表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/225

寒天というよりゼラチンゼリー的な。

主人公の目の前で戦闘があります。

また、主人公が武器を作ったり、次作以降はそれを使ったりもします。ご了承下さい。

 ダンジョン!ダンジョン!ダンジョン遠足~!

 ワタクシのテンションは、ただいまMAXでございます。


 半透明アギーラも私の傍に来てスタンバってる。

 とうとう地下階への第一歩!

 さぁアギーラよ、一緒に異世界ロマンを楽しもうではないか!!


 地下への階段を降りながら、パトナとお芋ちゃんをナップサックから解放する。ケサラとパサラは今朝からずっと毛糸ポンポンに擬態して、髪留めになってるからそのままでいてもらうんだ。 


 そうそう、パケパ芋達はね、みーんな、半透明アギーラの姿が見えたの。でも半透明アギーラからは、パケパ芋が見えなかった。残念!

 見えたら便利なのに。便利って何さって言われても困っちゃうけど…なんかおもしろいじゃんね。


 今後の俯瞰レベルアップに期待しようって言ったんだけどさ、さすがにレベルが上がったからって、精霊や妖精が見えるようにはならない気もする。

 いや、そもそもアギーラだって妖精なのに、みんなが見えないって事のほうが不思議なんだけどね。


 でももっと不思議な事があったんだよ。

 なんとなんと、獣化したソウさんには全員が見えてしまったのです。

 ケサラとパサラはみんなも見えてるから、ソウさんにも見えるのはわかるんだけど、パトナとお芋ちゃん…それに半透明アギーラも見えたんだから凄いよ。

 

 何で妖精だっていうアギーラには見えないのに、ソウさんには見えるの?

 この世界のルール的なもの、全くもって私にはわからんわ…。


 暫く飛び回っていたパトナとお芋ちゃん、早々に飽きちゃったらしい。

 気付けば私の肩の上に座り込んでなにやら遊びだした。可愛いのぅ。

 

 ふと見たら、ソウさんもガイアさんの肩に座って短い脚をプラプラさせていた。ガイアさんがすっごくガタイがいいからさ、対比でさらに愛らしさ倍増よ。あぁ、みんなを盗撮したい…。


 キョロキョロしながら歩いていると、半透明アギーラがちょいちょいと視界に入ってくる。

 今のところは順調に飛べてるみたい。チューブの中でゆっくりドローンを飛ばすイメージって、そうとう無理ゲーっぽいから、リモコン操作もさぞや大変な事だろう。


 それにしても…どうやったらこんな巨大な洞窟が勝手に出来るんだろ。

 ダンジョン内の道幅は、大人と子供が並んで歩いても十分に余裕があるサイズ。暗いけど、歩きにくくもない。いや、むしろ歩きやすいくらいなんだ。

 ダンジョンの意義はわからないけど…人に入ってきて欲しいって事なのかなぁ。


 今わかっているだけでも、ここのダンジョンは地下26階層まであるんだって。最深部にはまだ到達出来てないから、全容はわかってないらしいけど…相当広いんだろうねぇ。


 そんな事を思いつつ、おのぼりさん然として歩いていたら、先頭のガイアさんがすっと片手をあげた。

 事前に教えられていたストップのサイン。

 思わず息まで止めちゃうよ。ドキドキ。


 ま、魔獣かな。魔獣だよね。

 ツガイコウモリ便で使われている蝙蝠は魔獣だっていうし、生きてる魔獣自体を見た事がない訳じゃない。実は浮遊訓練の時にも、遥か遠くではあれど魔獣の群れらしき一群を見かけた事だってある。


 鑑定もしなかったし動物かもしれないけど…私の直観によればあれは魔獣だった。でもダンジョン内の魔獣だよ。そこいらの魔獣とは全然違うんだからね、私の気分が!


 ガイアさんが背中に背負っている大きな剣じゃなくて、小型の脇差を抜いた。他の冒険者さん達も私達子供をかばいつつ、自分の武器に手をかけて身構えている。


 目の前にぷるるんとした物体が現れた。


 スライムだ!


 鑑定しなくともわかりますぞ。

 ダンジョン内、初めての魔獣はスライムたんでした!

 本当にゼリーみたい。寒天というよりゼラチンゼリー的な。

 

 別に…食べたい!とか…絶対に思ってないからね。

 まじで。いや、まじで。


 あれ…?

 体に一か所だけ光ってる部分があるんだけど…。


 ‥‥‥。


 もしかして魔石…雑魔石がある部分が光ってるんだったりして。

 光が…雑魔石の光と似てるみたいだし…。


 なんてね~。


 ‥‥‥。


 な、なんてね~。


 ‥‥‥。


 いかん。生きた魔獣の体内にある魔石までもが、まさか光って見えてるんじゃなかろうか疑惑はさておこう。

 

 何故なら目の前では、ダンジョン初の戦闘シーンが始まろうとしているから。今は目の前のダンジョン戦闘見学に集中しなければ。

 こんなに近くで戦闘シーンが見られるなんてチャンス、そうそうないんだからさ。


 あんまり知能が高くないのか、明らかに強そうなガイアさんに果敢にも飛びかかっていったスライムたん。

 その勇気は讃えたいけどさ、讃える前にあっさりガイアさんにたたき切られて即終了。スライムたーん、俺のターン!的なものは、一切ございませんでした。あっけない…。


 日本で暮らす鈴花時代に見たら気絶したかもしれないけど、今の私にはワクワクしかない。これは転生補正じゃなくって、生きる世界が違えば、人格形成にも影響があるって事じゃないかな…知らんけど…。


 スライムかぁ…私も倒してみたいな。

 そんな欲も出てくる始末。


 ダンジョン内の倒された魔獣は、そのままにしておけばダンジョンの地面に吸収されていく。ふんふん、面白い仕組みなんだねぇ。


 一応、冒険者のルールとして、魔獣を持ち帰らない時は、歩行の邪魔にならないよう、隅の方に捨て置くって決まりになってるんだって。

 吸収にはある程度時間がかかるのに、放置しておくぶんには死臭とかケモノ臭とかは出ないらしいの。でも、持ち帰ろうとすると、普通に臭いが発生する。

 これはきっとダンジョン七不思議のうちの一つに違いない。そんなもんないけどな!

 

 思いっきりスライムたんの死骸をガン見してしまう。

 やっぱりそうだ。光ってたのは雑魔石だったよ。私ってば魔獣の体の中にある魔石も光って見えるって事だよね?


 ゼラチンゼリー(スライム)だからかな。それとも…けむくじゃらの魔獣の魔石も光ってみえるのかな。

 遠くに飛んでるツガイコウモリでは魔石の存在なんて全然わかんなかったけど…あれはさすがに遠すぎてわかんないもん。


 魔石がある部分が急所らしいから、もし光って見えたらさ…私ってば魔獣の急所わかり放題って事じゃない?

 戦闘系の人だったらこれって、無双チートピーポーじゃん。残念ながら、私には完全なる宝の持ち腐れだけれども。


 ペチャンコになったスライムを壁際に寄せてから、私たちは先へと進む。

 みんな、無言。

 人の気配に魔獣は敏感なんだって。だから、ダンジョン内では絶対に静かにするようにって言われたんだ。

 さすがに普段はお喋りマシーンのラナも私も無言よ、無言。


 しばらく行くと少し大きなくぼみが出てくる。このくぼみで休憩するらしい。なんていうのかな…扉のない部屋みたいな感じになってる場所って感じ。


 ダンジョンにはこういうくぼみがぽつぽつ点在してて、冒険者が休憩する時に使ってるんだって。さすがにこの階で休憩する冒険者はいないけどさ。


 そう言えばギルド長が引率してる班もこの階にいるはずなのに、一切会わなかったし、物音一つ聞こえなかった。

 ダンジョン…どのくらいの大きさなのか、想像もつかないわ。


「どうだい?初ダンジョンは」


 ガイアさんが私達に問うてきた。キラキラした目でジルが食い気味に即答。


「俺も早く冒険者になって、自由にダンジョン探索したいよ!」


 ジルは完全獣化もできるし、身体能力も高い。冒険者志望の先輩方からもかなり目をかけてもらってる。本人も冒険者になるんだって早くから決めてたし、今日の遠足の事、もの凄く楽しみにしてたんだよね。


 たぶんだけどさ、ジルは先祖返りなんじゃなかろうかと思うんだ。

 先祖返りだって事、小さな頃は周囲に不必要に話しちゃダメってジンクス的なものがこの世界にはあるらしいから、本人から聞いた事はないけどさ…。


 ジルの唯一?そりゃもちろんラナだよ。ジルは物心ついた時から、ずっとラナ一筋だもん。唯一って唯一無二の唯一なんだなって…この二人を見てたら思うんだよ。こういう…最初から両想いな唯一であれば、唯一ってのもあって良いんじゃないかなぁって…。


 それでもさ、逆にそういう…初恋同士な子供達の間に、突然、唯一だっていう別の子供が割り込む事もあったかもしれないと思うと、心がこう…少しちくっとするんだよね。


 グリンデルさんもリーフさんも…もし、唯一というもの、ひいては先祖返りが起こらないようにする事が出来るのなら、今後どうするべきかって…真剣に議論してる。


 どうする事が正解か不正解かなんて、誰にもわからない。

 でも…この世界の事をちゃんと知ってる人たちが、一生懸命に考えて出した答えが、正解になんだと思いたい。

 

 “唯一”に関して個人的には色々と思うところはあるけれど、私は別の世界の認識を持ち込んでるだけだから、口を出す事はしたくない。

 だから私は調べる事には全面的に協力はするけど、意見は出さないよ。この世界の人たちが出した答えに従うだけ。


 イレギュラーな…ソウさんの件に関してだけは、バグとして責任を感じてるし、なんとか元の姿に戻したいって思ってるから、積極的に関わっていこうとは思ってるけどさ。


「ジルは冒険者志望だよな。スライムを倒してみるかい?」


「良いの?ダンジョンで魔獣を狩れるなんて夢みたいだ!」


 むむむ、すっごく羨ましいんですけど!

 なんでジルだけ?私もスライムたん、やっつけたい。

 ラナも同じ気持ちらしく、二人でガイアさんに向かって“私も!私も!”って手をあげて立候補。


「一応、冒険者志望の子供が希望すればって話になってたんだがな…」


「じゃあ、私も冒険者志望になるよ!」


「私も!」


「わかったわかった。ナイフは持ってきてるのか?」


「採集用のナイフがあるもん」


「まぁ、一匹くらいなら大丈夫か…二人共、ナイフを見せてみろ」


 ガイアさんが私たちのナイフをチェックしている。


「お前たち、本当に狩りたいのか?」


「うん!もう一生ダンジョンなんて来られないかもしれないんだから。ガイアさん、お願い!」


 だって私、人間なんだよ。この先、ダンジョンに入る事なんてないと思う。最初にしてラストチャンスじゃん。

 

 ラナと私の熱意に押し負けたガイアさんが許可を出してくれたから、まずはとジルが先陣を切る事になった。ジルを連れたガイアさんとソウさんが、くぼみから出て行く。

 一人ずつくぼみから出て、魔獣を狩らせてくれるらしい。


 武器かぁ…私も欲しいな…。

 採取用のナイフでも良いけどさ…自分だけの武器とかって憧れちゃうよね。

 

 縫い針なんかを伸縮魔法で大きくできたら、武器にならないかな。


 ‥‥‥。


 作ってみるだけ作ってみよう…暇だし。

 苔を採取するフリをしながら、収納魔法で裁縫針を出して…


 ――伸びろ!


 あらこれ、なかなか良さそう。

 ボールペンよりちょい長め、20cm程の長さの縫い針。

 糸通しの部分が持ち手になって良い感じ。これに紐で滑り止めをつけて…。


 あれ?


 これって俗にいう暗器ってやつじゃ…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ