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30分経ったものがコチラです

 無色魔法の一つ、『収納』。

 すっかり忘れてたのは私が悪いんじゃないんだもん。なんやかんやと忙しすぎて、自由な時間がなかなか取れない毎日。それなのに子供だから、すぐ眠くなっちゃう…自然の摂理が悪いんだ。


 いやさ、あったら便利なのはもちろんわかってたんだけど、私って孤児院に暮らす女児じゃないですかぁ。


 収納…必要かい?

 って、話。なんですよぉ。

 なかなか使おうって気が起こらなかった原因は。


 初期学校も、孤児院と同じ敷地の教会の一部屋で授業だし…しかもこんな魔法が使えるなんて、絶対秘密でしょ?

 ほらね、使えるシチュエーションが全くないの。

 …言い訳は以上です。 


 この収納って、どのくらい入るのかしら。

 どっかに許容量とか、書いてないかな…ないよね…。

 とりあえず今日摘んだ雑草は全部入ったから良しとしよう。

 あ、いかんいかん。魔力を確認しとかなきゃ…。


 うん…減ってねぇずら。


 ◇◇◇


 さて、料理の臭み消し&味付けのレパートリーが少ないこの世界で、少しだけお料理の味を複雑にする事が出来そうなハーブ(風)ブレンドを作る事と、相性の良さそうな雑草や花なんかをブレンドしての、お茶っ葉作り。色が綺麗で、且つ、美味しい茶葉が出来ないかなぁという、二つのまぜまぜ案件を実行する時がやってきたぜ…苦節、数か月…短いっ!


 まずは自室で出来るハーブ(風)ブレンド作りから。

 なんかおしゃれ生活っぽいな…自室でハーブブレンド作りだって。うへへ…。


 ゲットした雑草の鑑定情報に『大量摂取は毒』って、けっこうな打率で出てきたんだけど、大量ってどの程度なんだろう。例えばシナモンとかさ…特にカシアシナモンなんかは、産地によっちゃ一日の摂取許容量が、1グラム以下のものもあるって聞いた時は、すっごく驚いたもんなぁ。

 これは実験あるのみなのかと思ってたら、鑑定鑑定鑑定…ってしていくと、自ずと答えが導き出されていく事を知りました。求めよ、さらばほにゃららら~、ってなもんよ。


 チート様に感謝しつつ、一日に100kgとか食べなければ問題がないものばかりだったので、安心してハーブ(風)ブレンドを作る。とにかく見つけた色んな乾燥ハーブ(風)を刻んで、まぜまぜするだけ。


 生活魔法の一つである乾燥が使える牛人族のご婦人、おっかさーんに頼もうと思ったんだけど、なんとアギーラ様が生活魔法、超お得意だったの。くっ、羨ましい。

 しかも生活魔法をいっくら使っても魔力が1しか減らないんだって。魔力量、超大量なのに…。

 生活魔法、使いたい放題だよ。くっ、羨ましすぎる。

 

 アギーラが、学校でパパっと乾燥してくれるって言うもんだから、お願いする事にしちゃった。

 でも、さすがに雑草まみれな大荷物では、学校まで行くのが大変。大量の草を背負って学校に来る子供。うん、無理。

 だから件の収納で持っていく事にしたんだ。


「あれ?今日は乾燥したい雑草を持ってくるって言ってなかったっけ?」


「うん!持ってきたよ。ここに出すから…」


 ――ポスン


「うわっ。そうか、これがマジックバッグみたいな魔法か!」


「そうそう、前に話した収納っていう魔法」


「生活魔法が羨ましいとか言っておきながら、これ最強だよ~。生産職にとっては羨ましすぎる。そうそう、知ってるとは思うけど…マジックバックってすっごい高価なんだからね。人様になるべく見られない、知られない方が良いのは…わかってるよね?」


 心配性なお母さん、違う、アギーラに雑草を大量に乾燥してもらう。乾燥しながらマジックバッグの原料であるという魔獣、頬袋ビッグ栗鼠の話をしてくれたんだけど、それはまぁ驚愕のお値段だった。

 買取金額は時間経過の有無で違うんだけど、何と頬袋の左右でそれが決まるんだって。さらにサイズでも金額は変わっていくらしい。


 右の頬袋が時間経過有りで金貨5枚(日本円で約五百万円)から。そして左の頬袋が時間経過無しで金額はなんと時価。これ、買い取り金額で、だからね。商品になったら、一体おいくらになるんでしょうか…。

 私の収納は時間経過が無いから、左の頬袋と同じかぁ…買い取り金額で、すでに金貨5枚以上確実な時価…うわうわうわ~。


 でもまぁ、お芋ちゃんのおかげで今の私には買えるっちゃ買えるけどさ、あれは別なのよ。って言うか、あれもおかしいんだから。

 私の至極まともな金銭感覚からしたら、うわうわうわ~、なのよ。

 

 庶民は時価提示にビビるもんなの。寿司屋とか天ぷら屋とかで『時価』ってあると、帰りたくなるでしょ?そういう感じよ。


 いや待て。絶対知られないようにしなきゃって思ってたけど…買取金額が時価ではあるけども、この世の中に存在してるって事は、孤児院を卒業して一人立ちした後なら、万が一バレたとしても、マジックバックを持っているって言い張れば良いのか。何で今まで思いつかなかったんだ!


『他人には見せてはならないという一族の掟です』とか言っちゃったら、現物を見せろって言われる事もないんじゃない?

 うんうん、我ながら良い考えだ。


 一人妄想の海に沈んでニマニマしてたら、あっという間に大量の乾燥ハーブが出来上がっていた。なんて楽ちんなんだ!他力だけども!!


 ◇◇◇


 そして初期学校の授業の合間で、ごっそり乾燥をかけてもらったものが、こちらです。


 料理番組の『30分経ったものがコチラです』的に作業ができるんだから、有難いわ~。他力だけど。

 乾燥するにしたって冬場の天日じゃ、結構時間がかかるし、おっかさーんにはこんなに大量には頼めないもん。


 それにこの生活魔法の乾燥って、もの凄く優秀なの。天日とはまったくレベルの違う、乾燥状態を成し遂げてくれるのよ。何が違うって、日持ちが全然違う。

 どういう仕組みなのかはわかんないけど、この世界では日持ちする事って超絶大事なんだから。

 天日は天日でプライスレスの良さがあるけど、こういうものの乾燥には生活魔法がやっぱり最強!


 アギーラにも出来上がったらお裾分けしなくっちゃ。

 お宅にお邪魔した時、ガイアさんが買ってきてくれたお惣菜、もの凄く魔獣のお肉のレパートリーが豊富だった。

 色んな魔獣の肉を食べる事も多いだろうから、食卓ハーブ塩っぽく使って貰うのも良いかなって思ってさ。


 そう言えば塩…海塩っていうんだけど、名前の通り海の塩水を利用して作る塩が、この世界での塩なんだけどね。私の住んでるこのユスティーナ国は、海に面してない国だからって事もあって、海塩が結構なお値段なのよ。

 塩っていう生命線が他国に握られてるってどうなんだって思うけど、そこはぼんくら王家がちゃんと仕事してくれてるんだと思いたい。


 仕事…してるよね?


 実は塩の価格が年々つり上がってるらしいんだ。だから、ちょっと不安ではある…ぼんくら王家、ファイト!


 お値段の事を考えても、血圧の事を考えても、塩を上手くこのハーブ(風)ブレンドと組み合わせ出来れば、海塩の使用量を減らす事が出来るかもしれないし、さらにはお料理の味にも変化が…良い事づくめの期待がある。


 さてさて…どうだろう。

 どれを入れても大丈夫だから、あれと、これと…まぜまぜ…。ちょいと魔女っ娘気分。


 ぐふふ。

 ハーブ風ブレンドの出来上がり!

 鑑定をかけて…。


 うん、大丈夫。

 大丈夫なものと大丈夫なものを混ぜただけだから、大丈夫だと思ってはいたけど、一応確認するのは大事なのです。


 まずは海塩なしで、自分の食べるスープなんかに少し入れて試食してみよう。出来ればレシピを売りたいけど…こういうのって需要があるかなぁ。


 少なくとも私は欲しいけど、自分でずっと作るのって面倒くさい。

 私が大人になる頃に、いつでも誰でも手軽に買える商品になってくれてるのが、ありがたいんだけどな。

 こういうのって、どうやって浸透させていくかが課題よねぇ。

 

 さてさて、考えてる暇はない。お次はまぜまぜ第二弾、お茶っ葉作り、いってみよー!

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