」

 

 という訳で、名前も決まったことだし…ここ、ヌクミーズ村で既にアギーラやダットンさん、バズさんとまったり生活を始めました~!


 ワタクシめが海をぐるぐるしてしまったせいで、あのブンカンの村にバルハルト辺境伯が来ちゃって…ダットンさんもバズさんもブンカンに居づらくなっちゃったからね。ぞろぞろと全員一緒にお引越しして参りましたよ。

 

 トントン拍子で進んだは良いけど、そうなれば家どうすんの問題が勃発中。

 

 みんなで協議の結果、まずは私の家…アギーラは新たなコンセプトで自分の小屋を作りたいからって、一連の逃亡中、ずっとお世話になってたアギーラの小屋は私が貰う事に。


 勝手にクッションやラグを増やしまくってたし、キッチン収納も自分好みに色々動かしちゃってたから、このまま使えるのはとっても有難い。


 ダットンさんとバズさんは一緒の家が良いって言うから、個別スペースをしっかり確保できるお家をさらに一棟。

 あとはガイアさん達が泊まれるようなゲストハウスも建てる予定だよ。


 いや、予定じゃない。何故ならば既に着工してるから。

 アギーラが私の知らぬ間に知り合いになっていたらしい、ジネヴラ国の職人仲間とやらが、ぞくぞくとやって来ては、ヌクミーズ村のインフラ整備をしつつ、もの凄いスピードで新工法の家を建てていくというね…もう、アギーラの実行力が空恐ろしいもんで、そっち関係はノータッチ(見て見ぬふり)っす…。


 優雅にソファに座ってお茶を飲みながら、ぼんやりと外の喧噪(トンテンカンテン)を見やる。

 そういやさぁ…私って一応未だにユスティーナ国からの逃亡者なのよ。あまりにまったり生活させて貰ってるからすぐに忘れちゃうけども。


 ‥‥‥。

 

 いやね、何が言いたいかって言うと、やっぱユスティーナ国に戻らなくたって良いんじゃないかな…って話。

 正直、あの国のどこから何から誰から逃げてるのかもよくわかんないのに、わざわざ舞い戻るって…そんなリスクを取る必要ある?って思っちゃって…


 「だーかーらー、いただけるブツだけ頂戴して、ささっと帰ってくれば良いじゃん!」


 って、ソウさんは言うけどさぁ…あ、そうそう。既にお気付きかも知れませんが、ソウさんは無事に成人男性に戻れましたよ。誰もしてくれないから自分に拍手。パチパチパチ~!


 みーんなすっかり忘れてるかもしれないけど、私的には少しだけ懸念しておりました、“唯一”問題もしれっとクリア。

 クリアと言うかこれは完全スルーだったの。元に戻っても、唯一だうんぬんだとか言われて追いまわされる事もなく、普通にスルー。うん、別に良いんだよ…うん。

 

 よ、良かったと思ってるってば!いや、少~しだけ複雑な気持ちだとか、本当に全くないから、マジで。いや、マジで。


 コホン…それはまぁ良いとして、元の姿に戻ったソウさん、あと…ダットンさんとバズさんに、私とアギーラのアレコレを全てお話ししちゃう事にしたの。


 ダットンさん達は腑に落ちた感のあるあの顔ったらなかったわ。相当、私たちが不思議な存在だったんだろう。驚きよりもしきりと肯いて納得ってな反応で…それで、こっちも何となく察するものがあるっていう…。


 ほら、ダットンさん達には言えない事が沢山あるでしょ?だから二人共さぁ…()()()()()()()()()しれないなって。

 もちろん確証はないけど。何となく、ね。


 でももしもさぁ、二人が異世界転移転生について、少しでも知ってる事があるのなら…他にも知ってる人がいるって事なんだよ。


 そしてその第三者が二人に守秘匿魔法契約を結ばせて、話せないようにしてる可能性が高い。だから…少なくとも、他に知ってる人がいるんじゃないかって…そんな邪推をしてみたり。


 別に知ったからってどうなる訳でもないけど…この世界からの異世界転移が、可能なのかどうかはわかるなら知っておきたいと思うんだ。


 私は日本で死んじゃったんだと思うから、戻る事は叶わない。でも、戻れるとしたら…そんなそぶりは一度も見せた事はないけれど、アギーラには郷愁の念とか…本当にないのかな?…とかさ。色々と考えないと言ったら噓になる訳よ。


 考えても答えは出ないってわかってるけど…ソウさんからの怒涛の異世界質問攻めにあっているアギーラに助け舟を出しつつ…今は私の胸の内に、この気持ちはおさめておこうと決める。


 そうそう、そのソウさんの話を少しばかりしようじゃないですか。

 ソウさんには恐らくは異世界の異物…すなわち私が、目の前に現れたせいで、ソウさんの本能がバグったんじゃないかって説明をして、私たちの“唯一”騒動の顛末って事で、お話ししてみたんだけどさ…


「おかしいと思ったんだよ~。今まで年上にしか興味がなかったから、俺」


 だってさー。

 でも、それを聞いて妙に納得しちゃったね。やっぱり私の実年齢に引っ張られた部分があったんじゃなかろうかって…いやもう、しつこいけど、マジで本当にどうでも良いんだからね…マジで。


 成人男性に戻ったソウさんは、完全獣化が自在に出来るようになっちゃって引っ張りだこ。なんたって、ちっちゃな先祖返りソウさんの時に使えてた魔法だかスキルだかは、全部そのまま使えるって事で、今や超引っ張りだこマンなの。立派なモテモテチート野郎ですわ。

 

 しかもチートはそこだけじゃない。ソウさんはね、獣化も変幻自在なのよ。

 今までの小さな姿にもなれるし、もんのすんごく大きな鳥の姿にもなれるハイパーチート。鳥というか…たぶん竜種じゃないかってさ。これはアギーラ談ね。


 そのアギーラ曰く、ソウさんは異世界ロマンの塊なんだそうですよ。「すげぇ!かっちょいい!!」とか叫んじゃって、毎日毎日飽きもせず、ピッタリ付きまとってるわ。

 

 ほーらね、モテモテでしょ?

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