閑話 田中君はこうして異世界でトイレ紙準男爵になった①
これはベルがこの異世界にやって来る、170年ほど前のお話――
◇◇◇
あ、どうも。田中正です。TTって呼んでね!呼ばれた事ないけど!!
名前からしてわかると思うけど、俺は日本人。
某私立大学政治経済学部に通い、超美少女アイドルグループ楠桜町77の熱狂的信者として青春絶賛謳歌中だったのに、突然のトラ転。
しかも異世界の孤児院門前放置。かーらーのー、赤ちゃんスタート!はい、ドーン!
こんなんあり?ないわ~。
トラ転させるなら、もっとマシなスタートおくれ!
10男でも15女でも何でも良いから、貴族に産まれたかった~
◇◇◇
あ、どうも。田中正改め、ロイドです。ロイドって呼んでね!いやそのまんまかーい。
知ってた?この世界、衛生観念ゼロなんだぜ。
俺、面倒くさいから風呂入らないで寝ちゃったり、歯も磨かないで寝ちゃったり…日本ではしょっちゅうしてたけどさ、レベルダンチだから、ここ。
まず、このおむつ見てよ。最悪。
最悪?いや、そんな言葉じゃ足りないね。
ただの汚れた布だから!ゴブリンふんどしだから!!
やーめーてー!
その汚ねぇ布でくるむくらいなら、俺、マッパでオケよ。素っ裸希望!
ぐすんぐすん…屈辱だ。
絶対、将来ムー〇ーマン級のおむつ、発明してやるかんな…。
トイレないぞ。
穴掘って草!
風呂もないぞ。
桶持って川!
歯ブラシないぞ。
知らんぷり!
衛生状態劣悪で、普通に人、死にまくってる。ケツにできもの出来たって悶絶してなくて良いから、なんとかしろよ!
◇◇◇
孤児院、国から見捨てられたってよ。
あー、腹減った~。
みんなでそこら辺に生えてる草食って、毎日なんとか生きてる。
異世界転生して幼少期餓死バッドエンドが脳裏をよぎる。これ、ダレトク転生だよ!
時々、孤児院卒業した兄ちゃん達が窮地を知って、肉とか持って遊びに来てくれる。まじブラザー、まじ感謝!
冒険者の兄ちゃん達の話、めっちゃ面白いんだー。良いなぁ、冒険者。
俺、人間族みたいだから、弱っちくて冒険者には向かないんだって。クソー。
魔力の覚醒ってまだまだ先らしいけど、はよ!ガチャスキルとか、はよ!
◇◇◇
すげぇ、俺様。この世界にある5色魔法、全色使いたい放題だった!前世で廃課金して徳積んだからだな。チートわっしょい!
魔力量膨大で魔法わんさか。スキルも肉体強化系ドーピング級。わっしょいわっしょい!!
これなら獣人の友達と一緒に冒険者になれるかも?院長先生、それ、マジすか?
あ・こ・が・れ・の、冒険者!イエーィ。
魔法はイメージじゃーん。ライフル、カモーン!ウォータージェット、カモーン!!
これ、メキメキ頭角あらわしちゃう系?
俺、TUEEEEE!
◇◇◇
いつの間にかギルドランクが、SSって呼ばれるトップクラスランカーになってた。俺、カッコイー!
人間族が珍しく高ランカーになっちゃうとさ、お貴族様の魔法なんてもんを、見れちゃう機会もあったりする訳よ。
今日の依頼人、なんでも獣人族を毛嫌いしている貴族なんだって。護衛が人間族だけなんて…新手の死亡フラグかよ!
ラブ&ピースな俺はそういう考えにはまったく賛同できないね。腹立つから、お前らには依頼料吹っ掛けて、獣人族の子供がいっぱいいる孤児院に食べ物、たんまり届けてやっから。うぇーい。
護衛兼、万が一、お貴族様たちの究極魔法が暴発した時の肉壁役でがっつり待機中。
いや、本人たちが「世界でもほとんど使える者のいない究極魔法」とかなんとか言ってたから、依頼者自体はつまんないけど、もう期待値MAXっす!
え…詠唱しないと使えないの?
え…詠唱、めっちゃ長ない?
詠唱中に魔獣から死亡説、流されても文句言えないぞ。
「我に宿りし太古の炎がどうしたこうした~。その身を滅する紅蓮の…途中省略…、盟約の言葉によりどうとかこうとか~、我が道を阻むすべてを…以下省略」とか数分間も、もごもご言って、やっとこさっとこファイアーボール(極小)一発。
もう会う事はないと思うけど、今日からお前のあだ名、チャッカマンな。
それにしてもなんなんだ?その悩ましい格好は。ジョ〇ョの奇妙な冒険でも、そんなポージングしないぜ?
え…そのポーズ取りながら詠唱しなきゃダメなの?
「今日はこのくらいにしといたるわ」って…よし〇と新喜劇のセリフみたいな事言ってるけど、魔力がもうないだけじゃねーか!
色魔法、滅びる運命だとか言われてるけど、納得すぎた。
ま、俺は無詠唱だから関係ないけどな。
◇◇◇
マヨネーズいっとく?
だよね~。
異世界行って、もしマヨネーズがなかったら、発明権は我にあり!ってみんな言ってるし。
あ、ついでに油、植物のはあるけど、鉱物からのも俺のスキルでいけそうだから作っとこ。
え?権利って概念がないの?マジかー。
マヨ作っても、マルパクされて終わりじゃねぇか!
ギルド総長~!面白いもん作りませんかぁ?そうそう、発明した人の権利を保護する団体なんだけど、国の管理だとズブズブになりそうだから…ああしてこうして…そうそう…そうそう…。
いずれは同じような奴が転生して来るかもしれないからさ、これはそいつらへの置き土産。
俺、実は優しさで出来てるんだ。
置き土産の名は『グーテンブルージュ権利保護舎』。通称、グー舎。ここに『グーテンブルージュ著作許諾発明申請書』を提出してもらって、許可が出れば、権利保護の対象になるって制度。
ちなみに申請書は通称、グーチョキパっていうんだ。日本人が転生してきたら先人に気付くかもしれない。いや、偶然だと思うかな。いやいや、マヨネーズがマヨネーズって名前で存在してる時点で気付くか。
マヨは早い者勝ちだぜ、お先~ww。
まぁ、マヨ勝者だからな、後輩転生者が困らないようにくらいは、しときたいじゃん。
素っ裸で転生させられる奴もいるかもしれないし、弱い立場で転生してくるかもしれない。どっちも俺だけど。
転生者の知識を生かせば、生き抜いていける世界観、これ大事よな。
さ~て、マヨをたっぷり挟んだ肉増し増しサンドウィッチだぞ~。みんな~、腹一杯食ってくれ~!
で、ご飯食べたらこれ使ってな。これな、兄ちゃんが作ったんだぜ!すげぇだろ~。デンタルフロスと歯ブラシっていうんだけど、これで口の中を綺麗にすれば、将来歯が沢山残るよ~、きっと。あと、病気予防にもなるから、お口の中は清潔にしとこうな。この葉っぱ噛んでみ…そうそう…そうそう…




