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パンツ5枚乾かすのが精一杯

 シーラさんが町から戻ってきた。

 鍋を片手に食料や服や下着一式、タオル、歯ブラシ、薬師さん特製のお薬など、袋いっぱいに荷物が入っている。


「グリンデル…あ、薬師さんからね、『状態が安定していて、外傷がないのなら2~3日動かさないっていう判断で良い』って言われての。良かった~!」と、ほっとしている。

 …いや、もう本当に色んな意味でごめんなさい。たぶん大丈夫なんです…言えないけど。


「戻ったらすぐに、この回復ポーションを念のために全部飲むようにって言われたからね。まずはこれ、飲んでくれる?グリンデルのポーションは効くって評判よ~」


 あ…なんか『美味しくない色ってどの世界も共通!』って感じの色ですけど…。

 ポーションはお高いんだ。不味くても絶対吹き出さないぞ!いただきますっ!!

 

 ………。

 うわっ。おえっ。なにこれ、ポーションってこんなに不味いんだ。これ、具合の悪い人が飲めないんじゃ…。

 …人生初のポーションは罰ゲーム味だった。

  

「あとは、このお薬を一日3回ね。食後だって。体内の損傷に効く薬で、ポーションとこれでダメならもとより手の打ちようがないって脅されちゃったけど…。身体を休ませる成分の入った薬草茶ね。これも毎日3回だって。お薬と一緒に飲んでも大丈夫だって。さて、まずはご飯にしましょ」


 恐ろしい伝言をしれっと言いながら、まだ何か袋から出している。


 まだ、ポーションのえぐみと生臭さが口の中にいっぱいだ。

 えぐみはなんとなく許せるけど…生臭いって…。

 ポーション…恐ろしい子。

 お口直しにさっそく昼食を頂きます!


 まずは、とろりとした白いスープを小さな鍋に入れて持って帰ってきてくれたので、さっそくそれを頂く。まだ温かいや。うん。これはクリームシチューだね。美味しい。たっぷり野菜が入ってる…これは…玉ねぎとじゃがいも、人参じゃないか!…味が全くおんなじ!!

 もし、スーパーで異世界産の野菜が混ざってても、僕は気付かない自信が物凄くあるよ。


 ソースのかかった柔らかい蒸し鶏のようなお肉を2枚のパンではさんである。サンドウィッチみたいだ。あ、本当に蒸し鶏みたい…っん!あれ!!これは…!!!

 

 「あの…このソ「サンドウィッチっはどう?食べられそう?」」

 「……うん、とってもおいしいです。あ、あの…この白いソースって何ですか?」

 「あぁ、マヨネーズよ?ダメな味だった?」

 「ちがっ…お、美味しくってびっくりしちゃって…」


 『マヨネーズ』…パンに具材を挟んだものは『サンドウィッチ』…。

 絶対に居るな。間違いなく居る。他にも地球からの転移者が居るんだ。

 

 マヨもサンドウィッチもシーラさんが子供の頃にはすでにあったらしい。誰が発明したのかは知らないって。そうだよね…地球のマヨが誰の発明かなんて僕も知らないもん。


 是非とも会ってみたい。年配の人だろうけど…怖そうな人だったら嫌だから良く調べて、会っても良さそうなタイプの人なら是非お会いしてみたい。

 せっかくシーラさんが助けてくれたこの命、自ら減らすような事はしないぞ。怖そうな人には絶対に近づかないんだからね。

 いや…べ、べつに…怖がってなんかないぞ…。


 それにしても美味しいなぁ。これは自分でお金を稼げるようになれさえすれば、食生活には困らなそうだ。

 町に出てる屋台で買ってきたごくごく普通の昼食だって言ってたから、生活水準も高そう。パンは少し固いんだけどね、スープに合わせたらとっても美味しい。

 完食。ごちそうさまでした!


 お薬を飲んだ後、例の激マズ薬草茶をさらにランクアップ(ダウン?)させたようなまたもや罰ゲーム級の薬草茶を出されてしまった。

 

 あーとーあーじーわーるーいーみたいなシッブイ顔になってたら「明日の朝の分だけど少しだけ」って、ベリーのような果物のジャムを一口くれた。やっぱり子供扱い。でも幸せ。


 さぁ、歯を磨こう。…まさかの歯ブラシが同じ形状。しかも名前は『歯ブラシ』。

 うーん…転移者って何人いるんだろう。はたまたお一人で全て世に出したのか…。

 

 昨日も貰ったあの葉っぱを噛む。ブクブクと泡が出てきたら葉っぱを捨てて、ブラシで歯を磨く。もう普通にいつもの歯磨きだね。

 昨日も貰ったデンタルフロスみたいなものも、自由に使ってって言われてるので、ありがたく使わせて頂く。これ…『デンタルフロス』って言うんだ…。


 食後はまた、ひたすらベッドに横になってないと怒られちゃうという、贅沢な生活をさせてもらっちゃった。ポーションもお薬もお茶も、ものすごく高額だと思う。食事も生活用品だって…申し訳なさ過ぎて少ししょんぼりする。

 僕が言うのもなんだけど、親切すぎるよ。受けた恩が大きすぎて返せる気がしない…。


 ◇◇◇


 ベッドでころんころんと寝返りをうちながら魔法の事を考える。

 

 今も王侯貴族はエリート交配が続いていて、魔力量が高い者や色魔法持ちをかけ合わせてる為だけに婚姻させたりして、次世代の優秀な魔法が使える子供の輩出に躍起になってるんだって。

 …いや、シーラさんはそんな下品な言い方はしてないけどね。僕流に話を要約すると、です、はい。

 

 色魔法って見てみたいよね。

 一回でも良いからどこかで見れないかな。シーラさんも見たことないっていうんだから、無理っぽいけどさ…。

 それにしても、王侯貴族や獣人がいる世界でしかも魔法があるなんて、話を聞いてるだけでもワクワクするよ。

 

 魔力はあるのに魔法が使えない人もたくさんいるって話だったでしょ?

 少なくたって魔力があるんなら、それを何かに使う事ができるのかなって思ったら、魔法が使えない人でも魔力があれば魔石に魔力を注げるから十分に使い道があるらしいんだ。

 

 魔石って、魔道具を動かすための電池みたいな感じ。見た目はただの石っころだけど、凄い力を秘めてるんだね。


 使い捨ての魔石によって使う度に少し魔力を注ぐタイプ、全く魔力を使わなくても良いタイプ、魔力を事前に充填できる魔石を使って魔石が使い捨てじゃないタイプ、とか魔石にも色々あるんだ。

 

 魔道具師にはいかに魔石の消費を抑えて長く稼働させるかとか、魔力が少ない人が便利に使えるように改善するとか、新商品を作るばかりじゃなくって、そういう研究をする事も大切な仕事なんだって。


 平民はそもそも魔力が少ないのがあたりまえだし、魔法が全然使えない人も沢山いるらしいから、魔道具が便利になれば、それだけ生活の利便性はどんどん底上げされるし、良いことづくめだね。

 魔道具作りって凄くみんなの役に立つし、何より面白そう!

 

 シーラさんは生活魔法が少し使えるだけって言ってたけど、買ってきたばかりのパンツを洗ってくれてから、生活魔法で水気を飛ばしてたのを見て、僕は感動しちゃったよ。

 本人は「パンツ5枚乾かすのが精一杯。だからあんまり使い処がないのよ~」って、笑ってた。

 

 いやいや十分凄いんです!この目で魔法を見られる日が来るなんてね~!!

 あ…ちょっとシッポ…やめ…やめなさいって…

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