ユスティーナ王宮 地下室①
「…もう時間がない事も確かでしょう」
「し…しかし、本当にタブーを冒してまで禁術を施す必要があるのでしょうか?」
「然らば、お主には代案でもあるのか?この場で申してみよ」
「ですが…150年程前にも一度失敗しているとの文献も残っておりますし…」
「聖女様ですか…結局その…150年前は顕現されなかったと…」
「…150年前は農作物の不況と感染症の流行で、聖女様は必要ないと神はお思いになったのでしょう。今回のこれは…もう神の御業にすがるしか…」
「だが…神の御業と仰るならば…精霊の…いや、神との約束を破る事、禁術の魔法陣を使う事…二つの大罪を犯してまでというのはどうにも…」
「何を…今更違うとは言わさんぞ?大陸結界がどんどん弱まって、もう抑えが効かなくなってる事くらいわかるであろうが」
「それはそうですが…」
「はっ、随分と弱気ですね。そもそも神との約束だの精霊がどうしただの、子供の読み本じゃあるまいし。私はあんなものは端から信じてはいませんよ?…まさか、皆さんはあんな子供だましを本当に信じておられると?」
「いや…あの…」
「エルフが精霊の魂を持つから何だというんです。たかがエルフ数匹でこの世界が救われるかもしれない可能性があるなら、喜んで犠牲になるべきでは?」
「まったくその通り。尊い犠牲にむしろ奴らも喜ぶべきではないのか。ハハッ」
「「「……(なんと恐ろしい)っっ!」」」
「ゴホン…息子よ、お前にこの一連、全て任せてみようと思うがどうだ。次期国王としての一歩、不足はなかろう?」
「……父上っっ!!!なんとありがたきお言葉。ユスティーナ国の未来の為、必ずや成し遂げてみせましょう」
「うむ、しかと任せた。皆の者、他言無用につき守秘匿魔法契約を締結。主を余とし即時執行。この話、外部に漏らすこと厳重に禁ず」
「「「「「はっ」」」」」