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差別、ダメ、絶対。

「ベルちゃん…もう一度聞くわ、商業ギルド長としてね。この発見はもの凄い利益が見込めるの。見て見ぬふりの国の人たちは勿論、今まで誰もが手を付けられなかった分野で…その利益をすべてベルちゃんのものにする事ができる。それでも…権利を放棄するの?」


 純人間族主義なんていう人間至上主義の差別話を聞いて、ぷんすかしている所に、サワットさんがこの発見の利益を本当に要らないのかって、もう一度確認してくれる。

 いや、何度言われても破滅フラグは要らないってばよぅ。


 お薬やポーション、薬草茶といったものがあるのに、貴族の一部が変な差別意識を振りかざしてるせいで、不安定期や発情香の分野に関しては、なかなか有効な手立てを見つけられないでいたんだよ。近年では老眼とか膝関節痛とかの慢性加齢痛用の専用ポーションだってあるらしいのに…キィィ、腹立つ~!


「私の意思は変わらないです。いえ、お話を聞いて、余計にそうすべきだと思いました。この件に関しての個人としての利益配当は一切辞退します」


「ご自分の利益を…全て手放すというのですか?こんな場所に連れ出しておいて言うのもなんだが…まだ、ベルさんは子供だ。院長先生、貴方のご意見も伺いたい」


「私から申し上げる事は何もありません。ベルの気持ちは固い。…ずっとベルを見てきて思うんですよ。恐るべき多方面への才能と、その才を持つ者の矜持というものが、生まれながらにこの子には備わっている、と。これが3歳の時だろうが12歳になろうが成人しようが…ベルは同じ答を出すでしょう」


 いやーん、院長先生…ちょっと褒めすぎじゃない?

 でもさ、自分がこの件に関して利益を享受したくない気持ちは嘘偽りない気持ちだからね。

 だって…こんな利権を手にしてしまったら、私、いくら命があっても足りないと思うんだ。

 国家プロジェクト級の富は破滅フラグの香りだって。わかりみ~。


 格好よく、みんなの為に無償で!と、言い切りたいのはやまやまだけど…うん、違う。

 はいこれ、ただ単に我が身可愛さだけっす。


 なーんて冗談はさて置き、この差別話…言葉が悪くなっちゃうけど…胸糞悪い。

 今まで苦労してきた先人たちの慰謝料的な意味合いも含めて、国やら貴族やらにはしっかり責任を取ってもらいたいという気持ちがムクムクと湧き上がってくる。

 難しい話はわかんないけどさ…私、すんごくムカついちゃったかんね!


 ――ピンポンパンポーン

 

 脳内アナウンスが勝手に効果音付けてきたけど、閃いた!

 必死に採算バランスを考えていた私に天啓でーす。

 

 少しでも国に協力してもらえたら良いな、くらいに思ってただけで、採算や予算的な事をずっと苦労して考えて来たけど…。

 やっぱ国からたくさん予算をぼったくってもらって、是非とも甘~い飴を作ろう!

 ほれほれ、みんなを焚きつけてやる!!


 ふはは。ふはははは。


 ◇◇◇


 おませさんの域を通り越しちゃうだろうけど…これは生まれながらの才だと思ってくれるかもしれないし。院長先生のナイスアシスト文言を勝手に歪曲して、こうなったら色々言っちゃうもんね。差別、ダメ、絶対。


「あの…その…国もそうですけど、人間族からの一定数の反発があるかもしれないと思ってはいました…その、獣人族女性にだけに低価格で売る商品を出すとなると…。それに今の差別主義のお話を聞いていたら、私が考えていた以上の反発がありそうで…国や王家からの協力は難しいでしょうか?」


「そこは我々が考えなければいけない話だがね。もしあまり協力的でないとしても…我々だけでも、絶対に普及させてみせる。でもまぁ反発は必死だろうな…下手に横やりを入れられないように、策を練らねば…」


「私、考えてみたんです。ひと昔前に比べて、女性の社会進出が目覚ましいって話を聞いたんですけど…それは本当の事なんですよね?」


「そう、ここ10年~20年、本当に目覚ましいものがあるわ」


「それは貴族女性も?」


「えぇ…社会進出したい、自分も働きたいと思う貴族女性って意外に多いみたいよ。表舞台に立てなくても、裏で活躍している女性はいるしね」


「そこを交渉材料の一つに出来ないかなって思うんです…」


「「…?」」


「昨今の目覚ましい社会進出、しかも獣人族女性は人間族と違って、身体能力の高い人も多いし、視力聴覚嗅覚に優れた能力を持つ人も多い。そしてそれを仕事に生かしている人ももちろん多い…例えば、ギルドの護衛業。貴族女性や商家の女性が旅をするには、やはり女性護衛を必要としますよね?」


「そうね、それは市井の働く女性からの需要も物凄く増えてるけれど…貴族女性なら、尚更同行は必須ね」


「今までは、若い獣人族女性が、自分のテリトリーから出るのってリスクが高くて…例えば遠方の…他国への旅団護衛とか…そういう仕事って請け負いにくかったと思うんです。そういう仕事を受ける方々は、相当な覚悟で挑んでいるんでしょうし。でももし…この薬草茶と飴が実際に使えるようになったとして、自分でも常に持ち歩けて、且つ、大陸のどこの町や村でも手に入る状態になれば…」


「若い獣人女性の行動範囲が広がる…」


「そうですそうです。ひいては貴族女性や商家の女性なんかの行動範囲も広がります。多少腕に覚えのある獣人族の侍女さんなんかも、本来なら移動に同行したくても出来なかったという事もあると思います。こういう事を細かく数値化…お金に換算するんです」


「数値化?」


「お金に換算…」


「はい。これまでの損害とこれからの利益をわかりやすい数値という形で表したらわかりやすいかなって。不安定期の緩和は、絶対にどの国でもかなりの経済効果が望めます。強いては国益というか、経済にとっても明るい話ではないかと思わせるんですよ。実際にその通りですから、そこに嘘はありませんし。まずは差別主義の人達に気付かれないように水面下で話を進める事。難しいかもしれませんが発言権の強そうな…獣人族に忌避感のない貴族を味方につける事。経済効果をわかりやすく数字で算出する事。今後どういう利益が見込めるかという話を前面に出して、お互いに利益がある事だと理解してもらうの」


「「…!!」」

 

「あと、噂レベルでそういう製品が国家予算で出来るかもしれない。それで世界がより豊かになるとかなんとか流布しておいたりして、各国が引っ込みつかなくなる方向へ持っていくのも一つの手ですよね。これ、トイレ紙準男爵がとった作戦を参考に考えたんですけど…えへへ」


「うふ…ふふふ。前から思っていたけれど…本当に末恐ろしいわ。ふふふ…あはは。でも、そういう交渉だったら薬師会だけじゃなくて私達が役に立てる事もあるわ。水面下での色々…私達ね…そういうの、結構得意なのよ。貴族を味方につける事も…不可能じゃない。ベルちゃんとはまだ短い付き合いだけれど…院長の言っている事はわかる気がする。でもベルちゃん…本当に、本当にそれで構わない?」


 笑い方がめっちゃ怖いサワットさんは敵にまわしてはいけない…と思いつつ、私はしっかりと肯いた。


「はい。ギルド…サワットさんにも薬師会の方にも協力をお願いしなければなりません。どうか出来るだけ良い条件で世に出してください」


「それはもちろん全力で交渉に臨むつもりだけれど…他には何か条件は?」


「条件…そうですね。使用する雑草と薬草の納品~製造はギルド、薬師会で管理する事と、権利はギルド・薬師会・孤児院という形で、ギルドや薬師会、あと…できれば孤児院にも、きちんと利益が入る様な仕組みにしてもらうことですかね」


「いや、もしこれが世に出るなら、我々は無償でもまったく構わないのだが…」


「それではダメなんです。無償というのはいつでも投げ出せる権利のようなものだから。ギルド、薬師会には旨味があると思ってもらいたい…是非とも利益を出してもらいたいんです。その為には国から出来るだけ予算を取って欲しい所なんですけど…。あと、私の希望が通るとしたら…香静抑丸は、孤児院の独占納品が希望です」


 これからも色々と薬師会の人達と連携して、効果効能を試して貰うことになるけど、香静抑丸が鍵になる事はもう間違いがないと思ってる。しかも、名もなき雑草花から名前を登録したばかりの花で知られていない存在。


 個人的に国家プロジェクト級の富を受け取りたくはないけどさ、孤児院への優遇だったらアリだと思うの。

 まぁ、地味にゲットできる富ならば、私もありがたく頂きますよ。

 甘味料レシピとかね~。

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