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閑話 田中君はこうして異世界でトイレ紙準男爵になった②

 あ、どうも!ロイドこと田中正(たなかただし)です。

 

 赤ん坊で転生した俺も、この異世界に転生した年と同じ、二十歳になったんだぜー!

 そうそう、赤ん坊と言えば、赤ん坊ながら心に熱く誓ったムー〇ーマン級おむつ作りにも、ちゃんと成功したから安心してくれ。

 

 苦節10数年、こんなに大変だとは思わなかった…。スライムを使ったんだけど、これがなかなか…まぁ、この時のスライム研究が後々役に立ったことだし、許してやんよ…って俺誰様!

 

 赤ん坊をゴブリンふんどしから救い出すと決めた俺の使命は無事完了、ビシッ!

 俺の育った孤児院には、新製品開発モニターって事で大量に送り付けてる。

 スライムちゃんが過労死したって、ケツにできものなんか作らせない!

 

 ちなみにさぁ、国は孤児院の事、完全スルー歴15年。バイトならオーバーザ店長。いやこれもう孤児院側がインビジブルってんのかも。


 最近顕著によぼよぼしてきた院長先生と、俺が拾われた時からよぼよぼしてるばあちゃん先生が必死に孤児たちを守ってくれてる。そんな状態なのに、どんどん孤児が増えてるんだ。


 だって、往来で普通に飢餓だか病気だかで人が死ぬ世界だぜ。その子供はどうなるかって話よ。そう、孤児院に来るんだ。

 院長先生が個人的に付き合いのある近隣の孤児院は、俺達卒業生の差し入れとマヨビームでなんとか生きのびてるけど、これもいつまでもつか…。

 

 あ、あと、ギルド総長のイグナスっちを忘れちゃダメだな。ここらのギルドを総括してるっていう偉~い人が、俺や孤児院やらに、色々と便宜を図ってくれたお陰でもある。年は離れてるけど、まじフレンド、まじ感謝!


 本当は12歳の準成人を迎えてからじゃないと、ギルド登録できないから冒険者にはなれないんだ。でも5歳で魔力覚醒してから、俺、兄ちゃん達と一緒に、こっそりがっつり冒険者やって生きてきた。

 これもイグナスっちが色々機転を利かせて配慮してくれたからなんだよ。

 

 ここで労働基準法とか言う奴、絶対モテないからな!じゃなくって、そもそもこの世界にはそんなものないからな!それにそういうレベルの話じゃないんだ。働かないと普通に死ぬ。

 

 でもさ、なんとか凌いできたけど…もはや焼け石に水。もっと根本的な問題が解決しないとどうしようもない。

 

 国には見捨てられたけど、ギルドはいつでも俺達に優しい。

 ギルドが国家なら良かったのにな。

 

 ◇◇◇


 孤児院を守るべく、高額依頼ばっかり受けてる俺、つい最近なんだけど、イケメンエルフ君と友達になったんだ。いやもう神々しすぎて逆にCGに見える。

 

 最初はファンタジー全開ワオッ!とか思って近づいたんだけど…エルフってのは外見だけじゃなくって、中身も一言で言うと、ただのカッコイイ奴だった。


 アニメとかじゃさ、エルフって良いようにも悪いようにも描かれるだろ?人の常識が通じない的なネタも多いじゃん。独特の正義感があったり、孤高の存在だったり、人と相容れない的なパターンもあるよな。


 この世界のエルフは、知能と魔力と特殊なスキルやなんちゃらの手?っていうものを持ってたりして、まさに特別扱いよ。選ばれし者って感じ?


 精霊特有のものなのか、テレパシーみたいなのが使える人も昔はいっぱいいたらしいよ。

 テレパシーだけじゃなくって、顔やなんかの印象を変えたり…なんて言うの?認識阻害?そういうのも出来ちゃってたらしい。エルフぱねぇ。


 世界中の奴らが徐々に魔力を失っていってるけどさ、エルフのステキ☆能力も減退の一途を辿っちゃった。

 昔は吟遊詩人とか名乗りながら、ばりばりテレパシー使って、世界中の情報網羅してたらしいのにね。


 そうそう、知能の高い種族って…どうなると思う?

 どんどん数が減るんだってさ。

 俺にこれ以上聞くなよ…わかる訳ないだろ?俺だぜ?


 もともと少なかったエルフの数は、今やごくわずか。でも、消えゆく運命(さだめ)には抗わないって…なんだそれ。日本に居た時から思ってたけど、賢い奴って、まったく何言ってんのかわかんねぇよな。

 

 そんなイケメンエルフ君とお友達になっちゃった俺なんだけど、実は転生者でうぇーい、って話をしてみたんだよね。こういうの、ずっと一人で抱えてるのってキツイんだよ…。

 

 エルフ君になら…良いかなって。へ、変な意味じゃないぞ。


 俺の身の上話をしたらエルフ君、すんごい驚いちゃった。

 すぐに信じちゃったっぽいのにも驚いたけど、それよりなにより絶句しちゃって…なんだなんだ?って思ってたら、実は本人を見つけられないし、真偽不明だけどって…つい最近あった妙な出来事ってのを、教えてくれたんだ。


 どうやら中央のユスティーナ国が、禁術の魔法陣ってのを使ったらしいって。転移の魔法陣使って聖女召喚するって…。俺、結構ちゃんと冒険者してて、それなりに情報通になってる自信あったんだけど…そんな魔法陣の存在自体、聞いた事なかったからクリビツテンギョウよ!

 あ、これ、うちのじっちゃんがよく連呼してた言葉。ビックリ仰天の事だってww。


 異世界からの転生とか転移とかって…ラノベとかで良くあるだろ?

 大抵は一方的に呼ばれて終わり、だよな?

 でも…この世界は違う。

 転生や転移をするには対価がいるんだ。


 この世界の本来の住人は精霊達。そう、この世界は俺ら人族のものじゃない。

 だから…人族じゃ駄目なんだ。他の世界からこの世界に異世界人を召喚するには、対価はこの世界の本当の住人。人族なんかじゃ対価にならない。


 異世界に通じる魔法陣に耐えられるほどに魔力量が膨大で、精霊の血統持ちで、寿命のながー--い奴と…異世界人の交換、とかさ。


 ユスティーナ国の奴ら、エルフを狩りやがったんだよ。

 

 捕まったエルフには婚約者がいたから、事が明るみに出たらしい。


 え?なんで婚約者がいると事が明るみに出るの?って思うよな。わかるわかる、俺も思った。

 で、ここにエルフの特殊なスキルが関わってくるんだ。


 何でも婚約すると、魂の連帯みたいなのが稀に起こるらしくて、今でも二人の間ではテレパシーが使えるようになったりするらしいんだよ。あとはお互いの寿命を(なら)したり…。

 

 これ凄いんだけどさ、夫婦になると残りの寿命を共有すんだって。例えば、寿命の残り100年と300年のエルフが結婚したら、お互い残りの寿命は200年になるみたいな。エルフぱねぇ。

 

 その彼女さんは祖先に獣人族がいて、純粋なエルフって訳じゃなかったのに使えたらしいから、エルフの血ってのはほんと、ただもんじゃないよ。

 でさ…捕まったエルフは、その彼女さんにテレパシーを送ってきたんだって。


 『ユスティーナ国の城で(ザザザ…)王の(ザザザ…)「異世界人召喚の対価ザザザ…転移させられ(ザザザ…)禁術ザザザ…魔法陣ザザザ…たすけ…』ってテレパシーを受け取った。これ原文ママな。それ最後に、通信が途切れたんだってさ。


 通信が切れた後、必死にその彼女さんは彼を探したらしいけど、見つからないって。完全に魂が消失した訳じゃないのに、その痕跡はまったくない。今も彼女さん…血眼になって探してるらしい。


 なんなんだよ…エルフを犠牲にして、聖女を呼んだって事か?それで俺は…巻き込まれモブか?

 

 あれ…違うな…。

 エルフが捕らえられたのは最近。俺、赤ん坊で転生して、今、二十歳だったわ。

 他にも誰かが転移させられたって事かよ…最悪じゃねーか。

 

 俺さ…もしかしたら戻れる方法があるのかもって、ずっと思ってたんだ。

 トラ転してここに来たんだから、また転生して日本に戻れるんじゃないか…とか。

 転生したらチートな魔法持ちだったし…何とか出来るんじゃないかって。


 でもそんな…誰かの犠牲を対価にするような方法でしか帰れないなら、俺にはできない。

 転生と転移じゃ違うかもしれない。でも、違わないかもしれない。

 俺は俺がドジって死んだ魂だけど、対価となる奴はそうじゃないかもしれない。

 この話が確かなら、少なくともその消えたエルフは生きたまま転移させられたって事になるから。


 生涯かけて、帰還方法を探してみるつもりだったけど…詰んだ…

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