閑話 田中君はこうして異世界でトイレ紙準男爵になった③
あ、どうもどうも!ロイドこと田中正です。
ギルド総長~!グー舎のコア、特許システムネットワークは絶対に国に関与させないで下さいよ~。
王侯貴族特権集中を危惧した結果の産物なんすから。難しい言葉知ってるなって?あー!またバカにして~!
ギルド総長~!情報操作しません?ほら、各国を跨いで活躍する冒険者とか各国のギルドに登録してる奴らで使えそうな人を…そうそう…そうそう…。
男性に噂を広げるヤタガラス。
女性に噂を広げるサクラ。
これさ、昔、エルフ達が、吟遊詩人って名乗りながら、世界に情報発信してたって話のネタパクなんだけど、よくね?よくね?
元々は精霊に対して人族、主に人間族がバカな事をすぐにしようとするからって、けん制する為の仕組みだったんだって。
妖精やら幻獣やらに手出ししようとするおバカな輩が出てくると、いろんな話にこの世界の理を紛れ込ませて説いてたらしい。
今はエルフも少なくなって力も弱まっちゃったから、そう言う事も出来なくなっちゃったみたいだけどさ。
そしたら精霊種もどんどん少なくなっていったんだっていうから、この世界ってほんと不思議だよなぁ。あーん?これ不思議…ってか、ただ単に、精霊たちにこの世界だか大陸だか…見限られただけじゃね?
以上、名探偵タダシ君がお送りしました。
エルフみたいにテレパシーはないけれど、今やどの国も、そこそこ大きな町にはギルドがある。
意図的に情報流して世論を味方につけるって、有効な手段だろ?
よぼんよぼんの院長先生が棺桶に片足突っ込んで、こっちをじっと見つめてくるから、俺は冒険者を引退して育った孤児院に戻る事にした。皆の者、アデュー!
この日の為にへそくり使って金積んで、コネ使いまくって…って思ってたら、不遇職すぎて、ノー賄賂で即院長。
冒険者しててさ、他の国にも行ったけど、どこの国の孤児院も…酷いもんだったよ。
全部が全部を救うなんて綺麗ごとは言えない。言えないけど…孤児院が自分達だけでも生き抜ける…孤児院の利益が永続的に確保できるネタ…ほちい。
◇◇◇
どっかの国のトップ、ケツにできもの出来たってよ。
トップのケツにできもの出来たから衛生大改革?
庶民なんてずっと昔から普通にケツにできもの出来てますけど、なにか?
えー?ノープランで発表しちゃったの?五つ国連名で発表しようとしたら、どっかの国が抜け駆けしそうになったから、改革名だけ先に発表しちゃったって…。
トップのケツより、トップのオツムの心配しろ!
でもこれって…俺にワンチャンきちゃったかも。
ギルド総長~!いいネタあるんすよぉぉ。上下水道っていうんだけどね…そうそう…そうそう…
◆◆◆
ジネヴラ国、バルハルト領の時のギルト総長イグナスにとって、ロイドは自分の子供と同年代でありながら、気の置けない友人という特別なポジションにいる男だった。
そのロイドが「ギルド総長~!」とわざと言ってくるときは、大抵、とんでもない発案をしてくる時なのだが…さすがに今回は驚いた。
しかしその仕組みの有用性を一瞬で理解したイグナスは、速やかに各国ギルドと連携を取り、魔道具師を招集。ロイド発案の上下水道にまつわるあれこれを、粛々と実現させてゆく。
自動汲み上げや自動排水、魔道具を使っての弁の設置、後付けで家庭内にまで配管できる魔道具、スライムを利用しての下水浄化の魔道具など、皆がロイドの発明に驚愕しつつも、知恵と技と職人としてのプライドを終結してこの発明品の実現化に取り組んだ。
上下水道の仕組みに関しては、非常に特殊なものであったため、その製造技術を持つ者が集う、生産ギルドが権利の管理を担う事となり、全ギルドの総力を挙げて衛生大改革を推し進める事となる。
結果、各国がノープランだった衛生大改革の立役者として、ロイドと共にギルドや従事した魔道具師たちには、国から褒賞が贈られる事となった。
さて、上下水道完備の際、その工事を利用するかのように各家庭に排便処理器を設置させたのが、あのロイドである。
ロイドはワシキベンジョという名の排便処理器を設計。
これは低コストで、短期間に大量生産が可能、今まで排水用として設計していた下水道と簡単に接続ができる、とんでもない代物だった。恐らく、上下水道の話をしてきた時点で、ロイドの頭にはすでにこの構想があったのだろう。
このワシキベンジョの普及により、家の中や、離れとして設置した小屋での排泄が可能になる。
今までの糞尿をまき散らしていた時代はここに終わりを告げた。
農作物の不況と不衛生な環境での労働力低下、これまでの負のスパイラルをロイドは断ち切ったのだ。
ワシキベンジョは、これからは室内で用が足せると世界中の女性の熱狂的な支持を得る事となる。また、今までと同じ排泄ポーズで用を足せる事で万人が取り入れやすかった事もあり、あっという間に各国に広まっていくのであった。
男性陣の小水時に関しては色々と議論はされたが、数か月もすると町中で用を足した男性は、女性陣から変態と蔑まれる事で、世界は急速に衛生的な環境を手に入れる事となったのだ。
そして…下水に直接流せるトイレ紙の発明。
ロイドはこのトイレ紙の一切の権利を、孤児院に永久譲渡する事により、各国からさらなる名誉を賜る事となる。
異例の五つ国同時名誉叙爵。
こうしてロイドはロイド準男爵となった。
◆◆◆
ロイド準男爵は、ワシキベンジョの特許を各国に全譲渡する事を餌に、『グーテンブルージュ権利保護舎』を、大陸全土の権利保護団体として各国共に認めさせた。これによりグー舎は、一気に活動の場を広げていく事になる。
そしてトイレ紙には、永久的な権利保護を適用、永久独占権を与える事に成功した。
これには各国とも財政難で孤児院への出金を凍結していた後ろめたさもあり、孤児院独自の収入源の確保には賛成の声はあれど、反対の声は少なかったという。
また、孤児院の建物敷地と孤児院がトイレ紙等、今後、孤児院での製造物を生産する工場の土地建物を、各孤児院へと権利譲渡する事とし、各国の王侯貴族達が好き勝手に、孤児院の利権を取り上げる事ができないよう、布石を打った。
その他にもロイドは、永久永続的な税金の免除や、孤児院の人事権を孤児院が握る事など、無謀とも思える案件を各国に突き付けたのだ。
国営でありながらも薄遇されてきた孤児院が、今後あるかもしれない国の方針変換によってまた苦しむことのないように、これらの取引を褒賞とする事で、孤児院の未来を守ろうとしたのだろうと、のちのイグナスは推測している。
さて、各国はこのような提案を何故、次々と受け入れたのだろうか。
それは長く続く農作物の不況と感染症の流行で、各国とも疲弊しきり、未だかつてない程の財政難で国家統治がひっ迫していたからに他ならない。
一見無謀な提案ばかりかと思われたが、ワシキベンジョの利権を喉から手が出るほど欲しがった各国の焦燥に、うまく付け込むロイドという図式。
必然的にロイド優勢で話し合いが進む事となった。
また、ロイド自身の私腹を肥やすような案件が一切なかった事で、王侯貴族は反対する大義名分を失ってしまった事も大きかったと言えるだろう。
しかもこの褒賞の話し合いと前後して、何故か市井から妙に国や王族への好意的な話が多数聞かれるようになった。それがロイドの功績ともリンクしていた事から、横やりを入れるのは得策でないと感じた各国が、喜んで提案を受け入れるという形を取ったのだ。
ちなみに、褒賞とは関係ないが、ギルドと孤児院、そしてグーテンブルージュ権利保護舎、その間に存在する三組織相互救済システムを作ったのも、相互監査システムや情報交換システムを作ったのも、全てロイドである。
なお、これらはすべて秘密裏におこなわれており、一部の者にしか知らされていない。
この時、これらのシステムを導入させた実績、衛生大改革の影の功労者であること、すでにヤタガラスとサクラという情報操作部隊を仕切って、各国ギルドと連携を密にしていたイグナスは、その手腕を買われ、一国の領地内ギルド総長から、初代、五つ国ギルド総長に選任された。
ギルドが孤児院とグー舎と共に、陰に日向に結束を高め、産業を発展させ…ロイドがこの世を去った後も、どの国家より潤沢な資産と結束力を保持し、巨大な力を蓄えてゆく事になるのだが、各国の王侯貴族はまったく気付く事はなかった。
田中君祭りが長引いている…ぐだぐだ書きたい症候群なので、許してくださいby結構田中君好き
さて、連休の皆さん!
たくさんのお休みのお供に11万字ちょいの拙作、「異世界で猫と一緒にご飯を食べる、ただそれだけの話」を、是非!最近、猫吉先生が夢に出てくるので、今後、おまけを付けるかもしれませんが、こちらは一応完結済みでございます。
https://ncode.syosetu.com/n5100ho/
連休じゃない皆さん!
短編「冤罪悪役令嬢救済協会の方からやって来る女」を是非是非!
8500字程度ですぐに読めます!
恋愛ジャンルですが、これ、恋愛じゃねぇし…とかツッコミを入れる人は、ここまで読んでくれていないハズ…。
https://ncode.syosetu.com/n6587hp/
以上、宣伝でした。(音声アプリ読みの人は特に)後書きわちゃわちゃでごめんなさい_(._.)_