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なんちゅうとんとん拍子ラッキー展開なんや…

 あの悪夢から一週間。

 もちろん“あの悪夢”ってのは、もちろん私の具合が悪いってのにペラペラ喋ってくるお貴族様との邂逅の事ね、もちろん。


 はぁぁ…やっと、やーっと体が普通に動くようになってきたの。口だけは達者だったんだけどさ、随分回復に時間がかかっちゃった。

 なんでも筋肉痛とか体力の使い過ぎって事だけじゃなかったんだって。

 

 辺境伯が手配してくれた薬師さんによると、魔力回路?とやらの使い過ぎによる筋肉痛みたいな…魔力痛?って感じの症状も出ちゃってて、そのせいでなかなか起き上がれなかったらしいんだわ。


 今はね、起き上がれるようになったもんで、綺麗な海で取れた海の幸を、鉄板で焼いて食べて収納してを繰り返す日々。たんまりと綺麗な海の幸の在庫がある幸せを噛み締めておりますよ。ぐふふ。


 醤油ってのは今のところまったくもって無理ゲーだから…早くウスターソースもどきを作りたい。タコパタコパ異世界タコパ~!

 ずーっと言ってたら、アギーラがタコ焼き機の鋳型を作ってくれたんだもーん。まじで一刻も早くソースを作らねば!


 あらあら、ちょ~っと気を抜くと食べ物の話ばっかになっちゃう。

 そう言えばさ、ガイアさんと話してたらね、ちょっといい話を小耳に挟んだの。


 この世界って、国同士は仲良くしましょうね~っていう神様との約束が大前提にあるからさ、国同士の争いはないって話は…知ってる?


 もちろん、色々な駆け引きや小競り合い程度はあるのかもしれないけど…まぁ、基本的には国家間の戦争はないってスタンス。


 だからね、ここ最近は海側の防衛話ばっかりが多くなっちゃって、すっかり忘れられている感はあったらしいけど…バルハルト辺境伯の領地って、国の外周部分全部なんだって。

 ドーナツ型の領地って言ったらわかるかなぁ。


 要するに、山側、ユスティーナ国側の山中もバルハルト辺境伯の領地だったって訳なのよ~!


 瘴気が大量発生するようになってから、辺境伯自身も海サイドに常駐するようになっちゃってて…山側はここ数年、辺境伯の右腕さんって人に任せっきりだったんだって。


 あの泉のある場所、もしかしたらバルハルト辺境伯の領地だったりするのかな。

 もしそうだったらさ…


 ◇◇◇


「ふぅむ…ベルは山中で暮らしてみたいと…?」


「はい、できれば。ダットンさん達も…当初はブンカンで平穏に暮らしたいって希望があったのですが、ブンカンの村の人が、私達が今回の事に…なにか関係してるって勘づいてしまっている事もあって。ダットンさん達があそこで平穏に暮らせるとは思えないんです。だからみんなで一緒に…」


「ふむ、話はわかった。山側の保全を任せている者に話しておこう」


 本当はユスティーナ国に近い地にはいないほうが良いのかな~って、私だって思っちゃいるんだよ?

 でもね、峠越えの道なりにある場所って訳じゃないし、そうそうユスティーナ国も無謀な事はしないんじゃないかって…。


 まぁ、バズさんは自分の事は自分で守るとか言って…剣術を習いたいとか物騒な事も言ってるし、パケパ芋ノスケミンッチーチョもいるから、なんとかなるかな~って…


「だが、そんな辺鄙なところに住みたいとは、ベルは物好きなのだなぁ。もっと都会の町に、大きな屋敷を用意しても良いのだぞ?」


「いえ、すごく気に入ってしまって…」


 すごくどころか、すっごくすっごくすっごく気に入ってるよ。

 どこがって…もちろんコーヒーとカカオの自生地ってところに決まってるじゃん!


 綺麗な海の幸を満喫できた今、今後の目標はまったり生活しながらまったりちょびっと働いて、まったりチョコを齧ってまったりコーヒーを飲む事なんだもん。


 異世界でスローライフエンドを掲げたからには、深く静かにスローライフ実現に向けて邁進するしかないでしょ?

 スローライフスローライフスローライフ…絶対に途中で挫折なんてしない…


 ◇◇◇


「本当に…このような場所で宜しいのですか?」


 バルハルト辺境伯の右腕さん、ふっさふさなシッポを見せびらかしながら、私に何度も聞いてくる。

 こんな場所を欲しがるなんてどうかしてるぜ…って顔に書いてあるけど、ステキな毛並みに免じて許してやろう。

 

「はい。でも、本当に良いんですか?私はすっごく嬉しいですけど…」


「バルハルト様からはこちらを領主からの永久貸与という形でお譲りするようにと言われております。まぁ、この世界のあらゆる場所は神のもの、精霊のもの、なので…所詮は我々のものではないのですが…」


「それはもちろんわかっています。でも…永久貸与なんて貴族間でもなかなかおこなわれないと聞いていたので驚きました」


「ベル様の成された事、主から伺っておりますよ。もっと世界中へ褒美を求められても宜しいくらいかと」


「ここで生活させてもらえるだけでありがたいです。あ、実はですね…ここで植物を植えて育てたいと思っているので、結構な広さが必要になってくるのですが…ええと…どの程度、土地を使用して良いのか…そういうお話もしてもかまいませんか?茶葉を作ったりもしたいので、木を含めた植物を育てる予定でして…」


「えぇえぇ、伺っておりますよ。土地に関しては…そうですねぇ…目測で結構なのでお教えいただけますか。例えば…「ここから、あの岩のあたりまで」などと仰っていただければ、そのように管理帳へ明記いたしますから」


「あ、けっこうアバウトなんですね」


「そもそもここらの土地をどうにかしようなんていう変わり者はおりませんから。自由にやらせてやれと…」


「私としてはとってもありがたいですけれど…」


「あとは、そうですね…先ほどもお話しましたが、山崩れを起こすリスクがある様な場所の開拓を希望されるのであれば、事前に相談して頂きたいという事くらいですか…」


「うーん、今のところはないですかねぇ…」


「かしこまりました。それにしても…ここいらは手つかずなものですから、開拓も大変でしょうなぁ」


「時間はいっぱいあるので、ゆっくりやっていこうと思います」


「そうですか。いや、ベル様はまだお若いですから時間がたくさんおありですしね。でももし、手が足りないようでしたら、いつでもお申し付けください。くれぐれもとベル様が困ることのないようにと、主より申しつけられておりますので」


 色々あったし体もめっちゃ痛かったけどさ、その甲斐があった!なんちゅうとんとん拍子ラッキー展開なんや…


 ◇◇◇


 こんな山中に住もうなんて、盗賊とかが心配じゃないのかって?

 私達がマッソの町に着いた時にも賊の事件があったじゃないかって??


 そこはまぁあれよ…峠越えの道から結構離れてるって事もあって、なかなか人が入り込んでくる余地がないからさ。  それにアギーラから色々を除けちゃう的な魔道具を大量に貰っちゃったし。


 あとはさ、ミニミニマッチョ妖精軍団が何故か異様に張り切って、めっちゃパトロールしてるからね。結局のところ魔獣どころか獣も入って来られないってな現状がございまして。


 賊除けの試作品やら広範囲ステルス装置やらも、日に日に増えてる訳で…さらには何かあったらツッチーが巨大な落とし穴を一瞬にして掘るだとか、そこにお芋ちゃんが火を放つだとか、挙句にみんなで埋めて証拠隠滅とか…とんでもない事まで言い出してるから…まぁ…大丈夫かなって。


 それにしてもなんだろう、この要塞感…私の望んでるスローライフととんでもなく相反してる気がしないでもない…

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