コトホギ ニモ ノロイ ニモ
ハーブが欲しいのぅ。
あのラベンダー(仮)が薬草茶にも出来るって鑑定に出たから、私も何か作ってみたいなって…絶対他のハーブと相性が良いと思うんだ。
<ハーブってなぁに?>
…私ったらまたパトナにサトラレ。
って思ったら、どうやら独り言がデッカイ呟きになってたみたい。
これじゃ危ない人じゃないか…気を付けよう…。
そういえば、独り言の音量って時々ぶっ壊れてる事ってない?
自分の独り言に自分でビクッってなるやつ…え?私だけ??
ふーん…パトナも知らないかぁ。ハーブって概念がないのかも。
こっちでは薬草ってことになるのかなぁ。
結局ね、何百回鑑定しても、魔力は一向に減らない事が判明、カッコ自分調べカッコ閉じ。
気分も悪くならないし…便利だからついつい使いまくっちゃった。
使いまくったからなのか、鑑定レベルが2になったのよ。
いちいち『鑑定!』って思わなくても、鑑定ができるようになりました~!
し・か・も、知りたい事だけが簡潔に出てくるように。いやこれ大事。
ちょっと文章が長いな~って思う事も多かったから。
これはすっごく嬉しい機能の追加だったわ。
でも、おしゃべり『料理』欄も出てこなくなっちゃったから、ちょっと寂しい…。
なーんて思ってたら、しゃしゃり出てきたから急いで却下。
必要な時だけで良いっす…。
ってな事で、今日も今日とて鑑定鑑定。
そうそう、拾った光る石っころ(地道にコレクションしてた)と、お芋ちゃんの糸も鑑定したんだ。
***
天然魔石:この魔石は三分の一ずつ、青・緑・赤の力が内包
***
そうなのです。
光る石っころは天然魔石だったのです。
あ、これはレベル2になったら出来るようになった、簡易鑑定の結果だよ。
もっと簡易鑑定もできる。
天然魔石
こんな感じ。
“これは何ですか?これはペンです”的、鑑定。
ちょろっと調べたい時に便利なの。
天然魔石って、そのまま置いておいても内包された魔力は減少しないし、魔力の継ぎ足しも可能な魔石だって、読み本に書いてあったやつね。
他の人にはただの石っころにしか見えないんだ…だから魔石が光って見える事は、みんなには秘密。
無色魔法も十分ヤバいけど、これはこれですっごくヤバい。
はぁぁ。
はい、気を取り直して、お芋ちゃんの糸も鑑定!
こっちは通常鑑定バージョン。
――ポワワン
***
【鑑定】
蚕糸
解説:サラマンダーの化身、ボヨンビヨン・モリボーンの巨大繭から取れた巻糸/魔法付与と相性の良い特殊な伸びる繭糸/丈夫で濡れたような光沢を持つ
その他:ボヨンビヨン・モリの変異上位種の繭糸/ベルに『お芋ちゃん』と名付けられ、手ずから餌を与えられる/その際、何度か吟遊によるまじないをかけられ、九死に一生を得た巨大再生蚕/幾度生まれ変わろうとも、ベルの傍に繭を置く
効果:変異種となった為、サラマンダーの加護効果である火と物理耐性が25%UP/強力な浄化作用を持つ
料理:え…嫌だよ…
裁縫:裁縫レベルがアップすれば、糸の持つさらなる特殊効果を発揮できる可能性がある
***
ほらね!やっぱりお芋ちゃんの恩返しだったんだよ!!
私は信じてたけど、ハッキリと『鑑定』に出てくると、感動もひとしおよ。
なーんて、喜んでられないようなトンデモ情報がてんこ盛りだけど。
まず、料理は無視しよう。
全体的に鑑定したいって思うと、どうしても料理はしゃしゃり出てくるらしい。
これね、どうやってもひっこまないから、もう諦めたんだ…。
他の鑑定が出来る人が、どんな感じで見られるのかわからないもんだから、ドキドキしたんだけど、どうやら人によってかなーり、鑑定濃度が違うらしい事が判明。
決して間違った事が表示される事はないんだけど、内容に個人差がもの凄くあるっぽい。
大袈裟に言っちゃうと、お芋ちゃんの糸を鑑定しても、『蚕糸』としか出てこない人もいるって感じかな。確かに間違えちゃいないけど、鑑定濃度…薄っ!みたいなね。
でも、良かった~。
だってさ、赤の他人に『ベルに手ずから餌付け』って脳内表示されても、ねぇ…。
お店の名前とか作成者の名前とかなら良いけど、ベルって誰だよ事件が発生しちゃう。
それに、この鑑定が他の人に見られちゃったら、誘拐されちゃうかもしれないじゃん、私。
まぁでもこれはチート的な感じなんだと思う。
薬師のグリンデルさんの所で魔法の事を相談した時に言われたんだ。
あの時、魔道具を鑑定したんだけど…作った人の名前が表示されたの。
それを伝えたらグリンデルさんが、普通は作成した人まではわからないって言ってた。
そんな鑑定なんて見た事も聞いた事もないって…。
だから、そんなに心配はしてないんだ。
恐らくこういう鑑定結果になるのは私だけ。
そう思う事にしよう…だってそう思わないと、怖くてお外で遊べないからさ…うぅぅ、泣きたくなってきた…。
少なくともギルドお抱えの鑑定スキル持ちさんの鑑定には、私の名前は出てこなかった模様。
ギルドだって腕利きのメンツを揃えてるだろうからね…それでちょっと安心したんだ。
お芋ちゃんの糸、鑑定できる人自体がもの凄~く少ないらしいのに、わざわざ鑑定してくれたんだよ。
あまりにも珍しい糸が大量放出、且つ、暫定的だけど定期的に手に入る状況にある為に、鑑定してもらう事になったんだって。
グー舎やギルドは複数の鑑定スキル持ちを雇っていて、そこに縫製系に特化した人がいたらしく、依頼したみたい。
ただ、その数人で大陸全土をカバーしてるらしいから、依頼してから鑑定までが長くかかったらしいの。
いわゆる固有スキルの鑑定はすっごく魔力を使うらしくって、日に一、二回しか出来ないんだって。
魔力回復ポーションってあるんだけど、すっごく高価だし、あれって何回も飲むと気分が悪くなるらしいよ。
だから、ギルドは雇ってる人達には、ポーションを使ってまでの鑑定はさせてないらしい。
ギルドってホワイト企業っぽいよなぁ。
レイラから鑑定結果を教えてもらったんだけど、私が鑑定した内容にある『解説』欄部分が全鑑定内容って感じだった。
あとこれは何だろね…『吟遊によるまじないをかけられ』って。
『吟遊』って、例の無色魔法スキルの一つよね。
あ…自分のスキルって鑑定できないのかな…。
――ポワワン
***
【鑑定】
吟遊
詳細:言祝ぎ(ことほぎ)にも呪いにもなる無色魔法の一つ/言葉を紡ぎ奏でた際にその言葉の効能がUPする
***
コトホギ ニモ ノロイ ニモ
わ~、便利だなぁ。
自分のスキルも鑑定出来るんだ!
なーんて感動より、内容のエグさが際立ってしまってますがな。
これってさぁ、まさか『頑張れ頑張れ、じ・ぶ・ん~♪』とか歌っちゃうと、なんかがUPしちゃう感じなのかしら?
私、まじないなんてかけてないけどなぁ。
まじないなんて、そもそも知らないし。
…。
あ…かけたかも…。
いやでもさ、あれよ?
ほら、私がふっくらさんに一番最初に出会った時、ふっくらさんがかけてくれたやつ。
『いったいのいったいの ばっさばさ~』って…。
あとはちょっと興が乗り過ぎて、自作のお芋ちゃんおまじないソングも、ご披露したようなしなかったような…したわね…。
あれが、おまじないって事になっちゃってたりするのかしら。
百歩譲ってそうだとしてもさ、まだ全然魔力覚醒してない頃の話だし…謎だ。
謎と言えば、奏でるってどういう事を言うんだろうね。
『いったいのいったいの ばっさばさ~』でまじないになったとしたら、節をつけてつぶやくのはNGだよなぁ。
怖いなぁ…無意識にとんでもない事しちゃわないように気を付けよっと。
なんか…どっと疲れたわ…ハーブ探しはまた明日。
『吟遊』を使った時の魔力の減りとか、色々確認すべきなのはわかってるけどさ。
今日は見なかった事にしたい…