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こ、これは…完全なるぼっちではないか…!

 10月に入って二週目。

 とうとう、初期学校へ入学する事になりました~!パチパチパチ。


 青・白(午前のみ)・黄が各年度①

 赤・白(午後のみ)・緑が各年度②


 こんな感じの曜日分けで授業が始まるの。だがしかし!開けてびっくり、10月から一年目①の授業を受けるのは私だけだった。

 4月にみ~んな入学しちゃったって事。魔力の覚醒が遅かった子はここらで私一人だったというね…。


 農家が多いような町や村だと、10月~3月の授業で集中して学ぶ子もいるらしいけど、ミネラリアは都会だもんなぁ。

 こ、これは…完全なるぼっちではないか…!


 この状態って…夕方のニュース番組とかで見たことあるぞ。

 特集『島で一人の小学生』。

 ほら、生徒一人と先生一人の授業風景的な。休憩時間も先生が一緒に遊んでくれる的な。

 人口の少ない離島に暮らす子供のような学級生活を、まさか自分が体験できるとは。


 日本みたいに豊かな学習体制って訳でもないから、一人なんて贅沢でもったいないなって思ったけど、途中で大人の聴講が入る事もあるから、一人であろうとも絶対に授業はするらしい。真面目かっ!


 授業内容は、

 ・読み書き計算

 ・一般知識とマナー

 ・魔力操作と基礎訓練


 小学校換算で考えると、週五日として1.5年分しか学びの期間がないから、必然的にこれが全学年の授業内容の全てって感じなんだけどね。


 諸先輩方の情報によると、魔力操作と魔力循環の基礎訓練の授業は個別のスキル学習以外、継続は力なりで、同じ基礎訓練を卒業まで繰り返すらしい。

 個別の魔法やスキル学習が不要なワタクシのような生徒は、一年目①で習った事をただただ繰り返して卒業していくのよ。


 私の場合は魔法やらスキルがないからじゃなくて、秘密だからだけどさ。

 人生がかかってる“バレたら終わり”的なゲームに強制参加させられてる感。


 呼吸と同じように魔力循環が出来るようになると、後で魔力が増えた時にも楽だし、魔力詰まりも起こりにくい体になるからって、先輩方からもサボったりしないようにって言われてる。

 

 私は魔力量は少ない。それに無色魔法に関しては魔力無関係で無尽蔵。正直、魔力詰まりとかって関係あるかないかわかんないけど…怖いからきちんと基礎訓練はするよ。

 だって魔力覚醒も遅かったし、詰まったら嫌じゃん。詰まる詰まるって…なんか便秘っぽいしさ…


 ◇◇◇


 青の日。一年目①の授業の日。

 青の日は読み書き計算の授業だって。


 先生は優しそうなおじいちゃん先生でした。

 最初の授業はレベルチェックから。


 前後期を同時履修するって初期学校側に申し入れた時に、学力レベルは全く問題がないという事を事前に話してあったらしく、なんかちょっと適当だった。

 

 レベルチェック後、どれもこれも必要ないって言われちゃった…初期学校分全部。

 『情報を制する者は異世界をも制す』のスローガンを掲げて、情報を少しでも得る為に文字の習得をすべく、ちっちゃな頃からガツガツしまくってたから…まぁ、そうなるわなぁ。


 おじいちゃん先生が困っちゃって、何か学びたいものがあれば、それを教材にするって言ってくれたから、少し難しい読み本なんかがあったら、それを教科書にして読み書きの訓練をしたいって言ってみたのよね。


 今、興味があるのは魔石や地理、魔法と魔力なんかの事だと伝えて、自分は使えないけど、どんな魔法が世の中にはあるのか、すっごく興味があるんだって言ってみたの。

 そうしたら教会の読み本から見繕ってきてくれる事になったんだ~、ラッキー!


 あとは、マナーの授業と被るのかもしれないけど、丁寧な言い回しの言葉遣いが学べる読み本があれば、それも読んでみたいと伝えてある。

 これはね、働くようになったら役に立つかなって。

 マナーを知っててフランクってのと、無知で無礼講になっちゃってるのとは、雲泥の差だと思うんだ。


 最初は読み本が読みたいだけの気持ちだったんだけど…このおじいちゃん、少しお話させてもらっただけでわかる。知識量が凄そう。

 だからさ、色んな知識をご教授願おう作戦も実行する事にしたの。


 もし、聴講の人が来たら、逆にその人の学びたい事をメインにするって事にして、私のおおまかな授業内容の組み立てが終わったんだ。

 最初は特集『島で一人の小学生』はちょっと寂しいかなって思ってたけど、4月の授業に出遅れた事は、ある意味、大正解だったのかも。


 ちなみにアギーラは一般知識とマナーの授業に聴講希望を出してると思う。

 恐らく私と似たような感じっぽいんだけど、魔力操作と基礎訓練は色々都合が悪い事があるらしい。

 バレたらお~わ~り~♪的な何かを、アギーラも背負ってるっぽいからね。


 なんでも転移ボーナス特典!?で読み書きは初めから出来たらしいし、現役高校生だったアギーラに足し算引き算な授業は辛い。

「読み書き計算はさすがになぁ…」って言ってたから、選ぶなら一般知識とマナー、一択なんだもん。


 でも、意外に読み書き計算の授業が面白い事になりそうだから、こっちに鞍替えして貰っても良いかもしれないな。一般知識とマナーの授業がイマイチな感じなら、アギーラに伝えてみよう。


 ちなみに一般知識とマナーの授業は、ギルドが許可した冒険者が時折、何人かまとまって聴講するらしく、その場合はギルドから監視員が一緒に派遣されて来るらしい。

 各ギルドは自分の所で登録した冒険者しか対象にしてないから、身元と素行に問題がない人を送ってくるんだけど、責任問題にもなるから監視付きなんだってさ。


 マナーのなってない輩とか荒くれてる輩、色々と問題行動をするとんでもない輩は、結局のところ高ランクにはなれない仕組みな冒険者ギルド。

 だけど、そういう人を見限っちゃうと、とんでもない悪党集団が出てきかねないから、ちゃんとチャンスは提供するって感じなんだろう。


 初期学校の聴講だけじゃなくって、ギルド独自でも講習をこまめに開催してるらしいし、そこら辺はすっごく手厚いんだって。

 もしも裏ギルド的なものが存在する世界だったら、モヒカンでヒャッハーって叫ぶ人が出てきちゃうかもしれないから、ギルドには是非頑張ってもらいたい…。


 ギルドのランク上げにマナーが必須って事もあって、幼い頃にまったく座学をスルーしちゃってた冒険者が、とぼとぼ受けに来るのは日常茶飯事らしい。

 高額な依頼ってお金をいっぱい持ってる人からの依頼じゃない?それすなわち貴族や大商人からの依頼って事。


 最低限のマナーも身に着けてない、話の席にもつけない様な輩には、そういう旨味のある仕事がまわってこない。

 だから冒険者もちゃんと学ぶらしいよ。生活かかってるもんね。


 ちなみにシーラさんの旦那さんであるガイアさんは、Sランクの冒険者なんだって。

 その一つ上はSSランクっていう最高位で、この大陸全土にも数人しかいないらしいの。その一つ下のランクらしいから…すっごい冒険者だったんだよ!


 キャー、ステキー!って言いたい。いや…言いたかった…。

 なんかさぁ…調子っぱずれな唐揚げ鼻歌を聞いちゃったからか、シーラさんへの金魚の糞姿を見てしまったからか…Sランクな感動がちょい微妙~に薄まっちゃったのよね…


 ◇◇◇


 白の日の午前中。

 ドキドキの魔力操作と基礎訓練の授業がやってまいりました。


 白の日の午後は、一年目②の魔力操作と基礎訓練の授業だから、今日は終日で魔力操作と基礎訓練の授業になるんだ。

 バレたらお~わ~り~♪って自作のサウンドロゴっぽい音が絶賛脳内リフレイン中。


 ――ドキドキ


 こちらはおばちゃん先生だった。

 魔力量とスキルを自己申告した後は、


「これを一つ、上に放り投げてみましょうねぇ」


 ………。


 お手玉っぽいもんを渡されたっす。

 お手玉っぽいものを一つだけ渡されて、右手で上に放り投げて左手でキャッチしろって言われたっす。


「あら、あなた上手ねぇ。本当に初めてなのぉ?」


「うん!」


「じゃ、これはどうかしら。二つ使って…」


 ………。


 完全なるお手玉。

 昔、おばあちゃんが歌ってたお手玉ソングに脳内リフレイン音がハイタッチしながら選手交代してゆく。

 お手玉なんて二十年近くやってないのに、結構手が覚えてるもんだね。

 たぶん三つでも出来る気がする…あれ、これ…た、楽しくなってきちゃった。


「あらあらあら~、この循環訓練をまずは半年かけて出来るようになりましょう。それが出来たら後はひたすら無意識で行えるようになりましょう。…っていう授業なのよぉ?これってね、魔力循環にとぉ~っても効果があるの。もう出来ちゃってるから…あなた、あとは無意識でも出来るくらいになって頂戴」


「無意識で?」


「そう!これがと~っても魔力循環がスムーズになる一番の方法と言われているのよぉ。魔力循環を息をするのと同じように無意識に出来るようにしておくのが、初期学校での目標なんですからね。とにかく授業中はこれをひたすら回して循環訓練をしている間に、スキル別に呼ばれた子供が別途訓練をしていくの。でも、あなたは一人だし…今回は聴講の大人もいないしねぇ…」


「私、魔力は少ないし、固有スキルはないの。職スキルの『裁縫』と『料理』だけ…」


「うんうん…今は魔力が少なくても、大人になると増えるかもしれませんからね。魔石に少し魔力を流せるような訓練だけは、しっかりとお勉強していきましょうねぇ」


 あ、なるほど。庶民の味方、生活魔法がまったく使えなかった悲しみからやさぐれて、考えるの放棄してたけど、魔道具のスイッチオン的な作動には魔力が必要な物があるんだった。

 ステータス画面に表示される魔力量は少ないけど、訓練しておいて損はないな。

 

 大人になるまでに魔道具の一つや二つは可動させる事が出来るようになってたい。

 …ちょっとヤル気でてきた。


「はい!」


「良いお返事で結構。これから初期学校の授業では、この玉をグルグルと回す事になりますからねぇ」


 はい!って元気よく言ったけどさ、まさかのこれだけ…なのよね…。


 ………。


 おらのドキドキを返せー!

誤字報告&ブクマ&いいね&評価、ありがとうございます!

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