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グー舎よ、お前もか…

 毎度おなじみ院長室。

 他の孤児院へ出張してた院長先生が戻ってきたんだ。


「薬師のグリンデルさんから、院長先生に直接渡すようにって手紙を預かりましたので、届けにきました」


「『他言無用で相談したい件あり。とにかく至急で内密に』って…」


 今度は何をしでかした?の言葉を飲み込んだ院長先生は、それ以上は何も問わず、薬師のグリンデルさんとの三者面談をセッティングしてくれた。


 ◇◇◇


「………」


「まぁ、絶句するのはわかるさねぇ」


 そう言って、グリンデルさんはゆっくりとお茶を飲んだ。


 私は『守秘匿魔法契約』の一時解除を初体験。とは言っても、体に変調がある訳じゃないから全くわかんなかったけど。

 グリンデルさんと前回結んだ分は、私が一緒にいる時に一時解除すれば、無効になるらしい。その上で、この話が終わったらまた結び直すんだって。


 その場合、ちゃんと前回の内容まで遡って再契約になるらしい。

 権利や契約に異常に厳しいのに、魔法やら妖精やらのファンタジー要素もある…なんか独特な世界だわ~。


 え?今?私の魔法について三者面談inグリンデルさんの薬局裏手にある薬草園の作業小屋よ。

 院長先生がグリンデルさんから私の魔法の件を聞いて大沈黙中なので、ついつい異世界観を語ってしまう私。


「体は…大丈夫なんだな?」


「はい…」


「どこも…不調はないんだな?」


「はい…」


「そうか…そうか…」


 院長先生また沈黙。

 さらに一分経過…。


「ベルは…国に仕える事に興味はあるかい?」


「えっ!?全くないです」


「そうだな、まだ小さいからよくわからないよな。…え?」


「全くないです。ハッキリ言うと嫌です」


 私の前のめり気味否定にグリンデルさんが笑い出した。


「くっくっく、即決だねぇ。初期学校へ入る前に相談したかったのは、その事さね」


「ベル…もしな、学校でこれがバレると、とんでもない事になると思うんだ。普通の『鑑定』だって、非常に危険なんだ。いや…危険というか、争奪戦が激しくてな。難しい話でわからないかもしれないが…これは…あぁ…どうすりゃいいんだ…」


 なるほど。恐らく、教師にバレた時点でアウトってやつね。


「私の意思は関係なくって事ですか?」


「「…」」


 あっそ。


 あれ?孤児院って国営だったはずよね。

 これって、院長先生にバレた時点でアウトって事じゃないの?

 詰んだのか…逃げようか…。


 何故に異世界に転生した挙句、国家権力に召し上げられて馬車馬のように働かにゃいかんのだ(妄想)。

 私には将来の計画…スローライフwithモフモフがあるんだからね!断固拒否よ!!


「孤児院は国営ですよね?それじゃぁ…」


「あ、あぁ…そこまで理解できているんだね。そうか、ベルだもんな…うん。そうだな…全部はわからないかもしれないけれど、聞いてほしい。確かに教会も孤児院も国営ではある。でも、孤児院はその…なんというか…実際は特例的に別枠な部分が多いんだ。僕らは、孤児院は…国営と謳われてはいるけれど、実はまったく別の仕組みで機能しているんだよ」


「別の仕組み…」


「国営ではあるけれど…国の思惑で動く機関ではないんだ。だからね、僕がこの事を知ったからと言って、国に報告する事は決してない。それだけはわかって欲しい。こんな事言ったって、難しいよなぁ…」


 トイレ紙準男爵の話を色々聞いた時に、ちょっと感じてた違和感というか…うん…なんとなくわかる気がしないでもない。話の中に孤児院と国とで何だか軋轢を感じる箇所が多々あったもん。


「国営だけど、土地と建物なんかは孤児院に帰属しているって話を聞いたことがあります。トイレ紙準男爵のお話を色々と聞いて知ったんですけど…他にも褒賞がちょっと特殊だなって思ってたから…その…なんとなくですけど…理解できます」


「おやまぁ…よくそんな事を知ってるね」


「まぁ、知っているなら話が早い。実はね、あの褒賞の中には『国は孤児への越権行為を一切禁ずる』という永久的な取り決めもあったんだ。だから、孤児の中にどんなに凄い魔法やスキルを持つ子供がいたとしても、本人の意に沿わない召し抱えは建前的には出来ないんだよ」


 建前的。

 院長先生の顔をチラリと見る。


「そんな顔するなよ。だがそう…建前的には、だ。ベルの事を知られたら、どんな手を使っても手に入れようとする可能性がある。それは国だけじゃないぞ。ちょっとした争奪戦にはなるだろうな」


「ともかくバレてはいけないって事ですかね…」


「そういう事だ」


「私、国で働く気とか…ないです。そういうの、嫌なんです。もちろん、勝手に争奪戦をされても困ります。だから…だから、絶対にバレないように努力します」


「わかった。意思は尊重するからね。乗り越えられるように我々も手を尽くすよ」


 暫く静かに話を聞いていたグリンデルさんが話に入ってきた。


「院長、孤児院は準成人で卒業できる仕組みがあったが…あれはまだあるのかい?」


「えぇ。基本は使わないスタンスですけれど…そうか…」


「逃げ道は用意するにこしたことはないからね。養い後見…保証人は何人だい?」


「5人です。孤児院の卒業者や関係者はなれません」


「そうかい…乗り掛かった舟さね。私は立候補しておこうじゃないか。あと4人、12歳になる前に必ず捕まえておきな」


「そうですね…はい」


 院長先生が孤児院を早期に卒業する方法を話してくれる。概ねは知っている話だけれど、大人しく耳を傾けた。

 あぁ、しょんぼりしてきた。面倒くさいチートスキルって気が重い。


「孤児院でもちろん守るつもりはあるんだ。でもね、正直バレてしまった後の国の動き…いや、国だけじゃない多方面から…その…乱暴な働きかけもあるかもしれない。だから…もしバレてしまったら、孤児院で暮らすのは居場所が特定されてしまうが故に、非常に危険なんだ。万が一の時の為に…準成人の12歳になる時に、孤児院を卒業する方法がある。ベルの事だから、もう知っているんだろう?あれはね、そういう非常事態の逃げ道の確保として作られた決まりなんだ。実際、あのトイレ紙準男爵のロイドさんなんかが使った方法だよ。彼も孤児院在籍中に、そういうゴタゴタに巻き込まれそうになって、孤児院を抜け出したんだ」


「保証人が5人も必要なんですか…」


「無色魔法の事を話さずに孤児院関係者以外であと4人。幸いにまだ時間があるからね。これは僕の課題としておこう…いやなに、大丈夫だよ。孤児院はね、ギルドやグー舎と…少し連携があるんだ。何とか出来ると思う」


 連携…やっぱりね。

 ギルドについては、ちょっとそんな気がしてたんだ。

 グー舎よ、お前もか…

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