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いつメンが増えてゆく…

「ぐるぅぐぅぅ」


 さっきからずーっと唸ってるアギーラが面白い。

 まじワンコだわ~!


「ねぇねぇ、なに唸ってんの?」


「え?あー…無意識に犬感出ちゃうみたいなんだよねぇ、僕。いやさ、魔石の事で考え事してたんだけど…ちょっと聞いてよ」


「聞くだけなら聞くけど…」


 隠し事してるのが面倒くさくなっちゃって、魔石が光って見えるって話、しちゃったんだよ。いやもうアギーラとは一蓮托生だから良いかなって。柿チップス無限量産マシーン…逃がしませんよ…。


 このワンコさん、私の収納魔法の容量が未だに底知らずという事を知ってから、色々な逃亡グッズをくれる。絶対に逃亡妄想で一人盛り上がってるに違いない。


 最初は魔法付与の練習で作ったという食器一式。自動洗浄機能が付いてるという便利グッズで、私も気に入ってるんだ。

 その次は、調理道具一式。これはありがたかった。

 その次は、大量のS字フック。ん?

 その次は、錠前。んん?

 その次は、手錠。んんん?


 アギーラ君、君の逃亡イメージがまったくわかりません。


 私からはお返しに素材違いの作務衣や、おかわり希望を出されていたヘンリーネックTシャツをプレゼント。ヘンリーネックTシャツ、すっごい気に入ってくれてるみたいで、実は何回もおかわりコールを頂いております。


 初期学校が、もはや物々交換の場へと変わっているよな、いないよな。

 昔、通ってたスポーツクラブの更衣室で、常連らしきオバサマたちがこういう物々交換やってた。懐かしいな…。


 そして今日は…なんとハンモックをくれました!

 これは嬉しいけど。嬉しいけど…


「いや…どこに逃げるにしても睡眠は大事だろ?」


 え…木と木の間で眠る感じ?逃亡、そういうイメージ??

 ギョッとしてたら、組み立て式のスタンドもくれると、何故か嬉しそうに言ってきた。

 

 まぁ、スローライフの夢が叶ったら、使ってみたい安らぎグッズではあるけどね。

 庭の大きな木の木陰で、ハンモックに揺られながらお昼寝…ぐふふ。


「いやもう、普通にベッドくれても良いと思うんだけど…」


「そこはほら、男のロマンだから譲れないんだよ。あ…今度テントの試作品作るから持ってくるよ。試作中なんだけど、防水バッチリでワンタッチのやつ。テント内でベッドか…それも良いよなぁ」


「あ、逃亡云々とかは別としてさ、簡易トイレとかは作らないの?」


「…その案、いただきます。何故なら僕も欲しいから」


「だよね~。虫を気にしながら大自然と対峙するのって嫌よね~」


「簡易トイレと柿チップス頑張るからさ、相談に乗ってね。魔石って言うか…雑魔石っていう、いわゆる魔石としては使えないって言われてる石の話なんだけど。もうアイデア枯渇で…」


 雑魔石…読み本で読んだことがあるぞ。

 小型の魔獣から出る魔石で、魔力量が少なくって魔力が不安定だから、魔道具には使えない…みたいな事が書いてあったと記憶。

 なるほどなるほど、アギーラはその雑魔石を有効活用したくって悩んでいらっしゃると。


「これが、雑魔石なんだけど…色々と考えてはみたんだよ。でも、これがなかなか…」


 アギーラがごそごそと重そうな箱から出してきた石を手のひらに乗せる。

 弱弱しいけどちゃんと一つ一つに色がある。一重の輪がぼんやりと光って見えた。


「ねぇ…それがなんだって言われても困るんだけど…魔石が光って見えるって言ったじゃない?この雑魔石もぼんやりだけどちゃんと光ってるの。なんていうか…一重の輪っかみたいな感じ?それでね、これが…こう…二つ三つ…重ねると、その輪が他の石に引っ張られるみたいに少し乱れるんだよ…」


「乱れる?」


「うん。ゆらぎ…揺れるって感じ?一つで使うより、連結させるのが有効かもしれない。それは試した?…よねぇ」


「うん。いわゆる魔道具に魔石を置く台座みたいなものがあるんだけど…そこにいくつかまとめて置いてはみたけど。駄目だったんだよね」


「台座の仕組みはよくわかんないけどさ。それは乾電池をいっぱい使うみたいな感じ?」


 そんな話をしながら石を沢山重ねてみる。

 あれ…ちょっとだけ光が強くなってきてる?


 うーん。わからん。


「魔道具で使われてる魔石の台座素材とかいうの、今度学校に持ってきてみてよ。台座になってるのと、素材そのままのやつ。色々試してみたいからさ」


 ちゃんと光ってるんだから、ある程度の量を以て、つなぎ方の問題をクリアできれば…。


 ◇◇◇


 学校帰り。ルンルンの私。だってだって~、今日もパリパリ柿チップスを大量に手に入れたんだ。

 でもなぁ…そろそろ孤児院のみんなに配るのはおしまいにしないと、保存状態やこの量の乾燥ができる魔法の出どころを不審がられるよね。


 今後はパケパと一緒にこっそり食べる事にしよう。うん、そうしよう。

 もう一枚ちょうだいコールが可愛くて、ついつい沢山あげちゃう。今日もニマニマしながらその姿を激写…って、あれれ…?


「お芋ちゃん…何で居るの?」


 しれっとパケパと一緒に、柿チップスを両手で掴み、大きく口を開けて食べようとしている、お芋ちゃん発見!


「『人里へはあまり寄り付かんもんでな…』とか…言ってなかったっけ…?」


 言ってたよね。人外な雰囲気めっちゃ醸し出して言ってたよね。


<うー…なかなかベルの魔力は心地が良くてな…>


「え…。それはやっぱり名付け…というか、あの小指のアレで何かしら縛られてるの…?」


<違う違う。そういう事ではないのだ。なんというか…久々の無色の力に惹かれてしまうというか…抗いたくないというか…むむむ、なんだろうかのぅ。勝手に上がり込んで…すまん>


「いやいや、ずっと居てくれてもこっちはいいんだけど…人里に寄り付きたくないみたいな話だったから、人とはあんまり関わりたくないのかと思ってたの」


<うむ…昔から、人と関わっても結局碌な事にはならんかったからの。我らもだんだんと興味が失せてしもうたから>


「ふーん。なんだかよくわかんないけど…他の人たちに見つからないようにしていてもらえたら、いつでも自由に来てくれて良いからね」


<それなら大丈夫じゃ。我の姿を見られる者は、そうおらん>


「あ、そうだった。昔は見られる人がいたの?」


<あぁ。強い赤の力を持つ者には姿も見せられたもんだ>


「でも…エルフやドワーフとかの妖精族には姿が見えるんだよね?」


<見える事もあろうが…最近はやはり見える者が少ない。それとは別に…ドワーフからは昔から会うと崇め奉られる…あんまり会いたいくないのだ。やつら、面倒くさい>


「面倒くさいって!きっと火を大切にしてるからお芋ちゃんの事、崇拝してるんだね。ふーん、奉られてるんだ。ちょっと見てみたい気がする…」


<下手をするとあの…奴らのあの洞窟から出してもらえなくなるのである。絶対に嫌だ!>


「でも、みんなに見えないのはなんだか寂しいねぇ」


<そうだな…。まぁ…だから安心してよいぞ。我がここにいる事は、他の者にはわからんだろうからな>


「そっかぁ。歓迎するよ。いつでも遊びに来てよ」


「そうかそうか。それじゃぁもう一枚柿チップスを…」


 おやつタイム、和むわ…。

 収納の中には柿が大量にあるし、まだまだ楽しめるわよ。おほほ。

 いや、柿うんまいのよ。スライス干柿も柿チップスも。

 

 干柿はまだまだかな。のれん状態で部屋の窓際にぶら下げてる。

 カビとかは生えてないみたいだけど…これは時間がかかるから、やっぱりスライス柿に分配が上がるわね。


 そうそう、柿チップス放出の最後に、ドラジャの搾りカスで作ったドラジャ蒸パンに、スライス干柿を細かく刻んで入れて、おやつで出したら孤児院のみんなに大好評だったんだ!もちろんパケパとお芋ちゃんにもね。


 そう、いつの間にかお芋ちゃんが毎日遊びに来るようになっちゃったんだ。

 いつメンが増えてゆく…

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