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『ベルはキビ草を手に入れた』

『ベルはキビ草を手に入れた』


 …ちょっと某ゲーム風に言ってみただけよ。

 ぐふふ、昨日森に行ったら、キビ草があったの~。


 例のラベンダー(仮)について鑑定が教えてくれた、『甘水』ってのを作ってみようと思って。

 キビ草は甘水の材料なのよね。


 だって、グリンデルさんがわざわざ伝言をくれたんだもん。

『例の植物は安全。食べても大丈夫。匂いも無害。一応知らせとくよ』って。

 そしたら、やっぱり作ってみたいじゃん。


 パトナが<ひとつちょーだい、ひとつちょーだい>って、周りを飛び回ってずっと言ってるから、ポプリにした花を一つあげちゃった。

 頭が痛くなったり気分が悪くなったりしたら、すぐに捨てる事って約束付きでね。


「体が小さいから気を付けないとね」って言ったら、<体は強いだから大丈夫だも~ん>って言うのよ。

 そう言えば、<人間族の体がこんなに弱っちいなんて知らなかったんだもん>って、言ってたなぁ。

 でも君さぁ…この体に閉じ込められて、すっごく衰弱しちゃってたよね…いや、別に良いんだけどさ…。


 ポプリの花を大事そうに両手で抱きかかえて、ふよふよ飛んでる。愛い奴よの。

 すっごく不思議なんだけど、パトナに渡した時点で他の人にはポプリが見えなくなるみたい。誰も何にも言ってこないから、たぶんだけど…。


 いや、仕組みが全く分からんけど、見えてたら逆に困るしね。

 ポプリの花一つが私の周りを漂ってるって…ただのホラーでしょ。


 さて、そんなパトナも真剣に横からのぞき込んでおりますが、さっそく甘水をつくりましょー!

 ロムロムはレモンとオレンジの中間みたいな果物で、いっつも厨房に何個か転がってるから大丈夫。材料は揃ってるのさ。


 事前にお願いしなくても短時間で、且つ、隅っこの方で本業さん(孤児院の食事作り)の邪魔にならない程度で作業するならって、厨房を勝手に使っても良くなったの。

 しかも魔道具であるコンロも。着火さえ誰かにやってもらえれば、後は自由に使っても良いって!


 それもこれも職スキルに『料理』が出たからなんだけどね。

 スキルは最大限に育てていこうという孤児院の方針があるからさ。

 

 事前のお願いとして、ふきんが一枚ダメになるかもしれないけど使わせて欲しいという事で…一枚頂戴することに成功。

 まずは草類洗いましょ~♪お鍋にお水を入れまして~♪草を入れたら中の火で~♪お湯がぽこぽこしてきたら~♪火を止め蓋して放置する~♪


 その間に生地をつくるぞ。ドラジャの搾りカスにマヨとお水を加える。


 マヨはひと瓶まるまる使ったりしなければ、勝手に使っていいって言われてるからね。すっごく供給量が多いから値段が安定して安いんだってさ。

 分量さえ間違わなきゃマヨ味にはならないから大丈夫。と言いつつ、もちろん目分量。

 ま、大量に入れなきゃ大丈夫って感じよ…。


 こういう目分量の材料不足な、なんちゃってお菓子を作るのには、マヨを入れるのって理にかなってると思うのよね。

 耐熱皿にもマヨを塗る。その上に生地をどろりと流し込んで…。

 

 甘水作りに戻ろう。

 草つぶす~草つぶす~♪ロムロム~汁を入れましょぉ~♪

 うわ~、すっごい綺麗なピンク色に変わった!

 

 これは『なんかオシャレ』って書いてあった意味がわかるわ。

 ちょっと味見をば…


 甘ーーーい!


 ちなみに生花もポプリも全然甘くないからね。なにこれ凄すぎる。

 キビ草との化学反応的な奴なの?

 万年文系女子には理解不能だわ。いや、文系って胸を張って言えるほどでもなかったけど…どちらかと言えば文系。言い訳する自分がなんか悲しいからやめよう…。


 甘いけど…うーん。でも、ラベンダーの匂いがするからなぁ…食べ物に入れるとなると、好き嫌いが分かれるかも。

 私は好きだけど、飲み物の方が良いかなぁ。お茶に入れたら絶対美味しいやつ。


 ふきんで濾してドラジャに甘水を入れる。フォークの柄でぐるぐる…よし、マーブル模様っぽくできたぞ。

 鍋に別の耐熱皿を逆さまに置く。

 重そうだから沸騰しても大丈夫だろう。鍋に水をはって…簡易蒸し器の出来上がり。


 生地が入ったお皿を鍋にそっと入れて、清潔なふきんで蓋を覆ってから閉める。

 まずは中の火で沸騰するまで。そのあとは小の火で様子を見ながら。

 ふきんも数枚なら自由に使ってもいいって言われてるから、蒸す作業が簡単になったのよ。

 

 余った甘水を半分取り分けて…鍋に残った甘水は煮詰めてみよう。

 実験実験。


 今は誰も火の作業をしてないから、コンロが使い放題なんだもーん。

 あ、ちょっとトロトロしてきたみたい。ギリギリまで攻めてみる。

 うん…良い感じじゃないか。

 雰囲気で塩梅がわかるんだけど…これもスキルのおかげなんだろうなぁ…。

 火を止めて…よし。あとは冷ますだけだよ。


 あ、ドラジャの蒸しパンもそろそろいいみたい。

 厨房が甘い匂いに包まれてしまった。

 皆さん、ギラギラした目でこっちガン見してたのね…。


 皿をひっくり返して蒸しパンをふきんの上に出す。

 粗熱を~取っている間に、お片付け~お片付け~♪


 さて、試食のお時間です。

 本日のメニューは…


 ☆ピンクマーブルのドラジャパン

 ~煮詰めた甘水のシロップを添えて

 ☆甘水のホットウォーター


 で、ございます。

 いや…ただのお湯割りだけどさ。雰囲気大事だから。

 では、いただきます!


 ――もぐもぐもぐもぐ


 …あーこれ、普通にうまいやつだった。

 ご婦人方、どうぞ御試食くださいませ。

 ふきんを使わせて頂いたお礼でごぜえますだ。

 是非、今後とも便宜を…、という隠しきれない下心を添えて…。


 ――もぐもぐもぐもぐ


 ………。


 ………。


 え…ダメ?美味しくない?いや、美味しいよね??


 抱きつかれちゃった!

 お、美味しいんだね?良かった良かった~。


 院長先生が不在な為、アリー先生が孤児院を仕切ってくれている。お疲れモードだって聞いてたから、本日のメニューをお届けしたの。

 お湯割りはお茶割りに変更して差し入れしたんだ。


 アリー先生も大喜び。

 疲れてたから、甘味のあるものが食べられてすっごく嬉しいって。


 職スキルが二つあると迷うよ。

 どっちか一つに絞って邁進した方が良いんだろうけど…。

 裁縫もどんどん腕があがってきててすっごく楽しいけどさ、こうやってみんなに食べて喜んでもらえる料理も捨てがたいなぁって。

 

 厨房勤めって男性が圧倒的に多いらしいんだよね。家庭の食事は女性が作る事がほとんどなのに、不思議だけどさ。

 だとすると、やっぱり裁縫の道の方が目立たないような気が…でもなぁ…うーんうーん…

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

次回より不定期&ゆっくり更新になります。

これからもたま~に覗きに来てもらえると嬉しいです!

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