サトラレ!
フワッフワ君一号二号がどうしたかって?
ふっふっふ。彼らはちゃんと保護しておりますよ~、こっそりだけどね!
だってね、話を聞いたら生まれたばっかりらしいんだもん。
そんな赤ちゃんみたいな子を外に放り出すなんて…出来ない!
しかも、ちょっと意味がわかんないんだけど、【何が親だか知らない】って…。
『誰が』じゃなくて『何が』って…言葉のアヤかしら…。
とにかく…そんな意味不明な事を言ってる子達を、この厳しい世界(妄想マシマシ)に追いやるのは良くないと思うの。
本来、風に乗って移動していくらしんだけど、二匹で同じ場所へ移動するってのが難しいらしくて…地面を歩いて、なんとか一緒に生きてきたって言うからさ…。
住めそうな場所を探して移動してた時に、ちょうど風が強くなって片方だけが飛ばされてしまったと…。
絶対にお互い離れたくないんだって。
でも、また風で飛ばされちゃったら、絶対にすぐに離れ離れになっちゃうと思うから怖いって言うんだもん…。
だからね、話し合いの結果、二匹が離れ離れにならないようになるまで…もう少し成長するまで、ここにいてもらう事にしたんだ。こっそりだけどね!
なんでも、【もう少し大きくなったら風の操作が出来るようになる】、らしいからさ。
これもちょっと意味がわかんないんだけど…風の操作って、万能感のある台詞はどこから…でも、本人たちが言うんだからそうなんだろうって事で。
もう何でもアリな気がしてきちゃったから、深くは追及しない。だってマボロシのケモノだもん!
◇◇◇
さて、フワッフワ君一号二号はどこにいるでしょーか?
ふっふっふ。正解は私の髪ゴムにくっついております。
そう、毛糸ポンポンに擬態してもらってるの!
擬態っていうか、そのままそこにいるだけだけど。二つ付けてるみたいな感じだしさ、バレないバレない~♪
お芋ちゃんの糸で出来た髪ゴムに、お芋ちゃんの糸で編んだ取っ手やら足置きやらを足して…まぁ、適当な感じで上手く座ってもらってるのよ。
一本で三つ編みにして前に垂らす感じにすれば、胸元で見守れるから安心だし~。
もちろん、パトナも前後左右をふよふよ飛んで守る気全開だしね。
風の強い日なんかはナップサックを改良して、そこへ入ってもらったり…フワンフワも入れといてあげられるから大喜びだよ。
外が見えたほうが楽しいかなって思ってるんだけど、思いのほか気に入られてしまった。
なんでも不思議な安心感があるらしく、居心地が良いんだってさ。
「ほら、新鮮なフワンフワだよ~。あとはね、こないだ好きだって言ってた木の実もあるからね~」
【【ありがと~!】】
「木の実が食べられるようになったって事は、だいぶ大きくなったって事なのかなぁ。あんまりサイズは変わらないねぇ」
【サイズは】
【このままなの~】
「そうなんだ。風に乗るっていう訓練はしなくてもいいの?」
あ、目線を外したぞ。君たち、本能を放棄するのとか…ダメだからね…。
【そ、それよりね】
【パトナに聞いたの~】
【名前を】
【付けてもらえるかもって】
【【ほんと~?】】
「…パトナ?」
なにその目線外し…みんなして、どこで覚えたんじゃ!
<だって…私の力が強くなったのってベルのおかげなんだもん。この子達も力が強くなれば、外の世界でも生きやすいかもしれないって…思って…>
しょんぼりすんなー!私が悪いみたいな感じになるからヤメテー!!
◇◇◇
実は名前と言ったらすぐに思いつくものはある。
『ケサラ』と『パサラ』。
どうよ!可愛いと思わない?
――ピュールルルル
その瞬間、一陣の風が吹いて、フワッフワ君一号二号の体が光りを帯びた。
おい待て待て、まだ私は何も言ってない!
心の中で思っただけでしょ!!
その光が私の方へ一筋、するすると向かってきた。
ふと自分を見ると、左手の小指にその光の筋が結ばれて…。
パトナの時にもあったやつだ!デジャヴーキター!!
でも光の色が違う。今回は綺麗な緑色。
そう言えば、【もう少し大きくなったら風の操作が出来るようになる】って言ってたしなぁ。
『風の操作』ってさ…もしかして、緑色の魔法が使える子達なのかもしれない。
あれ?パトナは…もしかしてパトナも何か魔法が使えるんじゃない?
【ケサラだよ】
【パサラだよ】
【すごい!】
【ねーーー!】
キャッキャウフフの可愛い二匹は、『ケサラ』と『パサラ』になりました~!
って、何で?何で、私が心の中で思った名前を知ってるんだ?
サトラレ!
なんとなくわかったんだって。なんだよぅそれは。
ちなみに、少しストレートっぽい毛並みの持ち主がケサラで、少しクセっ毛っぽいのがパサラ。
よーく見ないとわかんないくらいだけど、私にはちゃんと判別がつくのであります!
お芋ちゃんの糸でケサラとパサラの毛を少しだけ結ばせてもらう事にしたの。
だってさ、ケサラとパサラは真っ白だから、すぐに汚れるんだもん。
私の髪ゴムに毛糸ポンポンとして擬態してる時は、綺麗なままだったから思いついたのよ!
毛を結ぶのって嫌かなって思って聞いてみたんだけど、すっごく喜んでる。
本人たちも汚れるのが嫌だったんだって。
もう少し魔法が上達すれば、水場で風魔法を操って体を綺麗にすることも出来るようになるらしいとか何とか。
深くは追及しないわよ。マボロシのケモノだからね…。
そういや今は真っ白でフワフワだけど、出会ったときは正真正銘の泥雑巾だったなぁ。
だからさ…魔法が上達するまではお芋ちゃんの糸パワーで浄化をね…うん、我ながらグッドアイデア。
パトナの分も作ったからみんなでお揃いよ。
パトナは基本的には汚れないみたいだけど、自分もお揃いにして欲しいんだってさ。
妖精って汚れないのか!って感動したけど、アギーラは道具職人は汚れが酷いとか汗臭いとか色々言ってたんだよねぇ。
…同じ妖精族でも何か違う気がする。なんて言うか、アギーラは人間寄りって感じ。
「そう言えばさ、ケサラとパサラは名付けた時に緑色の光が出たんだけどさ…風を操る魔法を使うって言ってたし…パトナも名前が付いた後、光が強くなったじゃない?もしかしたら何か魔法が使えるの?」
<うーん。ベルの無色と同じ魔法なんだと思う。名前を貰えるまでは全く自分の魔力を感じなかったんだけど…。補助?みたいな感じかも…よくわかんないけど…>
「ふーん。ケサラとパサラは練習してるけど…パトナはしなくても良いものなの?」
あ、また目を逸らしたね…アンタ…。
<だって~、ベルの所へ戻ってから楽しい事ばっかりでさ…ついついね。えへへ~>
ぐーたら妖精だった。