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守銭奴王に、俺はなる!

 唐揚げフェス終了後、アギーラの作業小屋へ移動する。

 もちろんポテトフライ祭りも開催したからね。

 なんだろ…体からポテトフライが出てきそうだよ…。

 ポテポテ歩くって表現さ。あれって、こういう時に使うんじゃない?

 …違うか。

 

 なんとなく、前方にシーラさんとガイアさんが歩いているのを眺めながら、その後ろをアギーラと私がついて行くかたちになった。


「ねぇねぇ。シーラさんの妊娠の件って、お話伺っても大丈夫?」


 この世界での妊婦さんを知らないから、失礼があっちゃいけないもん。暗黙のルール的な事があるかもしれないしさ…こっそり聞いておかねばいかん。


「うん?全然かまわないんじゃないかな。いやむしろ、話相手になってくれたら喜ぶと思うよ。僕とガイアさんじゃ、そういうお話相手には向かないからさ」


「え、そうかな?結構アギーラとか話し相手に向いてそうだけど…。まぁ、絶対そうは思われないだろうけど、シーラさんって私とは同世代だし…こっちの世界の妊娠事情とか知らないから、色々聞いちゃおうかな」


 いや、地球での妊娠事情も知らないけども。


 それはさておき…ネットも電話も電車も車もない世界。友達と会うなんて、なかなか出来ないのは想像に難くないもんなぁ。

 隣の町まで一日かかるらしいし、馬車の料金だってバカにならないだろう。

 友達と会おうにも、気軽に駅前で集合とかさ…そういうレベルで気軽に会うなんて出来ない世界。

 しかも仕事大好き星人っぽい女性だよ?友達とお喋りする時間なんて本当に取れないんだろうな。


「そうしてよ。ガイアさんって、魔力量が多いらしくってね…シーラさんは普通に少ないって感じだから、魔力量の差がありすぎて、妊娠はしないだろうって言われてたんだって。もちろんそれは承知で夫婦になったんだけどさ。だから二人にとっちゃまさしく青天の霹靂っていうか…でさ、ガイアさんがナーバスになっちゃって。冗談じゃなくって、シーラさんがちょっとでも動くと、漫画みたいに『オロオロ』って、文字が目に見える感じなんだよ…。そりゃ夫婦間の事だから、余計なお世話なのはわかってるけど…シーラさんもたまにはガールズトークしたいかな…な~んて…」


「うん…見てたからガッツリわかるよ。ガールズトークって感じにはならない気がするけど、ちょっとだけお話させてもらおうかな。ねぇ、魔力量が違うと…そういうものなの?」


「そうみたい。よくわかんないけど…」


 そう言えば、私ってどうなんだろう。将来、結婚したりとか子供を産んだりとか…考えた事もなかったよ。

 なんせ魂がお邪魔しますな感じで、この体に入り込んでる形式。

 正直、そういう生殖機能…使える気がまったくしないんだよね。しかも魔力は少ないけど、実質魔法無制限だしさ。

 

 あ、アギーラも同じ事考えてるみたいな顔してる。生殖機能じゃないわよ、結婚とか子供とかの話。

 ふとおりた沈黙のあと、アギーラがつぶやく。


「僕、聞いた事のないような妖精の種族らしいし、博識な薬師さんですらも、初めてお目にかかった種族だって言ってたんだ…。だからさ、人生のパートナーとか見つけるのは、厳しそうだなって…異世界転移なんてド級の秘密も抱えてるし」


「ふふ」


「なんだよぉ」


「いやごめん。違うの違うの。やっぱり、同じような事を考えてたなーって思ってさ」


「やっぱベルも思うよね…。後で話すけどさ、僕は魔力量の事とかもちょっと色々あって…ほぼ子供を授かるのは無理だな…とか、思ったりして。あとさ、クー・シーの寿命とか…どうなんだろうとか…。これまではこの世界に馴染むのに必死だったけど、シーラさんの妊娠で、今まで考えもしなかった事を色々考えるようになっちゃって…」


「うん…」


「僕らって…このままこの世界に骨を埋めるん…だよね…?」


「それは私もわかんないけどさ。でもまぁ、その可能性もある…いや、高いのかなー、とは思ってる。私はすぐに成仏するんだとばかり思ってたから…ぶっちゃけ、そんな先の事なんて、なーんにも考えてこなかったんだよ。本当のベルちゃんがちょっと贅沢できるように、何か残せないかなぁって…そればっかり考えてたし」


「あ、そうだったよね…。ねぇ、その体が自分のものになったってわかった後、何か将来の事って考えた?」


「そりゃぁね。ちゃんと考えないとリアルに人生詰みそうっていうか、この世界で人生詰んだら、普通に死にそうって思ったし。でも、結婚とか出産とかまでは考えてなかった。一人で生き抜く将来設計しか考えてなかったというか…。もうね、やけくそって訳じゃないけど、なるようにしかならん!って気持ちもあったし」


 そう言って以前に考えた、スローライフwithモフモフ資金計画の話をした。

 いかにストレスフリーな生活をするかを大熱弁。


 私の壮大!?な将来計画を、仲の良いご夫婦の背中を見ながら話すと、自分たちの置かれた状況が余計に異質なものに感じる。すぐ傍にあるその背中は、どんどん遠い存在になってしまう。


 私達は異分子なのか…それともこの世界に順応性がある存在なのか。不安というか戸惑いというか、そういう気持ちが常にあるのは確かだよ。

 でもさ、アギーラは高校生でこっちに転移させられた訳で…きっと私よりも、もっとずっとずっと混乱しただろう。

 

「私なんて野垂れ死には辛いなって思って、老後の資金を貯めようとしか思ってなかった。ほら、この世界ってさ、年金制度とか…ないじゃん?」


「あはは。年金って…うん、そうだね。僕もちゃんと老後のお金を貯めなくっちゃ…」


「まぁさ、お金は勿論必要なんだけど、心の財産というか…豊かさっていうのかな。結婚という意味ではなくても、大事な存在が出来たなら関係をちゃんと築く事とか。それに…自分の居場所を作る事もすごく大事だと思うんだよね。アギーラはすでにそこら辺がしっかり出来ててさ、羨ましいなって思ってるんだよ」


「うん…本当に、良い人達に巡り合えて感謝しかないよ。よしっ…僕も老後の資金をがっつり貯めるぜ。守銭奴王に、俺はなる!」

 

 某人気アニメの決め台詞っぽくいうアギーラ。ドーンと両手を突き上げるポーズ付き。

 うん、ちゃんと心の目で見れば麦わら帽子が見えたよ…。

 

 ん…あれ?

 ちょびっとイイ感じな話をした(はず)なのに、どうして結論が守銭奴になるんだ…

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