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『冷え』は大敵!

「時間が足りないなぁ。もうちょっと頻繁に会えると良いんだけど…ベルの知識をもっと拝借したいよ」


「あ!そうそう、お誘いがあったんだった。アギーラも初期学校に通わない?」


「僕、見た目はさておき、一応大人なんだけど…」


「いやそれ知ってますわ。だけどね~、身元が保証できれば初期学校って聴講できるんだって。子供の頃に魔力がほとんどなかったのに、大人になって急に魔力が高くなっちゃった人とかが、たまに受講するらしいの。あと、マナーを学びなおしたい冒険者とか。あとは読み書き計算を必要に駆られて、的な人達も来るんだって。一般的教養とマナーなんかの授業だと、この世界の情報も手に入りそうだし」


「あ、なるほど」


「私さ、みんなより魔力覚醒が遅かったもんで、10月からビッシリ初期学校に半年間通うんだよね。普通は週2.5日なんだけど、最初の半年だけ週5日通うの。だからさ、聴講生的な感じで顔を出して貰えたら、学校で話が色々できるかなって」


「それ良いかもしれない…でも、魔法はちょっと触れられたくないし、読み書き計算もちょっとなぁ…そうしたら一般常識部門かな…」


「マジカルアギーラは相当なんだ?」


「うん。いや、マジカルアギーラって言うのはやめて」


「ふふっ…。まぁ、魔法に関しては私もちょっとねぇ…はぁぁ」


 ――トントントン


 お互いため息をついた所で、小屋のドアがノックされた。


「お二人さーん、そろそろ町へ戻りましょ~!」


「「はーい!」」


「ベルちゃんも、うちで夕ご飯を食べて行ってね。唐揚げをたくさん食べちゃったからお腹空いてないかもだけど。たまには町の料理も…料理スキルがあるなら、興味があるんじゃないかしら?」


「いえいえ、そこまでご迷惑は…」


「だって、うちには赤ちゃんの下着を見に来てくれないと困るわ!そのついでだからさ、ね?」


「そうだよ、町で売ってる惣菜だよ!ベル、絶対興味あるでしょ~?」


「うぅ…。じゃぁ、少しだけ。あの…お気遣い、ありがとうございます」


 ガイアさんがお惣菜を買ってくると言って、町の店舗兼自宅へ一緒に戻ると、また一人で外へと出て行った。


 赤ちゃんグッズの色々を、ああでもないこうでもないと言いあって決める。

 素材はアギーラが買って届けてくれるって事になったから、それまでに編み棒で色々作ってお祝い第一陣を渡したい。

 脳内がToDoリストでいっぱいだよ!


 ガイアさんが戻ってきて夕食になった。

 町には市場の露店やら屋台やらも含めて、惣菜を売るお店がたくさんあるんだって。

 ふんふん…勉強になるなぁ。


 孤児院では肉と言ったらほぼほぼルコッコ。魔獣らしきお肉とかは稀にしか出ないし、名前もわからないからね。

 え?鑑定しろって??

 …いやでもさぁ、鑑定して余計な情報とかあったら、絶対食欲失せるじゃん。料理スキルさん、お喋りだし…。だから、余計な鑑定はしない事にしてるの。


 考えれば考える程、孤児院での食事しか食べてないのに、レシピの冊子を出すなんておかしいじゃないか?って思われなかったのは凄い事だと思うわ。

 稀にスキルが強く作用する人がいるって事が、この世界のセオリーだった事が功を奏したという感じなんだけど。

 稀にだけど先人が居たという事実。これ大事。


 あ、これ…黒ソースだ!あんまり孤児院では出ないけど、食べた事はあるのよね。

 たま~に出てくる御馳走的な位置づけだよ~美味し~!

 ソースが御馳走って言うと、なんか凄い話だけどさ…味のレパートリーが少ないこの世界、紛れもなく黒ソースは御馳走なのよね。


 ぐぬぬ…このレディーキラーなんとかの焼いたお肉も、すんごく美味しい!

 こげなもん食べたら、孤児院に戻れなくなってまうやないか…。


 居心地が良いご家庭だったもんで、すっかり遅くなっちゃった。

 そう言えばアギーラがベルって呼び捨てで呼ぶからか、帰る頃にはシーラさんもガイアさんも“ベルちゃん”から“ベル”って呼び方に自然に変わってた。

 なんか…こういうの、ちょっと嬉しいよね。


 そう言えば…全然関係ない話なんだけどさ、町に入るのもノーチェックで東門を通過したんだよ。

 これって大丈夫なのかな…


 ◇◇◇


 翌日。

 若いウェービーメェメェだけの毛だけで紡がれた毛糸を使う時が、とうとうやってきました!

 シーラさんが妊娠してるって聞いた時にピーンときたんだもんね~。


 今日は忙しいの。なんてったって編み物と蔦系染料での毛染め、両方しなくっちゃなんないんだから。

 私はちゃっかりアギーラから小さな桶もゲットしてきてる。こういう事は抜かりないのです。


 まずはちょっとだけ、編み棒を使って毛糸を編んでみる。

 編み物、みんなに広めるには時間が足りないから、一人でこっそり。

 編み物って基本をマスターしちゃえば簡単だけど、まったく知らない人を一から教えるには今は時間がない。

 だってだって、学校もあるしパトナと遊ばなきゃいけないし、まずは最優先でシーラさんグッズ作りたいし、ケサラとパサラのフッサフサをフッサフサしなきゃいけないもん。あとは薬草茶にも挑戦したい。 

 あ、ラナと森に行く約束もある。ほらね、色々あるんだよ、子供にだってさ…。


 でも、いずれは裁縫親衛隊の皆さんにも冬の手仕事の一環で覚えてもらえたら良いな。

 孤児院じるしのマフラーとか、ミトンとかって…良くない?

 孤児院じるしなんてもんはないけどね…。


 うわ~、編むと違いがわかる。

 肌触りが凄く良いし、なんたって吸水性が違いそう。

 これなら汗疹とかも気にせずに使えるはず。


 普通のウェービーメェメェの毛糸も、毛糸にしては綿パイルっぽい雰囲気だから、もの凄く期待はしてたんだけど、これなら十分。


 さっそくね、シーラさんへの贈り物第一弾、腹帯を作るよ。

 まぁこれ、ざっくり言うと腹巻。


 これから寒い時期になるから冷え防止にも、そしてもちろんお腹を保護する意味でも、十分に役に立つと思う一品。

 普通のウェービーメェメェの毛糸でも作っちゃおっと。

 お芋ちゃんの糸を一本だけ混ぜる。お守りにね。

 こっそりじゃないわよ、ちゃんとところどころにお芋ちゃんの糸を使う許可は得てるんだもーん。

 ガイアさんがめちゃくちゃ喜んじゃって、シーラさんが断われなくなったっていう経緯で言質とりました!


 お腹ってどのくらい大きくなるのかなぁ。こちらの人間族の方々は地球でいうところの欧米系な感じの人達に体型も顔つきも似てるかなって思うんだけど…妊娠の腹周りは知らんもん。全然違ってたたみ二畳サイズになっちゃったり…しないわよね…?


 少しだけサイズ調整が出来るような作りにはしておこう。

 本当はベルトタイプにしたかったんだよ…でもマジックテープとかないし、便利な作り方が思いつかなかったんだ。


 ベルトタイプじゃないから産後の骨盤ベルトのようには使えないけど、普通に腹巻としては使える。

 『冷え』は大敵!


 継ぎのない輪編みが出来るように、玉のない両側が尖った編み棒も作って貰ったからさ、これでちょいちょいとね…。

 腹巻は単純な輪編みだから、腕慣らしにもちょうどいい。


 良かった~、手が覚えてるよ。

 うんうん、大丈夫そう。

 

 レッグウォーマーも作ろうね~。

 大事な事ですからね、二回言いますとも。

 『冷え』は大敵!

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