表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/225

まぁ、どっちにしろワンコ系だしね。

 シート用のクッションの改善点を確認してたら、隣の小屋からシーラさん達がお茶を運んで来てくれた。もちろんお茶を運ぶのはガイアさん。


「お気遣いなく!あの…染料を譲ってくださって、ありがとうございます。今後も入用なものがあったら是非相談させてください」


「良いのよ~。私達なら伝手もあるし、欲しいものがあったら相談してちょうだいよ。これはたまたま以前使ったから持ってただけで、そうそう使う物じゃないし、残り物だから気にしないで使ってね」


「ありがとうございます。あの…その…さっき伺ったんです。赤ちゃん、おめでとうございます!」


「ありがとう!まだお腹が全然目立たないもんだから、言われないとわからなかったでしょ。今日はベルちゃんが来てくれたから、良い気分転換ができて嬉しいのよ」


 人差し指をクロスさせて、バッテンのような形にしたアギーラが『編み棒は作っとくから~』って口パクで言いながら、シーラさんの周りをウロウロしようとするガイアさんを、隣の小屋へと引っ張って行った。

 あ、ガールズトークね。うん、わかってるわかってる、ガールズなトークが出来るかどうかは別として、わかってるよ。


「いつ頃生まれそうかとか…わかるんですか?妊婦さんが周りにいた事がなくって…知らない事が多いの」


 やっぱり十月十日的な感じ?


「妊娠はね…人間族と他の獣人族との子供となると、どちらの血が濃い子供が生まれるかによって出産時期が違うの。獣人族は種族でも時期が変わってくるし…。人間族だとまだまだ先なんだけれど、ガイアの血が濃い子供だったら…あと一、二か月ってところじゃないかしら…」


「人種や種族によって出産時期が違うんですか?でも…あんまりお腹が目立ってないから…」


「そうなのだけれど…あんまり関係ないらしいわよ。臨月に急に大きくなる人もいれば、妊娠が周囲にわからないくらいのお腹のままで出産を迎える人もいるし。だからね、こんなに目立たないからと言って、出産日がまだまだ先の人間族って訳でもないというか…」


「へぇぇ…でも時期がわからないと、色々とご用意とかも大変ですねぇ。お仕事の調整だって…」


「ふふふ。出産ってそんなものだから仕方がないわよ。でもね、ガイアも時期がわからないからってやきもきしちゃってるみたいで…毎日こんな感じで、アタシの周りをウロウロしてるの。しかもすっごい過保護になっちゃって…」


「へへ。ごちそうさまです」


「あらやだ、惚気た訳じゃないわよ!本当に過保護すぎちゃって…せっかく近くにダンジョンが出来たのに、潜っても日帰りや一泊で戻って来ちゃうし。それにね、他国への支援活動も断わってるらしいから…ちゃんと仕事をして欲しいのだけれど…」


「他国の支援なんかもお仕事にあるんですね。冒険者さんって色んなことをするんですねぇ」


「なんでもユスティーナ以外の国じゃ、瘴気が異常発生してるらしくて…結構大変らしいわ」


「少し話を聞いた事があります。今までにないような、巨大な瘴気がたくさん発生するようになってきてたって…」


「そうなの。だから、ユスティーナの冒険者もお手伝いに行かないといけないのに、ガイアったら『絶対に行かない。無理矢理命令されたら冒険者を辞める』って言ったらしいのよ…」


「あー。でも、仕方がないですよ…心配ですもんね」


「うん、私もわからんでもないのよ?でもね…ギルドも他国行きに振り分けるのは諦めて、例のダンジョンに潜る若い冒険者達の見張りみたいな業務を、指名クエストにして入れてくれたり…なんだか迷惑かけちゃってるみたいで…」


 ミネラリアの町の近くに出来たダンジョンはすっごく大きなダンジョンで、データ…地図や魔物の生息区域の情報なんかも、まだまだ少ないんだって。

 そんなダンジョンに潜るには明らかに力量不足なのに、勇んで入ってくる若い冒険者が後を絶たず…無駄死にを防ぐ為にも見回り必須だって事になって、ギルドがベテランの冒険者達に見回りを頼む事態になってるらしいよ。

 冒険者って自己責任のイメージが強かったけど…色々とギルド側もフォローしてくれてるんだなぁ。


「きっとギルド側も辞められちゃったら困るんですね。ガイアさん、強そうだもん」


「ふふふ。でもさ、そのガイアが妊娠発覚であんなに右往左往するとは思わなかった…。最初は面白かったんだけどね。アタシ達はね、まったく子供の事なんて考えてなかったの。夫婦の魔力量に差があると子供は授からないって昔から言われていたし、実際そういうものだったから。ガイアが凄い魔力量でね、私は少~しだけなのよ…だから…。しかも、しかもよ!こんな年になってから妊娠するなんて…思いもしなかったのよぉ!!」


 お茶を入れ替えようとするのでお手伝いにと立ち上がると、頼むからこれくらいさせてくれと断られてしまった。

 少し顔が赤いけど、「このこのぉぉ、お・盛・ん・ねッ!」とか…言えないしなぁ…6歳やし…。でもこれってちょっとガールズトークっぽいかも。アギーラ、やったぞ~!ガールズトーク、完遂(自称)!!


 顔をパタパタ仰ぎながら戻ってきたシーラさんが言うには、普段はガイアさんがあれもこれも全部してしまって、ちょっと困ってるらしい。ガイアさん…。


「初産でアタシみたいな年齢の女性って、人間族ではなかなかいないのよ…いや獣人族でも少ないでしょうね…。だから余計にガイアが不安がって、あんな心配性になっちゃってるんだと思うんだけど…」


「でも側にいたいって思う気持ち、わかるなぁ。他国に行っちゃったら、すぐには戻って来られないですもん」


「そうね…感謝しないとダメよね。そうそう、感謝と言えば…アギーラがうちに来てから、なんだかやけに色んな事がスムーズに進むようになって…今の店舗も、ずっと引っ越したいって思ってたのに、アギーラが探し始めたら、トントン拍子で良い間取りの貸家が見つかったのよ。近くにダンジョンが出来ると、冒険者に店舗だろうと倉庫だろうと借り上げられてしまって、早々に埋まってしまうだろうからって諦めてたのに…。それで少し落ち着いたと思ったら、今度はこの妊娠でしょ?なんだかねぇ…アギーラが幸運を運んできてくれたとしか思えなくって。だから…アギーラにも感謝してる」


「あはは、本当にアギーラが赤ちゃんを運んできたのかも!」


 犬の妖精だもん。ありえるかもよ~?


「そうなのそうなの!犬人族は多産で安産の人が多いからって…妊娠や安産をイメージさせる種族って言われて、子供が欲しい人なんかは犬人族にの友達に、お腹をさすってもらったりしてお祈りしてもらったりするのよ。薬師さんも『きっとアギーラが子供を連れてきたんだろうね』って、言っていたわ」


 え…そうなの?日本の事を思い出して言っちゃっただけだったのに。この異世界も(犬人族)が、安産祈願的な感じのポジションにいるとは…。


 アギーラは犬の妖精、クー・シー。

 シーラさんも私もお互いその事は知ってるけど、私がその事を知ってるってシーラさんは知らないから、犬人族だって言ったんだろうな。

 まぁ、どっちにしろワンコ系だしね。


 むしろ妖精の方が御利益がありそう。

 いや、冗談っぽく言ったけど…本当にアギーラが運んで来た気さえしてきた…。

 そうだ、アギーラで思い出した!さっきした話をしなくっちゃ。


「あの、さっきアギーラと相談したんですけど…良かったら赤ちゃんの下着なんかを…お祝いに作らせて貰えないでしょうか?へへ、スポンサーはアギーラなんで、二人からのお祝いって事で…」


「え?ベルちゃんが作ってくれるの?」


「はい。私、孤児院で厳しく裁縫を仕込まれてますし、職スキルに『裁縫』があるので…そんなに酷い事にはならないと思います…よ…?」


「あはは、酷い事なんて!そんな事、思わないわよ~!!アギーラから色々聞いているのよ?クッションや…背負い袋の話なんかも。すっごくアギーラが自慢気に背負ってるんだから…あの小さい鞄も機能的で素敵だしね。あれを見たら裁縫の腕が一流だって私でもわかるわ!でも良いの?正直、すっごく嬉しいのだけれど…」


「じゃぁ、是非!」


「アタシはさ、魔道具師やってるし手先は器用な方なんだけど…どうも料理とか裁縫とか掃除さ…そっちのほうはてんで向いてないみたいでね…。ボチボチ買い揃えないとなって思ってたところなの。でも、普通は家で作る物らしくて、注文品になるって。ガイアは店ごと買いそうな勢いだから下手に相談も出来ないし、どうしようかなって思っていた所なの…」


「じゃぁ、私に任せてもらえませんか?色や素材なんかもご希望をお伺いしたいです。下着なんかは孤児院でも使ってる赤ちゃん着の形であれば、すぐに作れるけど…でももし、ご希望の形があるなら…たぶん、それに似せた感じにも作れると思うの」


 そう、私の裁縫の腕はさらに上達の一途だからね。

 最近じゃ、作られた物をみるだけで、脳内に型紙が展開されるようになってしまったし。

 で、脳内に型紙が展開されれば、それは作れるという事で…どこかで現物を見る事さえできればきっと作れると思うんだ。

 このスキルというか、とんでも能力…裁縫親衛隊の厳しい指導のお陰って事にしてるんだけど、孤児院卒業までこの言い訳で通用出来るのかって、甚だ不安を感じる今日この頃なのよね…。


「まぁ!そんな事が出来るの?型紙が無いのに?あのね…実は知り合いから頂いた産着なんかが少しだけあるのよ。私も詳しくないし…帰りに町の家に寄って、その頂き物を見ながら相談させてもらえる?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ