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ここで使わずいつ使う

「こっちが魔道具に取り付けてある魔石置きで、その素材がこれね」


「ふんふん」


 只今、初期学校の休憩中。アギーラと雑魔石有効活用についての考察中でございます。


「ね、その入れ物はなぁに?」


「これは魔石の魔力の放出を防ぐ箱。魔石を持ち運んだり保管したりする為の箱って感じかな」


「魔石の光の中からさ、時々だけどキラキラって光の粒子が空に昇って行く時があるの。魔石に内包されてる魔力の放出シーンかなぁって思ってたんだけど…あれを防止してくれるのかなぁ」


「なんせ僕らには見えないから…ベルのその話、全然わかんないって。だけど…たぶんそうじゃないかなぁって気がする。まぁ、放出自体はすごく少ないから、普通に使う分には気にしなくても良いんだ。でも商品として扱う僕らには必須って感じかな。お客さんの手元には一番良い状態で納品しないといけないからね」


 魔石の中でも内包されている魔力が少なく安定していない小さな魔石が雑魔石。

 石のなかの魔力が不安定…安定不安定って、最近どこかで聞いたような…あ、私のせいか。


 獣人女性に起こる不安定期と共に発生する発情香に作用する、メイドイン私の薬草茶と飴。

 あちらはもう匠の技でプロが検証してる段階だから、私は静観する事にしてるんだ。まぁ、数値化の…お金を引き出す算段は、陰ながらほんのりレクチャー~子供の無邪気さを添えて~を決行中だけどね。

 

 雑魔石の安定化かぁ。こっちの安定化もまた難しそうだな。


 ◇◇◇


 次の休憩時間――


「僕さ、俯瞰魔法の訓練してるって言ったじゃん?」


「うん。言ってたね」


「気になる犬の事、いつも見に行ってて…」


「うん。言ってたね」


「居なくなっちゃったんだよ~」


「え?精霊の祈り木の周りにいつもいるって言ってた、でっかい黒ワンコだよね?」


「そうそう。一番最初に俯瞰の魔法を使った時に目があって…それ以来に気になって見に行ってたんだけど…ここしばらく見かけなくなっちゃってさ…」


「お出かけしてるんじゃないの?」


「うん。でも…いっつもいたんだよ?なのにこんなに長い間…会えないのが気になっちゃって…。それにね…最近、精霊の祈り木…なんだが元気がない気がするんだ」


「ちょ、やめてよ。なんかそれってヤバい話っぽく聞こえるのは気のせい?確か…この世界のシンボルみたいな木なんでしょ?…寒い時期だからじゃなくて?」


「わかんない。俯瞰で見てるだけで本当に見てる訳じゃないから、気のせいかもしれないけど…。でも、寒くなってからも一向に葉っぱがなくならなかったんだよ?それが…なんていうか、これまでずーっと同じスタンスの木だったんだのに、ここ最近急になんていうか…元気がなくなった感じ。それに犬もいなくなっちゃって…」


「なんか嫌な感じする…」


「うん…何もなければ良いんだけど、こんな話、誰にも出来ないし。ガイアさんに話してみようかと思ったんだけど、こんな事言われてもガイアさんだって困るかなぁって思って…まだ言ってないんだ」


「確かにね。でも…この世界の人に相談したほうが良い気もする。おじいちゃん先生に聞いてみたいけど…うまく話を持っていくのが難しいから、まずはガイアさんだよね。冒険者だし知り合い多そうだし…噂話なんかが入って来やすそうだからさ」


「だよねぇ…」


 そんな話をしていたら、噂をすればなんとやら。

 ガイアさんが初期学校に飛び込んできた。


「アギーラ!どうしよう…産まれそうだ!」


「「え?」」


「あ、ベルじゃないか。大変なんだ!シーラが、シーラが…生まれる!!」


 いやいやいや、シーラさんは生まれません。ガイアさん、しっかり!そして何故ここ(初期学校)に?


「こんなところでオロオロしてないで…赤ちゃんが生まれるならお家に居たほうが良いんじゃないですか?」


 この異世界、庶民は病院で出産とか、もちろんないわよ。そもそも庶民にはお医者さんもいないし、病院もないしね。薬師さんと出産経験豊富な先輩たちが、助産師さんの役割を果たしてくれているんだって。

 たぶんお貴族様も自宅出産なんだと思う、知らんけど。


「ガイアさん、しっかり。ほら、帰りますよ」


「うん。どうしようどうしよう…薬師に言われて来たんだ。アギーラ迎えに行って…外の空気でも吸って来いって」


 これはウザがられ追い出されたな。


「とりあえず帰りましょう。ベル、またね」


「うん、またね。ガイアさん、無事なご出産を祈ってます」


「おう、是非来てくれ。あぁ…どうしようどうしよう…」


 はっきりとした年齢は知らないけれど、シーラさん、この世界ではいわゆる高齢出産の部類に入るらしい。しかも初産。

 二人を見送って、私は大きな声で自作鼻歌を歌いながら孤児院に帰る。変な子だって思われるかもなんて、気にしなーい。


「母子ともに健康~♪安産~♪シーラさん、あー--んざん♪赤ちゃん、すくすくすっこやかぁぁ~♪」


 ここで使わずいつ使う。吟遊魔法自称MAX、発動!


 ◇◇◇


 翌日。


 無事に生まれたとアギーラが嬉しい報告を持ってきてくれた。

 母子共に健康。かわいい男の子だって~!

 お名前はライアン君でっす。


 アギーラはすでにメロメロ。

 ちなみにガイアさんはライアン君の一挙手一投足ごとに大泣きしちゃって、全然使い物にならないらしい。


 アギーラは暫く初期学校の聴講をお休みして、連絡役や雑用係に徹するってさ。

 伝書鳩(アギーラ)は時折、学校に立ち寄っては、私に色々と近況を教えてくれる。

 メールとかないからさ、こういう時はほんっとに面倒よね~。


 ◇◇◇


「ライアン君に会いに来て!」って、お呼ばれしちゃった。


 出産祝い、何を持って行こうかな~。え?前に用意してた産着やら腹帯やらなんやらは、事前の出産祝いよ。今回は…お呼ばれ出産祝いなの。


 うーんうーん。


 あ…おむつケーキはどうだろう。


 いやさ、これ聞いて驚いちゃったんだけど…この世界、衛生観念がしっかりしてるじゃないですかぁ。おむつもかなり昔から非常~に良いものがあるのですよぉぉ。


 自分がしていたおむつの事、全然覚えていないけど、きっと私もお世話になったはず。

 不快だったら私、絶対文句言っただろうし、覚えてると思うのよね。

 でも、おむつの事については、おむつしてたって事以外の記憶はない。記憶にないって事は快適だったんだと思うわ、きっと。


 衛生品といえばでお馴染み、下水関連で大活躍のスライムちゃん、ご登場~!ってな訳で、スライムとフワンフワを主材料に吸収シートが出来てるんだって。

 フワンワフめ…ここでも活躍してやがった…。


 さて、おむつケーキを作るべく、おむつを大量購入。

 アギーラからライアン君が使用しているおむつは確認済みよ。

 とは言っても日本みたいに沢山の種類がある訳じゃないから、サイズ展開だけなんだけどさ。


 まずは手袋を作りまーす。

 衛生用品をケーキ型にまとめるのに、素手で触りまくるのは宜しくないからね。


 次に、きれいな布におむつを入れて、大中小のスポンジ部分を作りまーす。それを三段に重ねまーす。側面にはリボンを巻きましょー。


 そして…一番上にはぬいぐるみとにぎにぎ。これがデコレーションになりまーす。


 じゃじゃーん!あっという間に完成~!!


 家族みんなを模したぬいぐるみとにぎにぎ。

 これ、ケーキの上にぎゅうぎゅうに乗せると可愛いの。

 どの布も肌触りの良いものを厳選。そして糸はもちろんお芋ちゃん!


 にぎにぎは…音が鳴るものがドラジャの乾燥豆しか思いつかなかったからやめといた。万が一。誤飲があったら大変だもん。輪っかのやつと棒タイプのやつね。あとは薄っぺらい人形タイプ。全部にお芋ちゃんの糸をふんだんに使ってるから、いつでも清潔。


 でもさ、魔法のなかった地球で暮らしていた者としては、是非是非ちゃんと洗ってもらいたい。それに乾燥魔法も良いけど、日光消毒も大事だと思うのよ。

 だからね、何個もにぎにぎを作ったんだ。右手用、左手用、洗い替え右手用、洗い替え左手用。そしてその予備だ…ってな感じ。


 おむつケーキは完成したけど、みんなにもお土産を持って行かなくっちゃね。


 シーラさんとガイアさんにはケサラの毛を蔦系染料で染めたもので、『腰痛防止』『手首炎症予防』って刺繍したわたくし流のお守り。

 友達がワンオペ育児で腱鞘炎になったのを思い出して作ってみました~。


 アーンド、シーラさんには冬のポカポカグッズ。

 事前に渡したレッグウォーマーの洗い替え用と、ひざ掛け肩掛けになる3WAYな巻スカートを進呈。


 アギーラには、ちょっと日常的にはつけにくいかもしれない10cm幅のバングルを持って行こうと思う。これね、パサラの毛を結構な量使って作ってあるから、俊足力がかなーり強く発揮されるバングルなの。

 私も使ってるんだけど…ほら、浮遊が高速横方向移動に頑張っちゃってるもんで…お遊びで作ってみたら、いやこれもう凄いのなんの…。

 もしかしたらアギーラが俯瞰魔法を使う時も、移動速度が変わるかもしれないと思って。


 ガイアさんも獣化するとめっちゃ早く走るらしいから、ガイアさんの分も作りたいんだけど…獣化すると体のサイズが変化するんだよねぇ。

 獣化に対応できるような伸縮性って、どうやったら出来るんだろう…


 ――ゾクッ


 今、ゾクッてした!?

 これってもしや…

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