表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
197/225

ツッチーリバーーース!

 コーヒーの実ってさ…これ、ここからどうやったら、いわゆる飲み物のコーヒーになるんすかねぇ。

 ゲットしたコーヒーの実。この量で、一体どのくらいのコーヒー豆が取れるのかも、全くわからん…。


 是非とも実の中身を見てみたいんだけど、ここでやり始めちゃうと私の性格上、止まらなくなること請け合いだから、お預け中なんだ。限りある資源だからね、ここは慎重にいかないといかんのよ。


 コーヒー…めっちゃ飲んでた割に、豆以前のアレコレは全くわからんという現実に、只今絶賛驚愕中でございます。

 

 いやさ、豆の状態まできたならば、なんとなーくわかる気はしてるんだけど。…炒るんでしょ?そうだよね??

 でもさぁ、この世界でコーヒーって言っても、私が知ってるコーヒーと同じかどうかも疑問な訳で…。

 

 だって、私が想像してる場所より随分涼しい環境で育ってたんだよ?

 いや待て…もしかしたら地球でも、案外涼しい所でコーヒーが育ってた可能性も…。


 私の知識ったらさ、地球で言ったら地域的には赤道付近とか…そんなあやふやな情報が、ぼんやりとだけ。

 しかも赤道付近ってどんなとこさって言われちゃうと、そんなん知らんがなっていう、ペラッペラな薄い情報オンリー。


 異世界だし、地球のものと比べたらダメなのかもしれないけどさぁ、名前が同じ植物だと、植生も似てるんじゃないかって、ついつい思っちゃうのよね~。


 でも、この世界では地脈うんぬんが、植物の育成状況に関係してる場合もあるだろうからなぁ。


 鑑定で“NONAME”って出なかった時点で、この世界には認識されてる植物なのは確かなんだけど…詳細情報はほとんど出なかったんだよ。

 恐らく私の鑑定レベルが低いからなんだろうけど…もうね、わからん事尽くしっすわ。


 いや待てよ…コーヒーってさ、元々は薬カテゴリーじゃなかったっけ?

 コーヒー誕生秘話…ペットボトルのパッケージに、確かそんな豆知識が書いてあった気が…。

 ま、読んだ気はするけど、全く内容は覚えていないがな。フハハハハ。


 あれ?あれは…コーラだったかな。コーヒーの話ですらなかったかもしれん…。

 薬かぁ…そう言えばさ、カカオも大昔は薬扱いじゃなかったっけ?


 ‥‥‥。


 えーっと、来世があったなら、あらゆる製品のパッケージ裏に書いてある、歴史やら小話やらのミニ雑学を、一字一句見逃さない人間になりたいわね。びっくりするほど、何一つ覚えてないのが逆に潔くて嫌いじゃないけど。


 でもやっぱ、両方とも薬だったという歴史があった気がするんだけどなぁ。グリンデルさんに聞いたら、何か知ってるかもしれないよ。

 うん、暫くはこのままマイ収納に保管しておこう。


 今はとにかく実よりさ、このコーヒーの木とカカオの木を枯らさないように、しっかり注力したほうが良いよね。


 でも、この木もなぁ…これ、どうしたらいいんだろう。

 普通に日光浴と水だけで良いのかなぁ。

 あーぁ、植物を育てるのってホント難しい。脳内会議が止まらんぜよ…


<お呼びでしょうか?>


 一人コーヒーサミットを繰り広げていたら、クロノスケの頭の上でぴょんぴょんと跳ねて、激しく自己主張している土の妖精さんと目が合った。


「え、私?呼んでないよ~」


<いいえ、お呼びですね!おいらの力を必要としているのですね!!>


「いや、本当に呼んでないんだけど…あ、そっか、土の妖精さんかぁ…」


<そうなのですそうなのです。ささ、おいらに悩みを打ち明けると良いのです!>


 ◇◇◇


<この()達を育てていきたいのですね>


「枯れてはいないから、私的には一応セーフって事にしてるんだけど…どうかなぁ?」


<ふむ…悪くはないのです。クロノスケ殿の木と同じく…魔素がとても上手く巡っている状態なのです。イズミン殿も目をかけているようなので、水分調整もとても良いのですが…>


「…何かが足りてない?」


<そうなのですそうなのです。でも、このままでも暫くは枯れはしないのです>


「そうなの?良かった~!どこか落ち着ける場所で育ててみたいのよ。でも、それまでこの移動生活に耐えられるか心配で…いや、その先ももちろん不安なんだけど…」


<それならば!おいらに、この子達もお世話をさせて欲しいのです。土から必要な栄養を取ってくるのです>


「えー、それは悪いよ~。ツッチーはクロノスケ担当だしさぁ」


<ツッチー…?>


 あ、まずい!…光が…黄色い光が小指に…ぎゃーーー!


 ◇◇◇


「ごめん、ごめん、本当にごめんなさい。と、取り消しとか…は、出来ないってケサラとパサラが言ってたから…ツッチーリバーーース!」


 ――しーん


 うん、ちょっと意味が違ったかもしれん。しかもこれじゃなんだか壮絶な飲み会後(吐いちゃってる)っぽいし…ええとええと…


「時よ、戻れ~!!」


 ――しーん


 おおぅ…叫んだ後の見事なる静寂にちょっと赤面してまうやないか…。


<良いのです>


「良くないよ。勝手にこんな事、絶対に良くない。ほらこれ…この小指にさぁ…。うわぁぁぁぁん、ごめーん…」


<本当に良いのです。そもそも…嫌だと思ったら、名前が付く事はないのです>


「ううう…ごめんなさい。ついうっかり…ん…んん?…名前が付く事はないって…どういう事??」


<誰でも彼でも呼ばれたならば、こうなるという訳ではないのです。もし嫌だったら拒否すれば良いだけなのです>


「そ、そうなの?みんなの事、勝手に呼んで、勝手にこうなっちゃってたから、つい…私が一方的になんかしてるのかと思ってた…」


<違うのです。これは…相思相愛の証でもあるのです!>


 なんかようわからんけど…よ、良かった…



 って、思う事にしよう…うん…


 ◇◇◇


「海だ海だーーー!」


「異世海に来たぞー!」


 ‥‥‥。


「って…あれ?」


「なに…これ…」


 はーい、ここで質問です!

 あなたの知ってる海は何色ですか?


 こちらの海、アギーラ曰くの異世海は…。


 どどめ色っちゅうかなんちゅうか、紫中心のマーブル模様。例えるなら、ぶつけた時に体にできる痣の色。もうさ、完全なる毒沼でしょうよ、これは。

 

「嘘だぁぁぁ!せっかく遠路はるばる見に来た異世海がぁぁぁぁぁ、こんな訳あるもんかー!!」


「なんでこんなに禍々しいねん!なんやねん、なんやねんこれはっ!!」


「お嬢ちゃんたち、海は初めてかい?」


 海を見てギャースギャースと大絶叫する私達。

 とんでもなく凶悪な顔つきで吠えまくる私達に、見知らぬおじいさんが勇敢にも声をかけてきた。


 ここは異世海を一望できる村、ブンカン。ジネヴラ国、バルハルト辺境伯が治める領地にある小さな村。ガイアさん達が日々戦ってる、例の瘴気がある場所に一番近い村なんだ。


 小さな村だからね、町みたいにやれ身分証をみせろだのなんだのって、誰も言わないのをいい事に、ワタクシも堂々と入村してしまいましたよ。

 村人曰く、悪い人はこんな辺鄙なところまで来ないとかなんとか。

 

 だからかな、海を見て何やら叫ぶ、ただただ危ない人っぽい私達を見ても、呑気に話しかけてくれる第一村人なおじいさんから、色々と話を聞くことが出来たんだけど…


「うん、初めてみたの。でも…色がね…こんな不気味な色だとは思わなかったぁぁぁ」


「そうだよなぁ。昔はそりゃあ美しかったんだぞ」


「昔はどんな感じだったの?」


「そりゃ青い海っつぅくらいだから。水は透明で…それが徐々に色がな、こんなになっちまった…」


「魚は?海の幸は獲れないの?」


「いんや。普通に獲れるし、普通に食える。わしは漁師やっとるぞ」


「この海で取れたお魚が…食べられるの?い、今も?」


「わはは。みんな、毎日食っとるわい」


「そ、そうなんだ…」


 禍々マーブル毒沼産海の幸、あなたは食べる事ができますか?


 私はもちろん…


 ◇◇◇


「う、うんま~い!」


「美味しい!こっちの魚も、めっちゃうまい~!!」


「こっちのイカ焼き食べた?最高~!」


「醤油くれ!誰か醤油を作ってくれ!!」


「塩バター様に文句言うな!」


 毒沼の件は一切無視して食べてみた結果、海の幸はめっちゃ!美味しかったー!!


 大丈夫よ、ちゃんと鑑定もしたし。

 異世海はこういうもんだと思えば気にならないもん。


 ‥‥‥。


 嘘です。

 めっちゃ気になるっての。なるに決まってるでしょ!


 それにしてもおかしいなぁ。海から水が流れ込んでるはずの川は、どこも普通の色だったのに。

 それにさ、自然な茶色っぽさは多少あるけど白い海塩。それがこの毒沼から出来てんのって…不思議じゃない?

 

 第一村人のおじいさんは、海の色は徐々に変わっていったって、()()にその色は濁ってきてるんだって言ってたな。


 徐々に。

 日に日に。


 って事はさぁ…これからどんどん禍々マーブル毒沼色が酷くなって、そのうち川の水も海塩も、さらにはこの世界全てが毒沼色にのみ込まれて…。

 

 なーんてね。

 あはは、あはは…はは…は…

誤字報告、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ