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逃っげろーーー!

本日、二投稿目です。宜しくお願いします!

 みんなもあれよ、異世界行ったらわかるわよ。

 氷がどうとかこうとかって結構後回し案件だから、マジで。


 言い訳じゃないけど、この異世界の夏は、日本の夏より全然過ごしやすいの。 最高気温だって体感的には35度いかないくらいだし、しかもそんな日はすっごく少ない。

 どっちかというとカラっとしてるのよね~。朝晩は肌寒かったりするくらいだしさ。

 

 だから氷の事は…ほらさ…後回しになるっていうかね…言い訳じゃないけど。

 それより色々と山ほどあるんだから。何がって…色々が色々あんの!


 氷がもっと以前にゲットできただろう現実を、未だ受け止められていないワタクシ、みっともなく言い訳をつぶやくの図ではございますが、ブツブツ言いながらも、無事に逃亡二日目も終わりを迎える事ができそうです。


「これがエリーゼ湖かぁ。絶景絶景~!」


 はいっ、エリーゼ湖にご到着!

 一緒に行動していた半透明アギーラ君、ぶんぶんと陽気に手を振りながらミネラリアへと戻って行った。

 本物アギーラはミネラリアでしっかり就寝して、朝、またここに半透明アギーラとなって来てくれる手筈になっとりますよ。なんて良い子なんだ…。


 明日からはここからロードスター川っていう、これまた大きな川に沿って北上するんだって。どんどん北上して峠を越えた先の先が北の国、私が目指してる場所、ジネヴラだね。


<今日はここで泊るの?>


「うん。ちょっと早く着いたけど、疲れも出てくると思うから今日は早めに休んで英気を養ったら良いってさ」


<もうベルったら~。まだ、二日目じゃん!>


「私、子供だもーん。厳しい行程は無理無理。ゆっくり推奨なの」


【小屋の~】

【設置~!】


「はいはい。…ここらへんでどうかな?」


 小屋の設置を終えてカチカチやって…よしっと。


「そう言えば湖で魚…取れたりするのかなぁ?」


<ベルったらまた魚の事?>


「いやさ…魚ってまったく食べてないから、食べてみたいなぁなんて…」


<食いしん坊~>


「パトナだって食いしん坊のくせに。あーぁ、村でもあれば、こっそり魚が手に入れられるかもしれないんだけどなぁ。釣り具もないし、自分で獲るのは難しいよね…」


 アギーラに釣り具、作っておいてもらえば良かった…。

 素手でいけるかな?いけるわけないわ!一人のりつっこみタイムを満喫しつつ、タンクに水を貯める作業を黙々とこなす私。事前練習と休憩での設置で、すでに設置慣れしてきた感があるのが頼もしい限り。


「みんな、遊んでおいで~」


 パケパ芋たちを散策へと送り出した。

 一日中、ほぼほぼナップサックの中だったもんね。ナップサックの中にいるのは苦にならないって言ってるけど、さすがに一日中は可哀想すぎる。

 それにこんなきれいな場所、遊びたいに決まってるよ!


 すっごい広ーいエリーゼ湖から、南北にロードスター川っていう川が流れてるんだけど、そっちに行けば南の国、インデガルダ。逆にロードスター川を北上すれば、私たちが向かおうとしているジネヴラ。

 南のインデガルダかぁ、いつか行ってみたいなぁ。


 だってさ、この異世界は5つしか国がないわけで、これからジネヴラに行けてしまえば、もう40%異世界制覇したみたいなもんだからね…気持ち的に。

 2か国目って思うと少ないって思うけど、40%って思うと全世界制覇も夢じゃないって気になってくるから不思議。


 私もちょっとだけお散歩して良い事にしよっかな。

 ソウさんはお疲れみたいでうたた寝しちゃってるから、私も遠くには行かないよ。怖いもん。


 湖に入って遊ぼうかと思ったけど、異世界の湖なんて何がいるかわかったもんじゃない。きょ、今日は勘弁しておいてやろう…。


 川沿いを散策してみようかな。それなら迷子になる事もないだろうし。

 行程とは逆、南側をちょいと散策してから戻るプランで決定する。


 あぁ…久しく魚、食べてない。すっごく食べたい。ジネヴラに行ったら海のお魚が食べられるかなぁ。


 ミネラリアにも川はあるわけで、魚もいるにはいるのよ。獲れば良いじゃん!って気付いた時には、ドラジャの件やらなんやら目立つ行動をとりまくった後だったからさ、これ以上色々やったらまずいよね。って思って魚獲りは自重してたんだ。


 急に子供が魚獲って捌いて食べようとしてたらヤバイでしょ?ヤバイ事は色々やってるから、まぁあれだけど…さすがに魚食べた事ない子供が魚捌いてたらちょっとビビると思うの。


 こっそり焼いて食べれば良いかとも思ったんだけど、森での一人火遊びは厳禁。いや、そもそも火気厳禁。

 私、手から水とか出るタイプの人間じゃなかったもんだから、消火活動もできないだろうし…生活魔法が使えない事をずっと僻んでる訳じゃないからね。違うもん…。


 そう言えばさ、川魚がまずいのかなんなのか、ミネラリアで売ってるのも見た事ないんだよね。川があるのに不思議だと思わない?

 だから当然、孤児院の食卓に魚があがる事もないからさぁ、私だって魚を知らない子供な設定だった訳なのよ。


 肉系の方が流通経路も価格も安定してるからなんだろうね。でも、アギーラがミネラリアでも何度か乾燥した魚を見かけた事があるって言ってたから驚いちゃってさ。

 見かけたら買っておいてって頼んでたんだけど、それ以来、アギーラも見かけてないのか忘れてるのか…結局手に入れる事はできなかったのよ~。


 魚魚魚…一度考え出すと頭の中が魚でいっぱいになってきた。今は湖を愛でて忘れよう。きっとジネヴラに行ったら食べられるはずだからね。


 エリーゼ湖も大きいけど、この川、ロードスター川もすっごく大きいの。そしてすっごく綺麗。

 この世界、湖にも川にもゴミ一つ落ちてないし、水も澄んでて本当に綺麗なんだ。


 日本じゃさ、私が行けるような水辺って大抵はプラゴミが大量に落ちてたのよね。こんな綺麗な場所を…異世界を散歩してるなんて、なんだか信じられないわ。あ、嘘つきました。ただの散歩じゃなくて逃亡中の散歩でした。くすん。


 そろそろ戻ろうかな、なんて思っていたら、少し離れた川沿いに何かを発見したであります!

 ゴミがないとか褒めた瞬間にゴミ発見するタイプの人間はだぁれ?それは私。残念。

 でも黒い物体が見えるんだもん。ゴミ、だよね…。


 …気になる。動かない…動物の死骸とかだったら見たくないけど、やっぱり気になるからもう少しだけ近づいてみよう…。


 ――ジローーー


 あああああれは…


 ワニ!?


 湖近辺には食べられるワニがいるって話をアギーラから聞いた事がある。すっごく美味しいんだって。

 きっとそれだわ!鑑定先生、お願いしまーす!!

 生き物を鑑定をするのは気が引けるけど、これは食料かもしれないから別。調子のいい自分ルール適用案件なのでっす。


 ――ポワワン


 ***

【鑑定】

 レイクロコダイルーズ:エリーゼ湖やその近郊に生息するワニ。すべての動きが非常に緩慢/口を開かないように紐で縛れば一切動けなくなる/眼球や尻尾の先などが薬の…(以下省略)

 料理:白身の肉っぽい味だけど、油がすっごいのってて美味なのよ~/焼くも良し煮ても良し/どの時期もコッテリした味わい

 裁縫:皮は防具などに使われる/財布がお勧め

 ***


 ‥‥‥。


 白身の肉だってーーー!


 オイシソウダネェェ。


 さっきからずっと動かないし…口を紐かなんかで縛ってみたらいけるかも。

 …ちょっとくらい試してみても良いに違いない。


 アギーラが逃亡グッズの一つで縄を大量にくれてた気がしたんだけど…ごそごそとマイ収納から縄を取り出してみる。これでいけるかな?グルグル巻きにしたらいけるかも。ダメならダッシュで逃げよう。

 

 縄の先を輪っかにして口に引っかける作戦…って思ったけど、あれ…ホントに全く動かないわ。

 普通に近づいて普通にグルグルすればいけそうな気がしないでもないぞ。


 あれれ…全然動かないけど…これ本当に生きてるの?


 ――ジローーー


 あ、超絶ゆっくりだけど口が動いた!


 もう一回縛って、さらに新聞紙をまとめる時にあみだした鈴花結びでもう一回。この方法で締めると、ぎゅって締まるの。正式名称があるかもしれないけど、結び方の名前なんてワイは知らんぜよ。


 よしっ、バッチリ縛ってやったぜ!

 これを引きずって持ち帰ってワニパーティーを…って、あれあれ…運ぼうとしたら全然動かない。


 …ワニ、想像以上に重かった。

 パケパ芋は遊びに行っちゃったし、ソウさんは眠ってたしなぁ。


 持ち帰るのは無理かぁ。

 持ち帰れないなら縄、解いてあげないとね。

 残念、食べてみたかったのに…


<ウォーーーン>


 ‥‥‥。


<グルル…>


 聞こえなーい聞こえなーい。


<グルルルル…>


 ひぃぃ。明らかに野生の声がしてる。しかもけっこうな近くで。

 ステルスマントとかさ、野生の生物には効果ない気がするよね。

 アカン。これはアカンやつや。早急に逃げなくては…。


<ウ~…ワォン>


 ひぃぃ…ん?


 ワォン?


 ワ、ワンコかな?

 恐る恐る、声のする方を見やる。


 あ、ワンコ!

 超超でっかい黒ワンコ。

 魔獣じゃなさそう。だってどこも光ってないもん…って事は魔獣じゃないんだよね?ね??

 あれ…この判別方法ってあってるかしら…ま、魔獣じゃないって事にしよっと。


 よし。とりあえず魔獣じゃないからセーフ。

 いや待てよ…魔獣だろうが獣だろうが大きすぎる。アウト、アウトー!


 とにもかくにもセーフだろうがアウトだろうが、ワタクシもれなく恐怖で足がすくんで動けませんけどもね…。


「ワンコ…お、親御さんが心配してるよ。はやく帰んな」


 なーんて震える声で意味不明な発言をしてみたりして…。


 ――しーん


 だめだ…ギャグがスベリ倒した後みたいな空気になってしまった…。

 そしてワンコはまったく微動だにせず。ちなみに私も未だまったく動けない。私のメンタルが削られただけやった…。


 ――しーん

 

 お互い無言で見つめ合っちゃったりして。

 この目を逸らしたら負けみたいな雰囲気はなぁに?

 こちとら目を逸らしたらガブッといかれそうで、恐くて目が離せないだけだけどね。


 ――しーん


 …でっかいけどよく見たら結構可愛いな。

 って、思った瞬間に動けるようになったのは、人体の不思議ってやつかしら。あはは~って笑って現実逃避してもワンコは消えない…よね、うん。


 ――しーん


 あ、お腹が空いてるのかも?

 私は美味しくないと思いますよ…たぶん。


<グルル…>


 敵意は…感じない?

 でも、うかつに手を出すほど私もおバカじゃないぞ。


 ――しーん


 決めた。餌付けして隙をうかがい速攻逃げる作戦を決行するであります!

 悔しいけどワニも進呈しようではないか。悔しいけども!


「お腹空いてるの?これ、食べる?レディーキラーディアのお肉だよ。うんまいよ~」


 ――もぐもぐ、ごっくん


「お水も飲む?そっかそっか~」


 大きな鍋にたっぷりお水を入れてやる。


 ――ごくごくごく


 めっちゃ夢中で水飲んでっぞ!

 チャンス、キター!!


 逃っげろーーー!


 全速力で小屋の近くに戻る。ソウさんが私を探していたのかキョロキョロしている姿がみえた。


「ソウさーん!急いで小屋に入って!!」


【ベル、どうした!】


「大きなワンコに遭遇して…隙を見て…撒いて逃げてきたの。早く小屋に!」


 パケパ芋、大丈夫かな。襲われたりしないかな。みんな飛べるから大丈夫だとは思うけど、こういう時に通信手段がないのは辛い。


【ベル、後ろ…】


 ウ・シ・ロ?


 うしろ…後ろ…って…、


 ま~さ~か~、




 ぎゃっ!

誤字報告ありがとうございます!

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